[麻生川静男の欧州ビジネスITトレンド]

Industrie 4.0のビジョンを次々と具現化するBosch:第2回

2019年7月2日(火)麻生川 静男

グローバルITトレンドの主要発信源と言えば、やはりハイパースケーラー群を筆頭に有力IT企業がひしめく米国で、ゆえにこの分野の海外ニュースは米国発に偏りがちである。しかし本誌の読者であれば、自動車、電機、運輸、エネルギーといった世界をリードする各産業でITの高度活用に取り組む欧州の動きも追わずにはいられないだろう。本連載では、ドイツをはじめとした欧州現地のビジネスとITに関わる報道から、注目すべきトピックをピックアップして紹介する。

 自動車機器や産業機器などの世界的なメーカーである独ロバート・ボッシュ(Robert Bosch GmbH)。同社が以前からIndustrie 4.0に積極的に取り組んでいることは有名だ。実際、Boschは2015年~2018年の過去4年間、Industrie 4.0関連で15億ユーロ(約2000億円)を売り上げた。今後は出荷する製品にAI(人工知能)を組み込んだソフトウェアにする方針で、2025年ごろまでに製品の多くをAI化する予定だという。

 今回は、そんな同社における「Industrie 4.0のビジョンを具現化」する数々の取り組みを、今年のハノーバーメッセ(写真1)とBosch ConnectedWorld 2019で発表された情報からお伝えしよう。

写真1:ハノーバーメッセのBoschブースを訪れたアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相に、BoschのCEO、フォルクマル・デナー(Volkmar Denner)氏みずからが説明(出典:Boshプレスリリース)

組立工程検査のネットワーク化

 製造工程の中でも、組立工程はデータ化が遅れている分野である。それというのも、組立工程にはまだネットワークにつながっていない旧式の機械が多く存在するうえに、手作業もかなり多い。それで、品質管理のデータを集めようとすると、手作業になることが多く、データ蓄積などコンピュータ化されていないケースが多い。最終工程の検査で不良品が出る割合を減らすには、組立工程の初期段階からデータを取り込み、極力早い段階で基準外のデータが見つけることがカギとなる。

 2018年に設立されたBoschの新事業部門、Bosch Connected Industry(ボッシュ コネクテッド インダストリー)は組立工程において全工程のデータを取り込み、蓄積し、グラフ化するシステムを販売している。製品名は「Nexeed Production Performance Manager」(写真2)である。

写真2:Nexeed Production Performance Managerの説明(出典:Boshプレスリリース)

 過去に蓄積されたデータと比較することで、少しでも不具合なデータが見つかれば、即時に警告を出すことができる。これによって、従来であれば組立最終段階の検査で見つかったような不良品を、最終段階を待たずに作業の途中工程で発見し、適切な措置をすることが可能となった。

 Boschの工作機械製造部門ではこのNexeedを実際に活用している。電動スクリュードライバーを使ってネジ締めをすると、即座にOK/NGのサインが出る。それだけではなく、ネジ締めの際の回転モーメント、回転角度、部品番号、回転方向(締める/緩める)、OK/NGなどのデータが無線でサーバーに送られ蓄積される。

 送られてきたデータをソフトウェアが自動的にチェックして不具合が見つかれば、担当の作業員にメールで警告が送られる。サーバーでは、刻一刻と集積されたデータがすべて視覚化されて担当の作業員が確認することができるようになっている。これらによって、検査コストを従来比で15%から20%も削減することができた。また、データが自動的に集積されるので長期(例えば12週間)のデータトレンドを知ることが可能となったという。

工場内の物流の自動化

 Boschグループで産業機器を手がけるBosch Rexroth(レックスロス)。同社は工場内の製造現場で資材や半完成品を自動的に搬送するシステム「ActiveShuttle」を発表している。最大で260Kgの重量の資材を運搬することが可能となっている。資材を受け取る荷台と通信することで、運搬台車を指定の場所に置いたり、指定の場所から資材を運び出したりすることができる(動画1)。


動画1:ActiveShuttleの説明ビデオ(出典:Bosch Rexroth YouTubeチャンネル)

 これによって製造や組立の最適なタイミングに資材を搬送でき、時間ロスをなくせる。レーザーセンサーで物体検知を行い、ActiveShuttle同士は互いに通信することで、モノや人に当たることなくスムーズに運行することができる。この高度なセンサーシステムの下、稼働中のAGV(自動搬送台車)や作業員がいる環境にもActiveShuttleを投入することが可能になっている。

 工場内ではなく、外の作業現場で、物の運搬や、荷台との積み下ろしなどを自律的に行えるロボットに対するニーズは高まる一方だ。そのためには、ロボットが障害物を検知して、自動的に迂回路を見つけて走行し、目的地につくと、相手のロボットや作業機械と連携して、荷物の積み下ろしを行う。このような自律/自走ロボットは、例えば、駅構内や空港の内部のような場所の清掃ロボットが考えられる。あるいは、室外(例えば農地や建設現場)でのモノの運搬と積み下ろし用の作業ロボットが考えられる。

●Next:まだまだある、Boschが取り組む先端IT

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