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富士通、熊本城の崩落前の石垣石材位置を画像処理で特定する実証実験

2019年3月12日(火)IT Leaders編集部

富士通と富士通アドバンストエンジニアリングは2019年3月11日、2016年4月14日発生の熊本地震によって崩落した熊本城飯田丸五階櫓において、画像処理によって石垣石材の崩落前の位置を特定する実証実験の実施を発表した。実験の結果、80%以上の精度を達成し、作業時間を短縮できることを確認した。

 石垣石材の崩落前の位置を特定するシステムを開発した。要素技術として、大量の画像の中から指定した画像に対し、部分的にでも一致する画像を高速に検索する高速部分画像検索技術と、検索の精度を高める画像最適化技術の2つの技術を組み合わせた。

 崩落した石材の画像と、崩落前の石垣画像とをマッチングし、精度の向上と検索時間の短縮を試みた。この結果、崩落前の石垣における石材の正確な位置を、80%以上の高い精度で特定できた。作業時間を短縮できることを確認した。

 熊本城は、2016年4月14日に発生した熊本地震で甚大な被害を受けた(写真1)。国の特別史跡に指定されているため、被害前の姿を保つことで、文化財的価値を保護する必要があった。現在、復旧作業が進んでいる。

写真1:崩落後の熊本城飯田丸五階櫓(提供:熊本城総合事務所)写真1:崩落後の熊本城飯田丸五階櫓(提供:熊本城総合事務所)

 2018年3月に制定した熊本城の復旧基本計画によると、完全な修復には約20年間を要する。なかでも、石垣は最も被害が大きく、約3万個の石材が崩落している。石垣の修復にあたっては従来、図面化した崩落石材と、崩落前に撮影した石垣の画像を専門家が目視で比較することで、崩落した石材の位置特定を行っていた。膨大な時間を要していることが課題だった。

 富士通と富士通アドバンストエンジニアリングは、熊本城復旧現場の作業時間短縮のため、熊本市 経済観光局 熊本城調査研究センターが保有する崩落前の石垣画像と、崩落後に撮影した石材画像を活用した、石材の崩落前の正確な位置を把握可能な石材位置特定システムを開発し、実証実験を行った(図1)。

図1:実証実験のイメージ(出典:富士通)図1:実証実験のイメージ(出典:富士通)
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 実証実験の期間は、2018年11月5日~同年12月14日で、場所は、熊本城飯田丸五階櫓石垣の崩落面2面である。実際に崩落があった熊本城飯田丸五階櫓の石垣で、すでに熊本市が特定した123個の石材を対象に実施した。

 画像から石材の部分のみの切り出しや、石材や石垣の表面の明るさなどの特徴を際立たせる画像最適化技術を適用することで、検索の精度を高めた。この後、1つの石材全体もしくは部分的に一致する画像を抽出する高速部分画像検索技術によって、崩落後の石材が崩落前の石垣のどの位置のものか、より類似度の高い画像を特定する一連の流れを繰り返し行い、精度の向上および検索時間の短縮に取り組んだ。

 この結果、最終的に、1日で101個の石材の正確な位置を特定でき、82.1%の精度を得た。作業時間を大幅に削減できることを確認した。

 富士通と富士通アドバンストエンジニアリングは、今後本格化する熊本城復旧作業の効率化支援に向けて同技術の精度を高めていくとともに、ほかの文化財復旧支援への適用を進め、文化財復旧支援ソリューションとして2019年度中の商品化を目指す。

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