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[ITプロジェクト成功の要件「7つの行動特性」を理解する]

IT発注者に求められる7つの行動特性「PROMETList」を編み出した理由:第1回

2019年3月28日(木)野々垣 典男(プロメトリスト 代表)

2019年3月中旬に掲載した「ITプロジェクトの成功に必須の『7つの行動特性』─元JTBのシステム責任者が大学院での研究成果を公開(https://it.impressbm.co.jp/articles/-/17591)」を、非常に多くの読者に読んでいただいた。同記事で紹介した野々垣典男氏は、7つの行動特性の頭文字をとって「PROMETList」(プロメトリスト)と名づけ、現役CIO/ITリーダーに向けて理解・活用を促している。今回から4回にわたって、野々垣氏自身が7つの行動特性それぞれについて解説する。

 テクノロジーは急速に進化し、今や経営とITは切っても切れない関係になった。ITにかかわる失敗は経営の失敗につながりかねない。にもかかわらず、国内のIT紛争の訴訟件数は増加傾向にあり、損害賠償請求金額も高額化している。筆者はJTB時代にみずからIT紛争の裁判にかかわり、それが発注者も受注者もまったく得にならないことを身をもって経験した。訴訟のような不毛な事態を避けて、ITプロジェクトの成功率を高めていくにはどうすればよいのか──。

 「成功」の定義にもよるが、国内外の調査によるとITプロジェクトの成功率は30%から50%程度と低い。筆者が現役時代にその成功率を高める方策を考えていたとき、自身が「システム」について体系的に学んでいないことに気づいた。システム部門に20年間勤務していたので、ハードウェアやソフトウェア、ネットワークなど領域の幅は広いものの、断片的な知識しか得ていなかったのだ。

「成功」の定義にもよるが、国内外の調査によるとITプロジェクトの成功率は30%から50%程度と低い──この成功率をいかにして高めるか

 システムについて体系的に学ぶことができ、ITプロジェクトの成功率を高めるための研究ができる大学院はどこなのか。調べたところ、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、通称「慶應SDM」を見つけるのにそれほど時間はかからなかった。そこで説明会に参加し受験、2017年4月に入学した。その経緯については関連記事ITプロジェクトの成功に必須の「7つの行動特性」─元JTBのシステム責任者が大学院での研究成果を公開を参照していただきたい。

修士研究で、どのように7つの行動特性
「PROMETList」を導出したのか

 大学院に入ったところで、自動的に答えが得られるわけではない。修士としての研究テーマは入学前から決まっていたが、実際に研究を実施するにはそれなりの作法があった。研究し尽くされている分野にあらためて取り組んでも新たな価値を提供するのは難しいので、研究には新規性(または新奇性)や独創性が求められる。そのためには、研究対象の分野について国内外の先行研究の事前調査を行うことになる。そして、研究結果の検証(Verification)、妥当性の確認(Validation)を行う必要もある。

 ITプロジェクトの成否に関する先行研究を調べていて、1つの気づきを得た。米国では主に発注者であるユーザー企業が研究しているのに対して、日本では主に受注者であるITベンダーが研究していることだ。背景には、米国はユーザー企業の社内で開発プロジェクトを立ち上げエンジニアを雇い、自前でシステムを開発する体制が根づいていることがある。

 これに対し、日本ではベンダーに委託するのが基本的な開発体制であり、収益や評価を追求するベンダーにとって成功確率を高めるのはみずからの経営上欠かせない。しかし、ITプロジェクトの成功率を高める活動をベンダーだけに押し付けてよいのだろうか。度が過ぎると「丸投げ」になり、ユーザー企業は自社のITをまともにコントロールできなくなるのではないか。このような問題意識から、ベンダーへの委託を前提としてITプロジェクトを成功させるために、発注者が実施すべき内容を経営者視点で研究することにテーマを絞り込んだ。

 本研究の中心はインタビューだった。筆者は、発注側企業の経営者8名、受注側ベンダーの経営者8名、さらに中立的な立場4名の合計20名にインタビューした。その後、インタビューの内容を詳細に分析した結果、次の7つの経営者の行動特性によって、ITプロジェクトの成功率が高まることが検証された(図1)。

行動特性1 IT人事・IT人材育成Personnel of IT Members)
行動特性2 ビジネスとITとの関連性理解Relationship between Business and IT)
行動特性3 IT組織・体制構築Organization of IT Management)
行動特性4 プロジェクトマネジメントManagement on IT Projects)
行動特性5 当事者意識Engagement to IT Projects)
行動特性6 ベンダーとの信頼関係Trust Relationship with IT Vendors)
行動特性7 学習意欲Learning Motivation)

図1:発注者行動特性7要素「PROMETList」(プロメトリスト)
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 それぞれの頭文字を連ねて、語尾に「◯◯する人」を意味する接尾語の-istをつけて命名したのが「PROMETList」(プロメトリスト)=発注者行動特性7要素である。これを大規模ITプロジェクトを成功させうる経営者像とした。

 本連載では、PROMETListについて今回も含めて4回に分けて説明するが、最初に前提条件を記しておきたい。「発注者行動特性7要素」とはその名のとおり、発注者、特に社長やCIOなどの経営者に焦点をあて、ITプロジェクトを成功させるための行動特性を抽象化したものである。

 したがってCIOが備えるべき知識やスキルに関して掘り下げたり、IT部門スタッフの人事・育成に関する記述はここでは行わない。抽象化された7つの行動特性を導出するのが研究の目的であり、どう実施するのかは別問題である。これらについて筆者なりの見解や回答は持っているがあえて割愛し、客観性を持つ検証済みの研究結果に絞って説明することをご承知いただきたい。

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