[市場動向]

富士通研究所、生体情報の暗号化技術を開発、オープン環境の手ぶら認証に向けて精度と速度を向上

2019年8月5日(月)IT Leaders編集部

富士通研究所は2019年8月2日、従来の生体認証システムと同等の認証精度・処理速度で、生体情報を暗号化したまま認証できる技術を開発したと発表した。生体情報を使い、オープンな環境でより安全に認証ができ、クラウド環境を活用した安全なキャッシュレス決済などが可能になる。2019年度中の実用化を目指す。

 これまで、生体情報を暗号化したまま認証する技術には、照合精度や処理速度に課題があった。今回発表した技術は、照合精度と処理速度の課題を解消した(図1)。手のひら静脈認証を対象に、暗号化を適用する際に起こる照合精度の劣化を防ぎつつ、照合処理を高速化できるという。

図1:開発した技術のイメージ(出典:富士通研究所)図1:開発した技術のイメージ(出典:富士通研究所)
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 生体情報を暗号化したままで、これまでよりも高精度かつ高速に認証ができる。これにより、専用線ではなく、インターネットを介したサービスの決済を、手ぶらで実施できるようになる。大規模チェーン店でのキャッシュレス決済などでの利用を見込んでいる。

 生体情報を暗号化したまま照合する技術は一般に、生体の画像データを単純なコード(数値列)に変換し、これに乱数をかけて暗号化する。しかし、従来の技術では、複雑な生体画像の特徴量を単純なコードに変換することによって照合精度が劣化する。さらに、コードのサイズが大きくなることで照合処理に時間がかかってしまう。

 今回開発した技術では、認証精度の劣化を抑制する。あらかじめ登録しておいた生体情報の特徴量と、認証時に入力した生体情報の特徴量の類似度に基づいて照合する。照合結果への影響度に応じて、コード化する領域の大きさを動的に調整する。コード化にともなう特徴量の類似度の変化を抑え、照合精度が劣化しないようにする。

 処理時間も大幅に短縮した。従来のコード化技術では、生体の画像データ全体からコードを生成していた。このため、照合処理に時間がかかっていた。これを改善し、生体の画像データの中で照合精度への影響が大きい領域を自動的に選択してコード化する技術を開発した。これにより、コードの増大を抑制し、コード化をしない生体認証技術と同等レベルの高速認証が可能になった。

 手のひら静脈のデータ1万人分を使用して開発技術の認証精度を検証したところ、コード化しない方式と比較して、ほぼ同等の照合精度と処理時間になることを確認した。富士通研究所が2013年に発表した、1つの生体情報から複数の特徴コードを生成する技術を加えることで、生体認証サービスごとに異なる特徴コードを活用することや、データ漏洩の対策にも有効だとしている。

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