[市場動向]

「IT予算の8割がシステム維持管理」が依然続き、沈みゆく日本のITユーザー/IT業界

「旧来システムを清算しない」ユーザー企業と「開発業から保守業に変ずる」ソフトウェア会社──“日本沈没”の危機を直視する

2019年6月6日(木)佃 均(ITジャーナリスト)

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の年次レポート「企業IT動向調査」によると、ユーザー企業のIT予算の8割が既存システムの維持管理に使われている。依然として続く「現状維持8割:新規開発2割」の傾向だ。にもかかわらず、受注するITベンダーやソフトウェア会社はその仕事を「ソフトウェア開発」と言い換えるため、新規ビジネスのためのシステム開発が圧縮されている実態が見えてこない。レガシー負債の清算を先送りにすることは、座して「日本沈没」を待つことを意味している。

「既存維持8割:新規開発2割」の傾向に変化なし

 日本国内で投入されるIT予算の総額は、8兆円前後と見られている。内訳は民間大手が4兆円、中堅・中小が2兆円、国・自治体が2兆円だ。といって、正確な統計はなく、情報処理実態調査や特定サービス産業実態調査(いずれも経済産業省)などの値を基にした推定にすぎない。

 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の企業IT動向調査も、そうした統計資料の1つである。会員は東証1部上場の大手企業とIT子会社など約4000社、直近の2018年度版の回答企業は1103社だ。全国の法人組織170万社、法律が定める「大企業」1万1千社と比べれば微々たるものだが、国内企業のIT予算の傾向を測る基礎資料としては十分だ。

 それによると、2018年度、既存システムの維持管理に投入されたIT予算の配分比率は77.5%だった。2013年度の79.1%から5年間で1.6ポイント低下したが、長く続く「現状維持8割:新規開発2割」の傾向に大きな変化はない(図1)。

図1:ユーザー企業のIT予算の配分比率(出典:JUAS「企業IT動向調査」の2013~2018年度結果を基に作成)
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 回答企業に、3年後の目標を尋ねると66.3%に低下するが、「維持管理費が9割以上」の企業が35.9%から39.9%に増加している。目標は「新規開発費の拡充」だが、実態は「既存システムの延命に注力」、つまり現行システムの維持管理で精一杯というわけだ。

 実際、財務会計、在庫管理といった企業活動の根幹と呼べるシステム、いわゆる基幹系システムの寿命(運用開始から全面刷新までの期間)は、2008年に13.6年だったのが2013年は14.6年と伸びている。筆者は以後の数値を持ち合わせていないが、「さらに伸びている」と見る関係者が少なくない。

100兆円超を投入して何も生まなかった

 総じて言えることは、日本の企業の多くはコンピュータの西暦2000年(Y2K)問題をクリアした直後のシステムを後生大事に使い続けていて、根本的な見直しもないまま、5年を単位とするリース契約の4~5サイクル目に突入しようとしていることだ。

 維持管理費はハードウェアやソフトウェアパッケージ、外部サービスの利用料、設置スペース費、光熱費、人件費など可変性が小さいため、その構成比を下げるには総額を増やすか、外注費の値下げということになってくる。ちなみにハード、ソフト、光熱費など固定費を除いた運用費は、IT予算全体の2割前後なので、新規開発費とほぼ同額だ。

 読者にあっては「じゃあ、日本の企業のIT予算っていくらぐらいなの?」と思っているだろう。経済産業省の「平成29年度情報処理実態調査」によると、回答1899社の平均は9億6000万円、このうち製造業は14億8700万円、電気・ガスは24億3500万円、金融・保険は31億6300万円などとなっている。

 いずれにせよ、大企業に限定して年間3兆円以上、全体では5兆円超という巨費が「現状維持」に投入されている計算だ。Y2Kから20年、日本の企業は100兆円もの巨費を投入しながら、新しいビジネスを生み出すことがなかった、というわけだ。

●Next:「運用」を「開発」と言い換えるのはどういうことか?

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