[市場動向]

NEC、東工大、早大、横国大が量子アニーリングマシンの要素技術を開発するプロジェクトを開始

2018年10月10日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

NEC、東京工業大学、早稲田大学、横浜国立大学の4機関は2018年10月9日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による新規事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発」に採択されたと発表した。4組織のほかに、産業技術総合研究所がNECの共同実施先として、京都大学がNECの再委託先としてプロジェクトに参画する。

 プロジェクトの狙いは、組み合わせ最適化問題を高速に解く量子アニーリングマシンの活用によって、広範な産業領域に存在する現実の課題を高速に解決することである。プロジェクトでは、量子アニーリングマシンの課題である「コヒーレンス時間」(量子の重ね合わせ状態が持続する時間)と「集積性」を両立した国産の量子アニーリングマシンを実現するための要素技術を開発する。

図1:研究開発の概要(出典:NEC、東京工業大学、早稲田大学、横浜国立大学)図1:研究開発の概要(出典:NEC、東京工業大学、早稲田大学、横浜国立大学)
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 4機関が共同で、超電導パラメトロン素子開発、3次元実装技術、信号読出・制御、およびこれらを支える理論検討・シミュレーションを通じて、量子アニーリングマシンの実現を目指す。

 さらに、アプリケーションソフトの基盤を開発するNEDO委託事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ/次世代コンピューティングの技術開発/イジングマシン共通ソフトウェア基盤の研究開発」(代表事業者は早稲田大学)と連携して最適化を実現する。

 「量子アニーリングマシンによって、これまでは時間的制約で精度の低い近似解法に頼っていたような最適化問題を、短時間で高精度に解くことができると期待されている。しかし、現状の量子アニーリングマシンは完成形ではなく、現在の超電導量子アニーリングデバイスが持つ課題、すなわち高速計算の源泉となる量子コヒーレンスと集積性を両立することが求められている」(NEC)。

 本プロジェクトの代表事業者であるNECは、量子コヒーレンスと集積性の課題の克服に向けた、新しい量子素子の開発を進めている。量子コヒーレンスを保つ時間が以前よりも2桁向上したことを実証しており、これにより計算精度と速度を高められるとしている。今後は、本プロジェクトにおいて、本量子素子の多ビット化と全結合方式の動作実証などを進めていく。

研究体制と役割
役割 担当
高コヒーレンス超電導パラメトロンアニーリング素子の研究開発 NEC、産業技術総合研究所
多ビット化を支える3次元実装技術の研究開発 NEC、産業技術総合研究所
多体相互作用の高効率な表現方法の研究開発 東京工業大学
量子アニーリング機構の設計最適化技術に関する研究開発 早稲田大学
量子磁束回路を用いた量子ビット用制御・読出し回路の研究開発 横浜国立大学
量子ダイナミクスの高速並列シミュレーションによる量子アニーリングの性能評価の研究開発 NEC、京都大学
関連キーワード

NEC / 量子コンピュータ / 量子アニーリング / NEDO / 東京工業大学 / 早稲田大学 / 横浜国立大学 / 京都大学 / 産業技術総合研究所 / 協業・提携 / R&D / 組み合わせ最適化問題 / 産学官連携 / 大学

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