[市場動向]

「この国にイノベーションを起こすのは、就労者が減ることかも」―IIJ鈴木幸一会長

IIJ 記者懇親会 冒頭講演より

2018年8月7日(火)佃 均(フリーランスライター)

2018年7月23日、埼玉県熊谷市で過去最高となる41.1度を記録した酷暑のこの日、東京・丸の内でインターネットイニシアティブ(IIJ)の記者懇親会が開かれた。この手の懇親会には、好んで記者会見に出かけない筆者にはあまりお呼びがかからない。広報担当氏が古いリストを引っ張り出したのだろうか。それはともかく、目玉は会長・鈴木幸一氏の講演だった。IT/ICT業界で数少ない骨太な創業経営者の目に、いまの日本はどのように映っているのか。(「IT記者会Report 講演採録」より転載)

 鈴木です。大変にお暑いなか、おいでいただいてありがとうございます。あまり暑すぎて私の頭の中も思考能力ゼロで、何も考えていないんですけれど、ま、何か話せというので。

 インターネットというものに取り組んで、今年で26年目になります(筆者注:前身となったインターネットイニシアティブ企画の設立は1992年12月で、IIJとしての設立は1994年4月)。会社を起こしてからの年数で、その前を含めると、こういうことに人生を送ってしまったという、なんというか寂しさのようなものがないではありません。

序曲が終わり、いよいよ組曲が始まる

写真1:IIJ代表取締役会長の鈴木幸一氏

 2018年に入って特に変わってきたなと思うのは、トラフィックです。IX(Internet Exchange)ベースですが、今年の1月から半年の間にトラフィックが5割ほど増えているんですね。見ていますと、去年の暮れぐらいから大きく変動してきている。この趨勢が続くと、すぐ数TB(テラバイト)のトラフィックを扱うことになる。そういう意味で、一般の方のインターネットの使い方がかなり変わってきたんじゃないかと思います。

 電車に乗って周りを見ていますと、だいたいの方がスマホで動画を見ていらして、私どもとして、どうとらえればいいのかと考えることがあります。そうしたトラフィックの急増に対して、私どものような事業者が投資ということも含めて、新しい利用の波に対応しきれていないのではないか。これが最近、いちばん変化していると感じていることです。

 僕らが始めたころは64Kbps(64キロビット/秒)の時代でした。それが1つの会社さん(筆者注:IIJの法人ユーザーは約8500社)でTB単位の契約をしていただける、そういう時代になったんだと。

 これを音楽に例えますと、この25年から30年で主要なモチーフが出てきて、これからそのモチーフがそれぞれに展開していく段階。いまのインターネットを見ていますと、ちょうど序曲が終わって、いよいよ組曲が始まるんだなぁ、という感じがしています。

 例えばAI(人工知能)ですが、僕が学生時代からそういう話はあって、話の中身はあまり変わっていないんですけど、それがやっと使い物になるかなぁ、その可能性が出てきました。

 あるいはIoT(Internet of Things)とかクラウドとか。すべてインターネットが始まる前からコンセプトとしては想定していました。ずっとコンセプトにとどまって、実現性はあまりなかったんですが、ここにきてそうしたモチーフのひとつひとつがマーケットとして成立する可能性が出てきたわけですね。 そうは言っても、IoTにしても何にしても、工場とか仕事の現場に適用しようとすると、それはそれで別の問題があって、簡単な話ではありません。

日本でもやっとキャッシュレスの動き

 難しい問題というのはいろいろあるんですが、なかでも日本というのは仕組みを変えるのが苦手と言いますか、変えることに抵抗が強いところがあるようなんですね。これから先を考えますと、人手不足。若い人や就労できる人の数が間違いなく減るわけです。究極の自動化に向かわざるをえないんですね。

 そういったときに、工場のありかたや仕事の進め方が、あらゆる場面で変わっていく。クラウドも同じようなことですし、AIも同じでしょう。 単純に考えれば、ネット上にアプリケーションがある、情報システムがあって、それを自由に使える。大量のデータが非常に高速に収集できてアクセスできる。

 なおかつそのデータをプロセッシング、つまり処理できるということ。処理するチップがどんどん小さく、安くなっている。 こうなるだろうなと思っていたことが、具体的な形に実現していく時代になった。日本という国も仕組みを変えるのが下手だったけれど、そうもいかなくなってくる。対応していかないと、世界に取り残されてしまうんではないか、と。

 IIJとしてはJOCDNという会社を作ってインターネットと放送の融合にも早くから取り組んできましたし、ディーカレットという会社でキャッシュレスの動きにも対応しています。もう皆さんご存知のことと思いますけれど、上海に行きますとQRコードでやらないとなかなかお金が受け取れない。一方、日本は世界で最もキャッシュレスが遅れているんですが、ようやくその動きが出てきました。

 金融システムそのものにかかわる話なので、特に仮想通貨とかが一気に進むかというとそれは別問題になりますが、個別の企業、個別のジャンルで、従来のような高い手数料を取って。当社のお客さんもたくさんおられるのであれなんですが、将来を考えると、クレジットカードのような決済は今後なかなか難しくなってくるんじゃないかと思います。

写真2:懇親会は代表取締役社長・勝栄二郎氏の挨拶で始まった
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