[市場動向]

富士通研究所、学習済みAIモデルの判定精度を再学習なしに維持する新技術を開発

2019年10月25日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)

富士通研究所は2019年10月25日、AI運用時に「入力データの傾向が変化してしまうことによって学習済みAIモデルの精度が下がってしまう」という問題を、大規模な再学習なく解決する技術「High Durability Learning(ハイ デュラビリティ ラーニング)」を発表した。入力データの正解付けを自動化することによって、AIの精度の推定とAIモデルの自動修復を可能にする技術である。

 富士通研究所が開発した「High Durability Learning」は、学習済みのAI判定モデルの精度を、自動で維持する技術である。AIモデルが現在の入力データに対してどれだけの精度があるのかを推定する技術と、AIモデルを調整することによって大規模な再学習なしに精度を維持する技術で構成する(図1)。

図1:「High Durability Learning」による入力データの自動正解付け(出典:富士通研究所)図1:「High Durability Learning」による入力データの自動正解付け(出典:富士通研究所)
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 開発の背景について同社は、社会情勢や市場・環境の変化などにより、AIの入力データの傾向が構築当初の学習データと比べて変わってしまうことを挙げる。「学習データの学習によって構築したAI判定モデルは、業務で使い続けるにしたがって、推定精度が低下する問題が発生する」(同社)。

 例えば、金融分野での企業の信用リスクをAIで評価する場合、企業の財務データを用いて学習したAIモデルを使っていると、経済構造の変化などによって入力データの傾向が学習時と比べ変化するため、信用リスクの推定精度が低下する場合があるという。

 「このため、業務でAIを活用する際には、AIの運用段階で随時精度を確認する必要がある。さらに、AIモデルの精度が低下した場合には、最新のデータを用いて再学習を行い、AIモデルの修復および予測精度の回復を図る必要がある」(同社)。

AIモデルの精度を推定し、AIモデルを自動で修復

 新技術の特徴は、運用時にAIモデルの精度を推定できることである。学習データの分布と運用時の入力データの分布を形状としてとらえ、学習時から運用時へのデータの変化の傾向を把握することにより、運用時の入力データに対する正解付けを自動で実施する。入力データに対する元のAIモデルの推定結果と、自動設定した正解を比較することで、その時点のAIモデルの精度を推定する。

 もう1つ、AIモデルを自動で修復し、判定精度の低下を抑制することも特徴である。入力データに付与した正解にもとづいて、AIモデルの分離境界を入力データの傾向に応じて調整する。これにより、AIモデルを新たな入力データに順応させることができる。この結果、大規模な再学習を実施することなく、AIの精度低下を抑えることができる。

 同社は、新技術の効果を検証済み。金融分野における信用リスクの評価を3800社の財務データを用いて検証したところ、新技術によってAIの精度を誤差3%に抑えて推定できたという。また、AIの精度が従来技術だと69%まで低下するところを、新技術によって89%で維持できることを確認したという。

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