[市場動向]

NECがデンマーク最大のIT企業KMDを買収、海外セーフティ事業を拡大

2018年12月27日(木)日川 佳三、杉田 悟(IT Leaders編集部)

NECは2018年12月27日、デンマーク最大のIT企業であるKMDを買収すると発表した。海外でのセーフティ事業をデジタル政府領域へと拡大するのが狙い。同日付の取締役会において決議した。取得価額は80億デンマーク・クローネ(約1360億円)で、買収の完了時期は2019年2月28日を予定している。

 NECが買収すると発表したのは、デンマークの持株会社KMD Holdingsの中核企業であるKMDだ。従業員数約3200名で、2017年12月度の売上高約56億デンマーク・クローネ(約958億円)のうち70%以上を中央政府、地方政府のパブリックセクターで占める、デンマーク最大のITベンダーである。

 KMDの事業部門別の売上は、地方政府が53%、中央政府が19%、民間が27%である。主要なビジネスモデルは、ソフトウェア(主にSaaS)と保守運用によるリカーリング事業(継続的に収益を生み出す事業)。NECは、同事業が全体の72%を占めているのは、KMDの売上の堅牢さを示すものとしている。

 NECはまた、個別SIの売り切り型ビジネスから、複数の会社へと水平展開できるプラットフォーム型のビジネスモデルへの転換を図っている。ソフトウェアを中心としたリカーリング事業に強みを持つKMDを買収することで、プラットフォーム型のビジネスモデルへの転換を加速する。

先進ITを駆使したセーフティ事業を海外の成長エンジンに

 NECは、2020年までの3カ年の中期経営計画において、生体認証やAIなどを活用したセーフティ事業を、海外での成長エンジンと位置付けている。

 2018年1月には英国のNPS(Northgate Public Services)を買収し、バイオメトリクスを中心としたセーフティ事業を警察や中央政府、地方政府などに展開している。今回、KMDの買収によって、パブリックセクターでデンマーク国内シェアトップを誇るKMDの行政向けを中心としたソリューションを獲得。ここに顔認証をはじめとするバイオメトリクスを付加し、新たなソリューションを提供していく考えだ(図1)。またNECは、KMDの買収は、海外におけるセーフティ事業をデジタル政府領域へと拡大する意味を持つとしている。

図1:NECのバイオメトリクスとKMDの公共市場ソリューションの組み合わせで狙うシナジー(出典:NEC)
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 KMD自身、過去3年間で7社を買収して、金融・保険を中心とした民間向けソリューションおよびUX、データ&アナリティクス事業の強化を図っている。行政、金融をはじめ、ヘルスケア、教育、エネルギーの各分野のビッグデータ利用の権利を持っており、ここにNECがAI・アナリティクスソリューションの「NEC the WISE」を組み合わせることで、新たな付加価値を創出していく狙いがある。

 先に買収したNPSとのクロスセルも進めていく。両社のプラットフォーム、得意分野のソリューションを相互補完し、それぞれに強みを持つ地域へ拡販していく計画で、近隣の欧州諸国および北欧、東欧諸国がターゲットになる。加えて、NECのチャネルを活用してソリューションをグローバル展開していく考えだ。

 図2は、NECが描く、セーフティ事業での今後の成長グラフである。オーガニックな成長とKMDの買収、これにM&Aシナジーによる成長を加え、2020年度にはセーフティ事業の海外売上高2000億円を目指す。

図2:KMDの買収によって海外でのセーフティ事業を拡大する(出典:NEC)
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