[市場動向]

人月モデルから「PSA」へ─日本のITサービス業は危機感を行動に移せるか

IT Leaders主催セミナー「情報サービス企業の明日の姿『プロフェッショナルサービス企業』へと舵を切る」

2019年9月30日(月)佃 均(ITジャーナリスト)

2019年9月12日、東京・神保町でインプレス IT Leaders主催セミナー「情報サービス企業の明日の姿『プロフェッショナルサービス企業』へと舵を切る」が開かれた。約60名が集まったこのセミナーで語られていたのは、日本の情報サービス産業のこの先のあり方に関わることだった。

 IT記者会の仲間とはいえ、メディアが主催する有料セミナーを記事にする機会は滅多にない(今回の受講料は6000円)。対価を払ってしか聴けない内容をバラしたら、次回の企画が難しくなるからだ。今回はIT Leaders編集部から特別に許可を得て、主催者・講演者・受講者の利益を損ねない範囲で、また、次回開催時には、「この内容のセミナーに参加すべき人」にもっと来てもらいたいと考え、一部の内容をお伝えしたいと思う(写真1)。

写真1:神保町のインプレス セミナールームに集まった受講者は約60名。IT Leaders主催のセミナーでは珍しく、ユーザーではなく情報サービス事業者やITベンダー担当者が受講対象だ

 筆者の記事「ITサービス「受託」の定義が変わる? 非人月モデルが8年連続で営業利益の過半占める」に見るように、受託ITサービス業では地殻変動が起こっている。にもかかわらず「JISAのトンチンカンを止めるのは誰か」を考えるのもバカバカしいという話」という現実がある。実際、今回のセミナーは定員30人に対して受講者は約60人と盛況だったのだが、情報サービス産業協会の幹部クラスの参加は数えるほどだった。そのじれったさが文章に出てしまうことを許されたい。

 セミナーのメインテーマは「PSA(Professional Service Automation)」だ。冒頭でセミナーの趣旨を説明したインプレス 編集主幹の田口潤氏によると、「Automationは製造業に限定される用語ではなく、モノやコトを自動的・安定的に生成していくこと、その仕組みを意味している。PSAはつまり、属人性を排しつつ、プロフェッショナルサービスをコンスタントに提供していく仕組み」という。

 IT Leadersのこの記事(関連記事情報サービス企業はいつまでSES契約を続けるのか? 今こそプロフェッショナルサービスを考慮すべき時)では、受託ITサービス業における人月のビジネスモデルを「SES」(Software Engineering Service)とし、PSAをSESから脱皮する方法、さらにエンジニアを高度化する手法として位置づけている。

 便宜上、PSAセミナーと呼んでいるが正式タイトルは、「情報サービス企業の明日の姿『プロフェッショナルサービス企業』へと舵を切る─働き方改革を正しく実践し、社員満足/スキル工場を両立─」。ちと長い。受託ITサービス業の高度化に向けた熱意を込めたのだろうが、テンコ盛りのキーワードがテーマをぼやかしてしまったかもしれない。

クラウドとDXで変貌する米国の産業構造

写真2:基調講演を行った山谷正己氏。ITコンサルタントとしてシリコンバレーの動向を長年ウォッチしている

 基調講演を務めたのは、米カリフォルニア州サンノゼを拠点に、シリコンバレーのIT企業や先進的なIT利活用に関する情報を発信している山谷正己氏(Just Skill.Inc代表、写真2)だ。ちなみに筆者は、山谷氏との再会はほぼ10年ぶりで、シリコンバレー視察/ITエンジニア研修プログラムに関連して、何度かコンタクトを取ったことがある。この日、氏の講演タイトルは「シリコンバレーとDXの最新動向」だった。

 例えば、IT記者会Reportの「講演再録」のように講演を文字起こししたり、内容を詳細に書くことは、山谷氏の知的財産を侵すことになる。そこで、ここでは概略を箇条書きで紹介する。

●Next:「サービスエコノミー」の波に乗り遅れる日本のIT企業

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