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[イベントレポート]

米空軍、ボーイング、DBS銀行…世界の大手企業・組織がCloud Foundryやアジャイル開発に挑む理由

SpringOne Platform 2018 by Pivotal[事例編]

2018年10月3日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

「デジタルトランスフォーメーション(DX)は技術の話ではありません。人や企業文化をアジャイル型に転換することです」(シンガポール・DBS銀行)――。世界各国の大手企業が自らの人材や文化をアジャイルにするべく、取り組みを加速させている。テコにするのは最新のPaaS。例えば創造的なアプリケーションを次々にリリースすることで経営層と社員を刺激し、企業文化を変えるアプローチだ。米ピボタル・ソフトウェア(Pivotal Software)が2018年9月に開催したコンファレンス「SpringOne Platform 2018」から、Pivotal Cloud Foundryやアジャイル開発を駆使したDXの最新事例を報告する。

世界の大手企業がPaaSを駆使して開発・実行環境を変革

 事業や経営を取り巻く環境は急ピッチで変化し続けている。そんな中で企業のITには、システムやサービスを迅速に変化、あるいは進化させ続ける能力が求められる。ちょっとした機能変更はもちろん、たとえ大規模なシステム更新でも以前のように数年をかけることは許されない。むしろ何らかのアイデアを思いついたら、できるかぎり迅速に実装して試せる能力が必要になる――。

 こんな共通認識の下、世界の名だたる企業・組織が今、アプリケーションの開発、稼働、運用技術の変革に取り組んでいる。アジャイル開発やDevOps、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリ)、コンテナ、クラウドといったキーワードで表現される手法や技術、端的に言えばPaaS(Platform as a Service)を会得することだ。本誌は、そのことを米レッドハット(Red Hat)のPaaS「OpenShift Container Platform」を例に1年少し前の記事(関連記事:ドイツ銀行、BMWなどがマイクロサービスに取り組む―デジタル化に対する危機感が背景に)で示した。今年5月にも報告した(関連記事:ハイブリッドクラウドは前提に、コンテナは必須に―レッドハットと顧客のデジタルシフト)。

示されたPivotal Cloud Foundryの最新動向

 今回はもう1つのPaaSであるCloud Foundryに焦点を合わせる。“もう1つの”と書いたが、IBMやSAPなど大手ITベンダーの支持も手伝って、PaaSとしての広がりでは、Cloud FoundryがOpenShiftをリードすると見られる。事実、オープンソース版のCloud Foundryを開発するクラウドファウンドリー財団(Cloud Foundry Foundation)のWebサイトには、実に多様な企業が名を連ねている(表1)。

表1:Cloud Foundryのユーザー一覧(出典:米クラウドファウンドリー財団)

 しかも、この表に掲載したのは一部にすぎない。同財団によるとフォーチュン(Fortune)500の大手企業のうち半数がCloud Foundryを導入済みという。少し大げさだとしても、なかなかに有力な存在と考えられる。はたして実情はどうなのか。

 オリジナルのCloud Foundryの開発元であり、商用サブスクリプション版「Pivotal Cloud Foundry」(PCFと略称される)を提供するのが米ピボタルだ。その同社が主催する年次コンファレンス「SpringOne Platform 2018」(2018年9月24日~27日、米ワシントンDC郊外、写真1)に参加する機会があった。ここでは事例発表を中心にレポートする。

写真1:SpringOne Platform 2018のメインステージ。主催者発表の参加者数は3000人だ

 最初に、同コンファレンスの成り立ちにかかわる名称について触れておく。SpringOneのSpringは、プログラミング言語のJavaを用いて企業向けアプリケーションを開発するのに必須とされるフレームワーク(機能モジュール群)の1つ、Spring Frameworkに由来する。このコンファレンスは本来、Springを活用する開発者(ディベロッパー)に向けたものである。別のオープンソースフレームワークで、業務アプリケーション開発の中核を担うJava EE(Java Platform, Enterprise Edition)と同様、開発を容易にして生産性を高めるさまざまな機能を提供する。

 ただし、DevOpsやCI/CD、コンテナなどを実践・活用するにはSpringだけでは不十分。Springを生かすためにもPCFのようなPaaS、つまりプラットフォームが必要になる。結果、現在ではPCFの存在感も増している。コンファレンス名にPlatformも入っているのはそんな意味合いからだろう(ちなみに“One”は、2017年まで開催されていた開発者コンファレンス「JavaOne」からの転用と見られる)。なお、PCFを含めたCloud Foundryのコンファレンスには「Cloud Foundry Summit」がある。

●次ページ:SpringOne Platform 2018で講演した全ユーザー企業名とそれぞれの取り組み一覧

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