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TISと電通大、分散協調キャッシュ技術を実証、動画配信で最大92%の通信量を削減

2019年6月12日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

TISと電気通信大学は2019年6月11日、共同で開発した「大容量コンテンツ配信を担う軽量分散協調キャッシュ技術」について、実証実験を国内3カ所で実施したと発表した。組織内ネットワークで動画を配信したところ、最大で92%の通信量を削減できた。

 開発したキャッシュ技術の狙いは、企業や組織のクローズドな社内ネットワーク環境においても、CDNと同様に、動画などの大容量コンテンツを効率よく配信できるようにする、というもの。実験の結果、動画配信で最大で92%の通信量を削減できた。大容量コンテンツを共有できることを実証した。

図1:大容量コンテンツ配信を担う軽量分散協調キャッシュ技術の概要(出典:TIS、電気通信大学)図1:大容量コンテンツ配信を担う軽量分散協調キャッシュ技術の概要(出典:TIS、電気通信大学)
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 開発したキャッシュ技術は、複数のキャッシュノードをネットワークで接続し、ネットワーク全体で大容量なキャッシュを構築するというもの(図1)。キャッシュしたコンテンツをノード間で共有し、人気コンテンツをユーザーに近いキャッシュノードに配置する。これにより、効率よく通信量を削減する。

 キャッシュノードとコンテンツは、あらかじめいくつかのグループに分割し、所属グループを示すタグを付しておく。人気コンテンツは多数のグループに所属するように調整する。また、所属グループが同じコンテンツをキャッシュし、よく見る動画ほどユーザー近くにキャッシュする構成とする。

 キャッシュ配置計算の精度を限定するという工夫も凝らした。既存のキャッシュ制御方法では、キャッシュ配置の計算に10時間以上を要していた。キャッシュ配置計算の精度を限定することで、キャッシュ配置の計算時間を10秒以下に短縮した。

 実証実験は、2018年6月から2019年5月にかけて実施した(表1)。国内企業2カ所(TIS×17拠点、インテック×56拠点)と、研究機関1カ所(電気通信大学の吉永研究室)で実施した。サーバーから動画を配信し、各拠点にキャッシュサーバーを配置し、各拠点の端末から閲覧した。キャッシュの効果を計測し、クローズドネットワーク内で大容量のコンテンツが取り扱い可能かどうかを調べた。

 以下の5つの特許を申請している。

  1. 軽量・高効率な分散協調キャッシュの構成方法
  2. 階層型キャッシュネットワークでの応用方法
  3. 大容量データのデータ分割キャッシュ方法
  4. 携帯電話間の直接通信によるモバイル分散協調キャッシュの構成方法
  5. ライブ配信動画のタイムシフト試聴のためのキャッシュ制御方法

 今後は、組織内のクローズドなネットワーク環境だけでなく、5G携帯ネットワークにおける携帯電話間の通信など、各種の領域に適応していく予定。

表1:実証実験の概要
期間 2018年6月~2019年5月
場所
  • 国内企業:2カ所(TIS株式会社:17拠点/株式会社インテック:56拠点)
  • 研究機関:1カ所(国立大学法人電気通信大学 吉永研究室)
環境 各企業・機関の環境上にて本技術を適応
実験の概要 以下の内容で、キャッシュの効果計測と、従来のクローズドネットワーク内で大容量のコンテンツが取り扱い可能かの実験を実施。
  1. サーバから動画を配信。各拠点に本技術を利用したキャッシュサーバを配置
  2. 動画配信サーバを設け各拠点の端末から動画を閲覧
  3. 必要に応じて、最も近いキャッシュサーバから、動画をダウンロードして閲覧
キャッシュの働きについて
  • 複数のキャッシュサーバ間で、動画の視聴傾向に基づき、特許申請中の独自アルゴリズムによる動画のキャッシュを最適配置
  • 2時間おきに最適配置を見直し(最適化の計算処理を3秒以内で実施)効率的かつ安価にキャッシュすることでネットワークの通信量を最大92%削減
  • 最も近いロケーションにあるキャッシュサーバからダウンロードすることで、ボトルネックとなる足回り回線の帯域利用を抑制
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