アプリケーション アプリケーション記事一覧へ

[技術解説]

エンタープライズサーチの最新技術トレンド[後編]

2007年7月18日(水)IT Leaders編集部

エンタープライズサーチ製品は、すでにさまざまなものが世に提供されているが、大きく3つに分類できる。3つのサーチ製品の代表的製品と特徴を説明していこう。

エンタープライズサーチ製品の3分類

 エンタープライズサーチ製品は、すでにさまざまなものが世に提供されているが、大きく3つに分類できる。3つのサーチ製品の代表的製品と特徴を説明していこう。

テキスト処理系サーチ製品

テキスト系サーチ製品とは、独自の日本語処理機能に特徴のある製品である。代表的な製品としては、ジャストシステムのConceptBaseやアクセラテクノロジのAccela BizSearchがある。

ジャストシステムのConceptBaseは、日本の企業内で最も多く使用されている検索エンジンの1つであると考えられる。最大の特徴は、ジャストシステムがこれまでに培ってきた日本語処理技術をベースに自然文による検索が可能である点だ。自然文検索とベクトル検索モデルを組み合わせることで、日本語ユーザーにとって「自然」な検索手段が提供されている。また、キーワードサーチも可能となっており、幅広い検索ニーズに対応することができる。

アクセラテクノロジのAccela BizSearchは検索漏れに強いN-Gram方式によるインデックス作成を行うところが特徴である。また、独自の日本語処理技術を融合させ、高い検索精度を実現している。加えて、検索パフォーマンスが良いことでも知られている。ConceptBase Vと並び、日本企業で多く使用されている検索エンジンである。

大規模統合系サーチ製品

大規模統合系サーチ製品とは、企業内のグループウェア・業務システムなどとの統合や大規模運用に特徴のある製品である。代表的な製品としては、米GoogleのGoogle検索アプライアンスやノルウェーのFast search&TransferのFAST ESPがある。

米GoogleのGoogle検索アプライアンス(図3)は他の製品とは提供形態が異なる。Google社がエンタープライズサーチに特化したハードウェアとセットで提供するアプライアンス方式をとっている。アプライアンス方式の良いところは、導入が容易である点や、検索対象規模が増大した際にもスケーラブルに対応できる点が挙げられる。

Google検索アプライアンスはGoogleがインターネット検索で蓄積した技術をつぎ込んだ製品であり、高速な検索パフォーマンスやインターネットと同様のユーザーに馴染み深いユーザーインターフェイス、高い検索精度といった特徴を持っている。また、Google検索アプライアンスではOneBoxと呼ばれる業務パッケージとの連携機能も提供される。すでにSAP、Oracle、コグノス、salesforce.comなど多数の業務パッケージ製品との連携が実現されている。

OneBoxを利用することで、ユーザーは使い慣れたGoogleの検索画面から、各種業務パッケージのデータを検索することが可能となる。インターネットサーチの王者がエンタープライズにも参入してきたということで、現在最も注目を集めている製品のひとつでもある。


Fast search&TransferのFAST ESPは高いスケーラビリティとさまざまなデータソースへの容易な接続など、豊富な機能を持つエンジンである。FAST ESPは企業内に存在する業務システムやRDBMS、CMS、RSS Feedなどとも連携し、高速な検索を行うことが可能である。検索エンジンとしては日本勢(ジャスト、アクセラテクノロジなど)、米国勢(Googleなど)に対する第三の勢力として注目を集めている。

メタデータ系サーチ製品

メタデータ系サーチ製品とは、独自のメタデータ処理機能に特徴のある製品である。代表的な製品としては、米VivisimoのVivisimo Veloricy5やリアルコムのHAKONE for Notesがある。

米VivisimoのVivisimo Velocity5は2006年から日本市場に参入した製品である。最大の特徴は、検索結果に対して動的にクラスタリング処理を行い、自動的に分類軸を作成する点である。作成された分類軸はツリー構造で表示が可能であり、自分の関心がありそうな分類軸を選ぶことで検索結果の中から欲しい情報を絞り込むことが可能である。日本市場に参入してまだ日が浅い製品ではあるが、さまざまな用途で企業への導入が進んでいる。

リアルコムのHAKONE for Notes(図4)はメタデータによるコンテンツ絞り込みに強みを持つ製品である。純粋な意味でのエンタープライズサーチとはやや異なるが、マトリックス状に整理したメタデータでコンテンツを絞り込んでいったり、作成者・作成部門あるいはコンテンツ閲覧数、ユーザーからの評価などといったさまざまな軸でコンテンツを絞り込んでいくことが可能である。

エンタープライズサーチ導入のポイント

 

それでは最後に、エンタープライズサーチ製品の導入に向けたポイントと、具体的な導入事例を紹介したい。

ポイント①検索の必要性

決して安価とは言えないエンタープライズサーチを企業に導入することによる効果とは何だろう? 企業が利益を生み出すためのマシーンである限り、企業経営になんらかのプラスになる価値がなければどんなに面白くても意味はない。エンタープライズサーチの活用は、あくまで経営課題解決のための手段である。具体的な経営課題をゴールとし、それを如何にしてエンタープライズサーチで解決できるのかを考える必要がある。

たとえば、企業内では情報洪水が発生しており過去のプロジェクト資産を探し出すことが困難であるため、ダブルワークなどの非効率が蔓延しているとする。この「ダブルワークを減らす」というゴールを実現するための手段として「エンタープライズサーチで、過去のプロジェクト資産を再活用する」ということになる。このような因果関係を明確にすることが重要である。

この因果関係を考える際に有効なフレームワークである「GISツリー(目的ー課題ー解決策=Goal-Issue-Solution)」を紹介する(図5)。たとえば、ある企業がエンタープライズサーチを導入して実現できることとして「過去のプロジェクトにおけるナレッジを再活用する」や「日々の情報検索に要する時間を短縮し業務を効率化する」といったことがある。これは「目的」ではなく「解決策(Solution)」である。

これらの結果として、「過去と同じ失敗を繰り返している」や「本来やるべき業務に専念する時間を取れない」といった「課題(Issue)」を解決することができる。そして、最終的には「新規プロジェクトの成功」といった「ビジネス目標(Goal)」が達成されることになる。この「1)解決策(Solution)」→「2)課題(Issue)」→「3)ビジネス目標(Goal)」という3段階の因果関係を常に明確にすることは、エンタープライズサーチ導入を成功させるために欠かせないものである。


●Next:検索精度の向上、アクセス権制御とパフォーマンス

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
関連キーワード

エンタープライズ検索 / ナレッジマネジメント / ジャストシステム / アクセラテクノロジ / リアルコム / Google / 文書管理 / Fast Search&Transfer

関連記事

トピックス

[Sponsored]

エンタープライズサーチの最新技術トレンド[後編]エンタープライズサーチ製品は、すでにさまざまなものが世に提供されているが、大きく3つに分類できる。3つのサーチ製品の代表的製品と特徴を説明していこう。

PAGE TOP