[市場動向]

なぜ欧米の有力製造業はS&OPを導入するのか?─o9 Solutionsに見る全体最適と可視化の意味

2020年1月6日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

2020年、特に製造業において経営とITに関わるテーマには何があるだろうか? その1つが「S&OP(Sales & Operations Planning:販売・業務遂行計画)」であることは間違いないだろう。VUCA(不安定性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代に適応するための、この古くて新しい概念の意味を米o9 Solutionsのソリューションから紐解いてみる。

 「2025年の崖」を克服するレガシーモダナイゼーションや業務効率を高めるためのRPA活用、クラウドサービスやAIの活用、あるいはアジャイル開発スキルの習得や環境の整備……。今日、セキュリティの強化も含めて、ITに関するテーマは目白押しだ。これらは多くの企業に共通する事柄だが、個別の業種に目を転じると、また異なるテーマが見えてくる。

 例えば製造業。米中貿易摩擦やブレグジット(Brexit)、海外の人件費高騰などによるグローバルサプライチェーンに強い逆風が吹いている。国内では深刻さを増す人手不足、ベテラン社員(技術者や技能者)のリタイヤといった問題がある。それは自社だけにとどまらず、サプライチェーンを構成するすべての企業に当てはまる。RPAやIoT、AIの活用は必要であるにせよ、何かもっと大きな、本質的な変化を迫られていると言えるかもしれない。

SCMに経営視点が加わった「S&OP」に再び脚光

 では、そのためにどんなことが必要か? 答えは1つではないと思われるが、「全体最適」と「可視化」がキーになることは間違いないだろう。個別の処理ではなく、業務プロセスをエンドツーエンドで可視化・分析するプロセスマイニング(Process Mining)は、そのために有効なソリューションだ。ここでは詳細には触れないが、データに着目して複数のシステムが提供する機能の要・不要機能を洗い出すアプローチも登場しつつある。

 一方、本記事で紹介したいのが「S&OP(Sales & Operations Planning:販売・業務遂行計画)」という概念/ソリューションだ。決して目新しいものではなく、1988年にリチャード・リング(Richard C.Ling)氏とウォルター・ゴダード(Walter E.Goddard)氏が提唱したものだ(注1)。2000年代後半にはERPやSCM(Supply Chain Management)の上位概念として関心を集めたこともある。簡単に言えば、資材調達から生産、物流、販売までを対象にしたSCMを包含し、事業計画や収益管理など経営レベルの視点も網羅する点に特徴がある、全体最適の考え方である(関連記事S&OPを取り上げている記事一覧[特集] 利益を最大化するS&OP)。

注1:リング氏とゴダード氏の共著『Orchestrating Success: Improve Control of the Business with Sales & Operations Planning』(Wiley刊、1988年)

 図1は、アビームコンサルティングによるSCMとS&OPの比較イメージだ。少々分かりにくいのでもう少し説明すると、SCMは個別製品、地域において調達、生産、販売に関わる情報を統合し、例えば需要を予測して資材調達や生産量を最適化するものだ。過剰在庫や欠品を減らすために欠かせないが、どちらかと言えば現場サイドの取り組みであり、売上高や利益とは直結しない。極端な話、生産や販売計画を順守するために物流費や人件費を追加的に投入するとSCMの観点ではOKでも、利益面ではマイナスになってしまうのである。

図1:S&OPにより、SCMのゴールを「在庫最適化」から「利益最大化」に変える(出典:アビームコンサルティング)
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 あるいは売上計画を立案したタイミングと、実際に生産・販売するタイミングは通常、異なる。そのため競合や市場環境が変化しているのに、調達や生産、販売を計画どおりに実行しようとすれば何らかの歪みがどこかで生じる。事業環境がそれほど変化しなければいいが、今日のように変化が日常になると、生産や販売といった現場のオペレーションと事業計画(売上げや利益)を両立させ、グローバルに適正運営するのはかなり困難なのだ。

 そこで改めてS&OPに注目が集まっている。いったい何が可能になるのか、有力ベンダーであるo9 Solutions(オーナイン ソリューションズ)に話を聞いたので、これを、例に最新のS&OPを見てみよう(図2)。

図2:2019年5月版の「Magic Quadrant for Sales and Operations Planning Systems of Differentiation」が示すグローバルS&OPソリューション市場プレーヤー(出典:米Gartner)
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●Next:海外でS&OPが再注目される理由

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