[市場動向]

世界150万人のITエンジニアを活用できるクラウドソーシング「Topcoder」の仕組み

2019年8月20日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

数学的に高度なアプリケーションの開発、複合的なビッグデータの分析、あらゆる人にとって使いやすい画面デザイン──。自社単独では解決困難な課題に直面したとき、役に立つのが世界各地のすぐれた人材にアクセスできるクラウドソーシング(Crowdsourcing)だ。本稿では、世界150万人のITエンジニアやデータサイエンティストらの参加によってこの分野に特化したソーシングサービスを提供する「Topcoder」について、幹部への取材を基に詳しく紹介する。

 読者は、クラウドソーシングのコミュニティである「Topcoder(トップコーダー)」という組織をご存じだろうか? 単純な労働力を調達するタイプのそれとは異なり、世界各国のITエンジニアやデータサイエンティスト、デザイナーなどが互いに能力を競う、競技プログラミングの場をベースにする。そのため高度なプログラミングや複雑なデータ分析、UI/UXのデザインなどを担うハイレベル人材のソーシング(調達)に適している。

 例えば数理プログラミングやビッグデータ分析などに関して、自社では解決困難な課題があるとしよう。Topcoderは企業からの委託を受けて、それを解決するためのコンテスト(競技)を企画し、実施する。つまり世界中の優秀な人材に課題解決が委ねられるのだ。

 Topcoderが発足したのは2001年のこと。参加(登録)者数は着実に増え続け、2019年7月時点で150万人に上る。アクティブに活動するハイスキルの人材がどれだけかは分からないが、仮に10分の1としても10万人を超える人材にアクセスできる計算である。

 従来からあるIT企業への外部委託はもちろん、コンサルティングとも異なる課題解決の手段であり、もし知らないとすればもったいない。そこで来日したTopcoderの運営会社である米Topcoder デジタル担当バイスプレジデントであるアダム・モアヘッド(Adam Morehead)氏(写真1)へのインタビューも交えて、その仕組みや現状をまとめた。委託するには一定の費用がかかるし、どんな課題や問題にも適するわけではないが、「こういうやり方もある」ことを知っておいて頂きたい。

写真1:Topcoderデジタル担当バイスプレジデントのアダム・モアヘッド氏

参加者をレーティング、上位者は就職や仕事で有利に

 Topcoderは元々、優秀な人材を発掘・発見するためにスタートした。したがって参加者がコーディングの腕を競う競技プログラミングや、企業や組織が依頼したアルゴリズムやソフトウェア開発のコンテスト、UI/UXのデザインに関するコンテストが、常時開催されている(図1図2)。コンテストの内容は誰でも閲覧でき、2019年8月中旬時点では合計79件のコンテストが実施されていた(関連リンク)。

図1:Topcoderが実施する主なコンテスト。企業が依頼したものも含め、常時、何らかのコンテストが行われている
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図2:実施中のコンテストの一部
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 ではなぜITエンジニアやデータサイエンティストは、コンテストに参加するのか。上位になれば賞金が得られることはその理由の1つだが、トップになっても賞金は数千ドル程度。特に先進国の人材から見れば、賞金自体は大きな魅力とはいえない。モアヘッド氏は「自分の実力を把握できることが大きいでしょう。他の参加者の成果を見ることはスキルアップにつながりますし、様々な国の人材と出会えることもあります」と話す。

 Topcoderは、過去の実績を含めて参加者の実力を評価し、レーティングする仕組みを運用している。”ハンドルカラー”と呼ぶランク分けがそれで、上位からRed、Yellow、Blue、Green、Grayというレイヤーになっている(図3)。ハイレベルのRed、Yellowを獲得した人材は著名企業への入社が優遇される(=企業側が認識している)し、日本でもネット企業の一部がハンドルカラーを採用基準にしている。「トップクラスの人材は企業に所属しなくても、(セルフブランディングできるので)個人で高い報酬を得られるようになります」(同氏)

図3:Topcoderのレーティングによる人材の分布。参加者は自分の位置を一目で把握できる
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 参加者を増やすために、オンラインに加えてリアルなコンテストも実施している。Topcoder Openがそれだ。「今回の来日は、その東京大会に参加するためです。アルゼンチンやインド、中国などでも同じ予選会があり、各地の優秀者を11月に米国ヒューストンで開催する世界大会に招待します。このような場を持つことで参加者たちは互いに直接知り合う機会を得ます。何よりも世界大会に出場すること自体が名誉と認識されています」。

 繰り返しになるが、他の参加者の成果を見たりチェックしたりすることで、自分にはないスキルを習得できる。「どの大学で何を学んだのかとは関係なく、モチベーションさえあればスキルを身につけ、成長することができるのがTopcoderです。そのことをもっと多くのエンジニアやデータサイエンティストに知ってほしいと考えています」。あの手、この手で、エンジニアやデザイナーの参加を促しているわけだ。

●Next:日本人の参加者はどれくらいいる?

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