[イベントレポート]

デジタルトランスフォーメーション推進の要諦は?―グローバルベンダー5社がビジョンとテクノロジーを語る

Cisco & NetApp DX Day 2018

2018年8月29日(水)小池 晃臣(タマク)

今やあらゆる企業にとって不可避のテーマとなったデジタルトランスフォーメーション(DX)。2018年7月10日、この重要テーマの推進にまつわる諸課題を考察し有効解を探るイベント「Cisco & NetApp DX Day 2018」が開催された。本稿では、主催のシスコシステムズとネットアップをはじめ、両社とアライアンス関係にあるエヌビディア、日本マイクロソフト、レッドハットの各社が語った、顧客のDX推進に向けたビジョンやテクノロジーを紹介する。(撮影:小沢朋範)

マルチクラウド環境を可視化して統合管理を可能にするIntent-Based Data Center

 Cisco & NetApp DX Day 2018のホスト役を務めたシスコシステムズとネットアップ。互いの強みを持ち寄るかたちでコンバージドインフラ「FlexPod」を共同開発・提供する両社は、共同セッションとして、顧客のDX支援のための技術的バックグラウンドをそれぞれ語った。

 セッションのタイトルは「DX時代におけるアプリケーションとデータパイプラインのあり方とは?~Cisco Intent-Based Data CenterとNetApp Data Fabricが支えるビジネス変革~」。登壇したのは、シスコシステムズ データセンター/バーチャライゼーション事業担当 執行役員の石田浩之氏(写真1)と、ネットアップ 常務執行役員 Chief Technology Officer/システム技術本部長の近藤正孝氏(写真2)である。

写真1:シスコシステムズの石田浩之氏

 シスコの石田氏は、デジタル化に欠かせないマルチクラウド環境に関して、同社がどのような技術・手法を提供しているかを紹介した。顧客事例として挙げられたのは、3万人以上のアプリケーション開発者を有してFinTech/デジタル化に力を注ぐ、グローバル大手金融機関のJPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)だ。同社は32のデータセンターで7200以上に及ぶアプリケーションを稼働している。

 「デジタル化に向けて、アプリ開発のためだけにこれだけのリソースを割いている。これは、デジタル化がもたらすインパクトの巨大さをJPモルガン・チェースが認識していることの表れだ」(石田氏)

 デジタル化によるインパクトは、主にアプリケーションがデジタルビジネスの推進役となることでもたらされることから、アプリ開発者がITインフラ選択のキーパーソンになると石田氏は説明。「そこでは、オンプレミスとパブリッククラウド、プライベートクラウドをバランスよく活用するマルチクラウド環境が、新たなデータセンターのパラダイムになる。マルチクラウドの時代に高いレベルで対応したインフラを我々は用意できる」と強調した。

 一方、マルチクラウド環境には、その複雑性ゆえに断片化や複雑な運用、データ管理、セキュリティといったいくつかの課題が存在する。そこでシスコが打ち出したのが「Intent-Based Data Center」というビジョンである。同ビジョンは、オンプレミスと同様のレベルでガバナンスを効かせたセキュアな環境でマルチクラウドを管理した上で、アプリケーションからオンプレミス/クラウドインフラまでをエンドツーエンドで可視化を行い、さらにビジネスへの影響までも分析するというものだ。

 Intent-Based Data Centerを実現する技術要素を紹介した後、石田氏は、「このビジョンに基づいて、シスコはデジタル化を加速させるプラットフォーム環境を提供していく」と述べ、ネットアップの近藤氏へとバトンタッチした。

DX時代の勝者“Data Thriver”になるためのデータパイプライン活用

 ネットアップは近年、オンプレミスとクラウドにまたがるハイブリッドITインフラにおける柔軟で一貫したデータアクセスを実現するData Fabricをビジョンに掲げている。近藤氏は、その取り組みの過程で導き出された、マルチクラウド時代のデータ管理にあり方について言及した。

写真2:ネットアップの近藤正孝氏

 「データは新たな時代の“オイル”とも呼ばれている。グーグルなどのハイパージャイアントがまさにデータを資源にして競争力を発揮しているのを見ればそれも頷ける。これからの企業が競争力を維持するためには“Data Thriver”(データで繁栄する人)になる必要がある」

 ここで言うData Thriverとは、データを元に今までにない新しいビジネスを創造する組織を指す。近藤氏によれば、ITと経営が調和している/データが資産とみなされている/データが組織全体で均一に活用されている、などの特徴を持つという。

 近藤氏は、DXの推進過程におけるデータライフサイクルを次のように説明した。 「データ発生点であるIoTを含む『エッジ』でデータを採取し、専用ハードウェアやプライベートクラウドによる『コア』でデータレイクを形成。データを整理・統合した上で分析処理を行い、パブリック/プライベートクラウドでアーカイブ、ないしはパブリッククラウドのディープラーニングなどのサービスと連携するという流れになり、これを『データパイプライン』と呼ぶ(図1)。

図1:データパイプラインのイメージ(出典:ネットアップ)
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 先般、ネットアップは、DXでニーズの高まっているAIやディープラーニングの用途に向けて、エヌビディアがディープラーニングシステムとして提供する「NVIDIA DGX」サーバーと「NetApp AFF」ストレージを組み合わせた「ONTAP AI」を発表している。

 AI環境の構築で不可避なITインフラ設計の複雑さを排除しながら、エッジ/コア/クラウドにわたるシームレスなデータパイプラインを実現する、いわば、AIやディープラーニング向けに特化したコンバージドインフラである。ユーザーは、AIやディープラーニングを“小さく始められて”、その後、稼働を止めることなくスケールアウトしていけるソリューションとなっている。

 「データパイプラインの実現には、すぐれたネットワーキング能力が欠かせず、シスコ製品との連携が有効だ。DXやマルチクラウドの時代に入っても、両社は緊密なパートナーシップで顧客のビジネスに貢献するプラットフォームを提供していく」と近藤氏は強調して共同セッションを締めくくった。

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