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[イベントレポート]

“生みの親”アールスト博士が説く「すべての企業がプロセスマイニングに着手すべき理由」

「プロセスマイニング コンファレンス 2019」オープニングセッション

2019年11月21日(木)小山 健治(ITジャーナリスト)

日本ではRPAによる業務効率化が大ブームだが、欧米の先進企業ではすでにその先を見据え、業務プロセスの本質的な刷新を図る動きが進んでいる。その核心にあるのがプロセスマイニングだ。同分野に特化したメディア主催イベントとして国内初開催の「プロセスマイニング コンファレンス 2019」(2019年9月26日/主催:インプレス IT Leaders)のオープニングセッションに、プロセスマイニングの“生みの親”であるウィル・ファン・デル・アールスト(Wil van der Aalst)博士が登壇。プロセスマイニングの本質とあらゆる企業が着手すべき理由を語った。(撮影:鹿野 宏/Lab)

DX時代、日本企業は何を“形質転換”するべきか?

 企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していくうえで必要なものは何か。同分野に特化したメディア主催イベントとしては国内で初開催となるプロセスマイニング コンファレンス 2019の幕が開き、オープニングリマークスに立った、インプレスの田口潤編集主幹(写真1)は、「もちろんイノベーティブな取り組みも必要ですが、それよりも強く取り組んでいかなければならないのは、日々のビジネスプロセスの見直しです」と問題を提起した。

写真1:インプレス 編集主幹の田口潤氏

 裏を返せば、なぜ、ビジネスプロセス(業務プロセス)への取り組みが後手に回っているのだろうか。同氏によれば、実は日本企業に多い“強い現場”が阻害要因の1つとなっているという。IT部門に向かって「現場の仕事を知らない人に何がわかる?」「邪魔をせずに自分の仕事に専念してほしい」といった反発の声が挙がるという例の構図だ。

 日本企業がそうした足踏みを続ける一方、欧米ではすでにプロセスマイニング(Process Mining)の大波が起こっていた。ウィル・ファン・デル・アールスト博士を筆頭執筆者とするIEEEのタスクフォースのメンバーが共同で、2011年に『プロセスマイニング宣言』を発表。それを機に、ツールベンダーも相次いで登場しこの分野・市場を形成していった。

 そもそも、プロセスマイニングとはいかなるものなのか。概要は次のように説明されることが多い。

各種業務システム/アプリケーションから大量のログデータ(ファクト)を収集し、ID(対象)、アクティビティ(処理内容)、タイムスタンプ(時刻)を軸に、データマイニング技術を用いて分析し、隠れていたビジネスプロセスを発見する。さらに、そのビジネスプロセスに対して整合性チェックを行い、どこをどう改良すればよいのかエンハンスメントを行う──という一連の仕組み。

 「日本企業の間では『2025年の崖』に対する危機感が高まっていますが、何の武器も持たずにレガシーシステムをマイグレーションしようとしてもうまくいきません。まずは自社の実態をプロセスマイニグによって可視化し、どのシステムをマイグレーションし、どのシステムを廃止するのかを判断する必要があります。これにより、顧客満足の向上、無駄の排除によるコスト削減、従業員のモラル向上、コンプライアンスの徹底などを実現することができます」

 さらにその先の仮説として示されたのが、次の3つのビジネスプロセス変革の方向性だ。

カスタマーセントリックプロセス:自社の業務効率、仕事のしやすさ優先のプロセスから、顧客を中心においたプロセスに変革する。

Digital Twin of OrganizationDTO):プロセスマイニングにより、組織のデジタルツインを構成する。これにより、今どこで何が行われているのか、起きているのかをデジタルで再現し、シミュレートできるようになる。

Superfluid Enterprise超流動企業):ビジネスを取り巻く環境、社会、競争関係、顧客は目まぐるしく変化する中で、テクノロジーを変えることで常にプロセスを可視化し、必要に応じて変化させる。

業務プロセスをデータの視点から見るプロセスマイニング

 続いて、同コンファレンスのキーノートとして“プロセスマイニングの生みの親”であるドイツ アーヘン工科大学(RWTH Aachen University)教授のウィル・ファン・デル・アールスト博士(写真2)が登壇。「プロセスマイニングでイベントログをビジネスバリューに変える(Process Mining - Let's Turn Event Data into Value!)」と題する講演を行った。

写真2:ドイツ アーヘン工科大学 教授のウィル・ファン・デル・アールスト氏

 アールスト氏によれば、1990年代の終わりに「ビジネスプロセスを『データの視点』から見よう」と考え始めたのがプロセスマイニングの原点だという。その後、オランダ アイントホーフェン工科大学の同氏研究室が本拠となって本格的な研究がなされるようになる。

 「1999年までは、ビジネスプロセスは(手作業の)モデリングによって管理するものでした。それを変えたのが、ビジネスプロセスをデータマイニングで可視化・分析するプロセスマイニングです」(アールスト氏、図1

図1:1999年を境目にビジネスプロセス管理が変わる(出典:ウィル・ファン・デル・アールスト氏)
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 データマイニングによって現実のビジネスプロセスがあぶり出され、本当の意味でのBPM(ビジネスプロセス管理)が可能になっていくわけだ。氏の20余年に及ぶ研究成果は、著書『プロセスマイニング Data Science in Action』(インプレス刊、2019年9月)にまとめられている。

●Next:“プロセスマイニングの生みの親”アールスト博士が語る取り組みの要諦

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