[技術解説]

アプリで注文、新鮮な食材がその日に届く─生鮮ECの新しいかたち「クックパッドマート」

"Made by Ruby"の最前線─Ruby bizグランプリ2019より(1)

2020年3月5日(木)Ruby bizグランプリ実行委員会

日本発のオープンソースのプログラミング言語として知られる「Ruby」と、その開発フレームワーク「Ruby on Rails」。これらを使ったアプリケーションやサービスの開発が定着して久しいが、企業ITのフィールドで実際にどのように活用され、新たなシステムやサービスが創られているかを知る機会は少ない。本稿では「Ruby bizグランプリ2019」で大賞に選ばれた2つのサービスを2回に分けて紹介する。今回は、地産地消型生鮮ECサービスの新しいかたちを目指した「クックパッドマート」(開発:クックパッド)である。

2019年は31社33事例がエントリー

 日本発の「Ruby」は、生産性を高めるフレームワーク「Ruby on Rails」と共に、世界の多くの開発現場で使われているオープンソースのプログラミング言語だ。RubyおよびRuby on Railsの普及を促進するために2015年に始まったのが「Ruby bizグランプリ」というアワードだ。Rubyの開発者まつもとゆきひろ氏の活動拠点である島根県が中心になって組織したRuby bizグランプリ実行委員会が主催し、グランプリの審査委員長をまつもと氏自身が務めている。

 その名称のとおり、Rubyを使って開発されたビジネス用途のシステムやサービスを表彰する。2018年はフードロス対策の「TABETE」(開発:コークッキング)(関連記事ITでフードロスを減らせ─元料理長とWebディレクターが開発した「TABETE」)と、他のユーザーとシェアする学習管理SNS「Studyplus」(開発:スタディプラス)(関連記事記録とSNS仲間がモチベーションを高めてくれる学習管理サービス「Studyplus」)が大賞を受賞している。

 31社33事例がエントリーしたRuby bizグランプリ2019の結果発表が2019年12月に行われ、10のサービス/企業が受賞した。ここでは、大賞を受賞した2つのサービスを取り上げて紹介していく。今回は料理レシピサービスで知られるクックパッドが開発した生鮮ECサービス「クックパッドマート」である。


Ruby bizグランプリ2019大賞
クックパッドマート  https://cookpad-mart.com/
開発概要:生鮮食品ECプラットフォーム
開発企業:クックパッド株式会社
Rubyを採用した理由:既存の資産を活用して新規サービスを作りやすい環境
Ruby採用効果:既存の資産を活用することによる開発速度の向上

指定の場所に届ける生鮮食品のECサービス

 Ruby bizグランプリ2019で大賞を受賞したクックパッドマートは、2018年9月にリリースされたクックパッドの生鮮ECサービスである。指定の受け取り場所から半径2~30kmの範囲内にある販売店や生産者の生鮮食品が注文できる、地産地消型の生鮮ECサービス(図1)。対象は野菜や食肉、魚、乳製品など。現在サービスは東京23区および神奈川県川崎市、横浜市で利用できる。

図1:クックパッドマートの仕組み(出典:クックパッド)
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 利用者が朝8時までにスマートフォンアプリ(画面1)から生鮮食品を注文すると、販売者は注文内容に従って商品を準備し、決められた集荷用ステーションへ出荷する。クックパッドマートの配送ドライバーは集荷ステーションから商品を集荷して、対象エリア内のマートステーションと呼ばれる受け取り場所に納品する。

画面1:クックパッドマートのスマートフォンアプリ画面(出典:クックパッド)
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写真1:マートステーション(出典:クックパッド)
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 マートステーション(写真1)は、このサービス専用の生鮮宅配ボックス。冷蔵庫に商品を取り出すための認証を行うスマートロックが取り付けられている。駅やオフィス、マンションの共用部、ドラッグストア、店舗やビルの空きスペースなどに、初期費用、月額費用、運営負担なしで置くことができる。

 利用者は会社の近くや駅の近くなど指定したマートステーションに17時以降に訪れれば、スマートフォンのQRコードでスマートロックを開けて商品を受け取ることができる。

 これなら出社前に食材を注文しておいて、帰宅時に受け取ることができる。クックパッドのレシピを参考に、必要な食材をクックパッドマートで調達する、といった使い方も可能だ。

CRubyがハードウェア制御のプログラム開発を容易に

 利用者向け、配送者向けのアプリについて、クックパッド 買物事業部 部長の勝間亮氏(写真2)は、「それぞれ実際に使う人のペルソナを考慮し、スマートフォン専用とした」としている。

写真2:Ruby bizグランプリ2019で大賞を受賞したクックパッド買物事業部 部長 勝間亮氏

 販売者・生産者向けには、売りたい生鮮品の登録などに使うWebシステムと注文内容のラベルを印刷するためのラベルプリンターが提供される。専用のIoTソリューションをRubyで開発して販売者・生産者の業務効率化を支援している。

 シングルボードコンピューターであるRaspberry Pi(ラズベリーパイ)が、クックパッドマートのサーバーサイドシステムからLTE通信で送られてきた、注文内容に関する印刷リクエストを受信、ラベルプリンターに印刷指示を出す。販売者はその日に必要な出荷用のラベルがすでに印刷されているので出荷準備が楽になり、受注ミスも減らすことができる。ちなみに、プリンター用紙の残量もサーバー側で管理しており、残り少なくなると集荷トラックのドライバーが用紙を届けてくれるので、紙切れの心配をしなくてもよい。

 開発に使われたのはCRuby。CRubyとはC言語で実装されたRubyのことで、まつもと氏が関わっているRubyのメインプロジェクト。Rubyにはほかに、Java言語で実装されたJRubyがあるが、一般的に「Ruby」というとCRubyのことを指す。Raspberry PiにはOSとしてLinux(Raspbian)が搭載されており、CRubyを使うことで、プリンターなどハードウェア制御のプログラムをスクリプト言語で書くことができる。

●Next:「Rubyはサーバーサイドだけではない。CRubyの活用も知ってほしい」

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