[ザ・プロジェクト]

従来型DWHから「アナリティカルウェアハウス」への転換─米フルーツオブザルーム

Teradata Analytics Universe 2018[事例編]

2018年11月5日(月)河原 潤(IT Leaders編集部)

データウェアハウス(DWH)をこのまま巨大なデータ倉庫として使うのか。それとも、ビジネスを成長させるプラットフォームとして使うのか。創業167年の老舗衣料メーカー、米フルーツオブザルームはアナリティクスの力を信じて後者への転換に取り組んだ。2018年10月に米ラスベガスで開催されたTeradata Analytics Universe 2018のブレイクアウトセッションから、同社のDWH刷新プロジェクトを紹介する。

 1851年に米ケンタッキー州で設立されたフルーツオブザルーム(Fruit of the Loom:FOTL)は、Tシャツやアンダーウェアのグローバルブランドである。競合の米ヘインズ(Hanes)と同様、カスタムプリント用のシンプルなTシャツが看板商品だが、スポルディング(Spalding)やラッセルアスレティック(Russell Athletic)といったスポーツアパレルブランドも展開し、日本を含め世界中で人気を博している(画面1)。

画面1:フルーツオブザルームのWebサイト。カラフルな果物ロゴのタグが付いたTシャツにきっと見覚えがあるだろう
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 FOTLは従来のデータウェアハウスを「アナリティクスウェアハウス」を転換することを目指した。アナリティクスウェアハウスとは、「担当者がデータを準備するという面倒な作業から解放され、ビジネスアナリティクスに専念できる環境」(同社プログラム管理バイスプレジデントのテリー・トリンジェン〈Terry Treangen〉氏、写真1)のことだという。

レポーティングの遅さと属人化

写真1:米フルーツオブザルーム プログラム管理バイスプレジデントのテリー・トリンジェン氏

 FOTLはテラデータの長期ユーザーである。刷新する前、2015年当時の環境は、中核のDWHアプライアンス「Teradata Enterprise Data Warehouse(EDW)」に、ERPシステム「Oracle E-Business Suite(EBS)」やPOSシステムなどの他の業務システム/アプリケーションを「Teradata Decision Experts(TDE)」を介して接続し、受注や請求、売上など各種データが日々投入されていた。レポーティングはBIツールの「MicroStrategy」を使い、分析は担当者の手元にある「Excel」や「Access」に、都度データセットを読み込ませて行っていた(図1)。

 トリンジェン氏は当時の環境をこう振り返る。「当社の業態上、DWHに多種かつ大量のデータを溜め込んでいたわけではないが、それでもトランザクションデータで膨れ上がっていた。DWH内での統合がなされておらず、例えば、請求情報をコストと照らし合わせるような作業が非常にしにくかったうえ、レポートに膨大な時間がかかり、ビジネス分析に十分な時間をかけられなかった。簡単なレポートにもおよそ20分から30分も要していた」

図1:FOTLにおける刷新前のDWH環境(出典:フルーツオブザルーム)
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 加えて、人材不足も露呈していた。「DWHから必要なデータを抽出して操作し分析まで持っていけるスタッフが全社で数人、1部門に1人いるかいないかで、その人が休暇で数日オフィスを離れると、たちまち現場の作業が滞ってしまっていた」(同氏)

 このように当時、FOTLが行っていたDWHの取り組みは、Teradata EDWの基本機能にとどまり、トランザクションデータをひたすら格納する“倉庫”の状態で、とりわけ、ビジネスに直結する分析に関しては十分に行えないでいた。トリンジェン氏は「ビジネス部門からはもっといろいろな分析をかけたいという声が上がっていたが、それがままならなかった。このビジネスニーズとシステムのギャップの解決が急務だった」と話す。

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