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ワクワク感こそが変革の起点~他流試合に出る気概が日本ものづくりに価値創造をもたらす

─注目イベント「BE:YOND」オープニングキーノートの要諦─

2018年12月6日(木)

2018年10月25日、東洋ビジネスエンジニアリングが主催する年次イベント「BE:YOND 2018」が都内港区のホテルで盛大に開催された。本稿では、オープニングキーノート「ものづくりデジタライゼーション~これからのデジタル時代に製造業はどう向き合うべきか」で語られた要点を紹介する。

「創造生産性」の観点で分子となる価値創造に着目する

 テクノロジーの進化と普及を追い風に、いかにして新しい価値を顧客に届けていくか──。この文脈でローランド・ベルガーが打ち出しているのが「創造生産性」なるキーワードだ。創り出した価値(お客様が支払う対価)を、それにかけた時間で割ることで算出される指標である。

 「ここで時間よりも、新しい価値をたくさん創り出すこと、つまり分母じゃくて分子に着目してほしいのです。顧客を笑顔にする新しい価値を常に考える。全員が消費者目線で価値の仮説を自発的に考え、何らかの形にし、検証を繰り返していく。そんな取り組みができるかどうかが問われているのです」と長島氏。

 これまでの延長線上にはないチャレンジだけに一筋縄ではいかない。一方では、日本の製造業が脈々と培ってきた強みが活きる部分もある。まさしく日本流イノベーションのあり方を再考すべきタイミングであり、ここに同社が提示するのが「和ノベーション」の考え方だ。和は「日本ならではの」という意味であり、他には「話=垣根を越えた対話」「輪=同志との強いつながり」をも包含した想いがある。

 日本の製造業には「自律的な現場力」がある。大部屋主義で、壁に直面した時には、個々が持てる力を持ち寄り、部門の壁を越えて、打開策を考える。顧客の心を慮りながら、あうんの呼吸で立ち回る。もちろん、飛び抜けたスキルやノウハウを備えた強者も粒ぞろいだ。

 そんな土壌をさらに豊かにするのがデジタル化だと捉える。個々人の暗黙知を誰もが再利用できる共通資産に変える。社内外の動きを的確かつ迅速に把握して周知徹底する。関係者をつなぎ合わせ問題点を膝詰めで議論できる材料を提供する…。各種のソリューションの裾野は広がり、価格面も含めて身近な存在となっているのでハードルは高くない。歯車がうまく回り始めたならしめたもの。「日本企業は小さなイノベーションを量産することに長けているはずで、その積み重ねが持続的な競争力へと結びつきます」(長島氏)。

 ただし、先の創造生産性の話に立ち返るならば、分子である「新しい価値」を見据えることを忘れてはならない。「いつまでも内に閉じこもって、これまでの経験則や成功体験に固執していては打ち手も自ずと限界があります。積極的に外に出て、『話』や『輪』を強く意識しながら、異質なものに触れる努力が“和ノベーション”の芽となり、やがて価値創造へと結実するのです」(長島氏)。

 “外”に目を向けると、どんな刺激があるのか。長島氏は「日々、新しいことに触れるのは簡単ではありませんが、1つのきっかけになればと今日は皆さんにサプライズを用意しているんです」と笑みを浮かべたかと思うと、会場が暗転した──。

長島氏が用意した“サプライズ”──その真の狙いとは?

 和風なBGMが流れた直後にスポットライトが点灯。ステージ上には、派手な衣装に身を包みVRゴーグルを装着した謎の美女が佇んでいる。突然、ダンスを始めたのかと思いきや、彼女の腕の動きに合わせてバックスクリーンに色鮮やかな絵が描かれていく。何だこれは?

 どうやら空間上に立体的なグラフィック作品を創り出すらしい。両手に持っているのはコントローラなのであろう。ちょっとした動作でドローイングツールやカラー、エフェクトを切り替えているようだ。背後に大映しになっているのは、恐らくは彼女がVRゴーグルを通して見ている空間そのものに違いない。

 徐々に形になる、日本庭園をモチーフにしたような風景は、細かい葉を付けた木々も、落差ある一筋の流れも実にリアルだ。眼前で何が起こっているかをようやく理解した来場者は一様に前のめりになり、会場のボルテージが一気に高まってくるのが分かる。やがて中央に姿を現したのは大きな鳳凰。力強い両翼のエッジには炎が揺らめく。あっという間に仕上げられた、見たこともない作品。そして圧巻のパフォーマンス。割れんばかりの拍手が鳴り止まなかった。

VRアーティストとして活躍する「せきぐちあいみ」氏によるライブペインティングに会場は大いに沸いた

 ──サプライズとは、VRアーティストとして活躍する「せきぐちあいみ」氏によるライブペインティングだった。作品をTwitterやYoutubeで発信することが契機となって、今や世界中から注目される存在である。興奮冷めやらぬ会場のステージに立つ長島氏と羽田氏が「どうですか、面白かったですか?」と会場に問いかけると、至る所から一斉に挙手や拍手の反応があった。

 「皆さん、ワクワクしましたよね? 今、感情が動いたと思うんですよ。VRひとつとっても適用分野は実に広い。ビジネスシーンでも数々の実証実験が取り組まれています。例えば、ワクワクしながらトレーニングできたら学ぶスピードが上がりそうじゃありませんか? この“心がワクワク”というのがとても大事で、これを起点に何かに使えるんじゃないだろうかという想いにつながれば、創造生産性は間違いなく上がっていくはずです」と長島氏は訴えた。

 羽田氏は「日本企業の弱いところを挙げるならば内向的な傾向が強いということです。長島さんのおっしゃった創造生産性の観点で言えば、同じ常識の中では時間の効率化はできるかもしれないけれど、分子である価値の創造は大きく変えられない。だからこそ、勇気を振り絞って異質なものに触れていく姿勢が重要であることを皆さんに伝えたいのです」と語気を強めた。

 「異質なものと触れ合う」ことを後押しするために、ローランド・ベルガーは数々の仕組みや場を用意しているという。例えば、最新ガジェットを軒並み買い揃えている「デジタルルーム」。コンサルタントが自ら試したり、時には顧客企業の役員などを招いて“とにかく体験”してもらうことに重きを置いている。また「凄腕バンク」や「異能バンク」といった制度で、ユニークな技を持つ企業や個人を発掘すると共に他社とのネットワーク作りを促すことにも余念がない。日常から離れ視野を広げることを目的としたワークショップ「刺激の半日」など挙げればきりがないほどだ。

 「心地よい所にずっととどまっていては進歩はありません。恥ずかしい思いや悔しい思いを厭わずに、自分の中に多様性を創ることが欠かせないのです。それを実現するには、自ら手足を動かして刺激を追い求めること、せっせと他流試合に出かけることが大前提となることを肝に銘じてほしい」(長島氏)との意見に羽田氏も大きく頷き「こうしたイベントの場も是非、有効活用してほしいですね」と締めくくった。

日本の製造業の進路を示しながら来場者にエールを贈る長島氏(左)と羽田氏(右)

【参考情報】BE:YOND 2018全体の開催レポートは下記にてご覧頂けます。
https://forum.to-be.co.jp/beyond2018/report/

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