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[エンタープライズ・システムのためのWeb 2.0]

エンタープライズ 2.0の先進企業のシステム事例─カシオの場合

2007年10月23日(火)IT Leaders編集部

Web 2.0の技術を企業内の情報システムに利用する「エンタープライズ 2.0」は、その考え方が出始めてからまだそれほど時間が経っておらず、十分に浸透しているとは言えない。また、導入している企業においても、実証実験的なものと位置付けているところも少なくない。そんななか、今回取り上げるカシオ計算機株式会社では、「エンタープライズ 2.0」というキーワードが登場する以前から「エンタープライズ 2.0的」なシステムの構築に向けて取り組んできた実績を持つ、数少ない企業のひとつである。今回は3回にわたって紹介してきたケーススタディのまとめとして、同社が導入しているシステムの事例から「エンタープライズ 2.0」の先進企業の取り組みを紹介する。

ウェブ2.0系ツールの導入と利用方法

はじめに、カシオ計算機株式会社(以下、カシオ)が現在導入しているウェブ2.0系ツール――ポータル、ブログ、Wiki、SNSの利用法について紹介する。各ツールの技術やユーザーインターフェイス(UI)の特性を活かしながらも、インターネットとは異なる企業内ニーズに合わせて利用しているところが特徴的である。

ツール1:RSSフィードを活用したブログ

同社では、2002年より「C's Cafe」という社内ポータルサイトを立ち上げている。このポータルを導入する前は、イントラネット上に400台を超える部門用ウェブサーバーがあり、これらをポータルツールのポートレット機能を利用したり、プログラムを自作するなどしてコンテンツの集約・表示を行っていた。しかし、サイト構成を少しでも変えてしまうとコンテンツ連携できなくなるなど、情報更新の効率が非常に悪いものとなっていた。

そのため、「コンテンツの更新を早く、楽に」という観点で、同社は2004年からブログの利用を始めた。各部門サイトをブログベースに作り変え、更新情報をRSSで配信し、それをポータルサイトに取り込む仕組みを作ることで、サイト更新の際の大幅な効率アップを図った。当時のインターネットでは、ブログは日記ツールとしての認識が一般的だったが、RSSフィードの仕組みに着目することで、企業内での有効な利用方法を見出した。

現在では、約半数にあたる130の部門サイトがブログに置き換えられ、社内の情報共有の促進や伝達のスピードアップを実現している。

ツール2:Plaggerによるデータ連携

ポータルサイト「C's Cafe」の導入により、各部門のウェブサイトの統合は進んだものの、社内にはほかにもNotesやOracleアプリケーション、サイボウズなどさまざまなシステムがあり、ユーザーはこれらのシステムを利用するために複数の画面を開いて業務を行う必要があった。

そこで、同社ではオープンソースのフィードアグリゲータ「Plagger」や、アプレッソ社の「DataSpider」、そのほか自作のプラグインなどを活用して、形式の異なるさまざまなデータを変換し、これらすべての情報の入り口を「C's Cafe」に統合し、そこから閲覧・利用できるようにした。

このシステムは今年度に構築したばかりで、現在は社内の一部で試行運用中だが、「基幹系、情報系を問わず、バックエンドのシステムはすべて“コンポーネント”と位置付け、インターフェイスはすべてポータルサイトに統合していく」という方向性に基づき、改善を重ねている。

なお、このポータルはAjaxエンジンとしてビーコンIT社の「infoScoop」を利用しており、同じくAjaxを用いたGoogleのポータルサイトサービス「iGoogle」と同等の操作感を実現している。

図1:ポータルサイトへのデータ統合イメージ

ツール3:Wiki

同社では、ポータルサイトのコンテンツのひとつとして、「Wikipedia」ならぬ「CsPedia」というWikiを使った社内用語集を置いている。Wikipediaで利用されているオープンソースのWikiシステム「MediaWiki」で環境を用意したところ、ユーザー社員の自主的な投稿により、すでに350ほどの用語が蓄積されている。

登録されている用語には自社製品の説明もあり、外部向けの商品説明とは異なる、社内ならではの詳細情報や売り手の視点での情報が掲載されている。特に、新入社員や異動者が効率的に知識を習得したり、全社で共通的なブランド意識を高めるのに効果を上げている。

ツール4:SNS

さらに、同社ではオープンソースのSNS作成ツール「OpenPNE」を利用して社内向けSNSを開発し、2006年8月から営業と研究開発部門を中心に300名ほどのユーザーで運用している。

この社内SNSでは、個人の日記機能よりもコミュニティ機能がよく利用されており、本社や部門ごとに拠点が分散している営業担当の間での情報共有や、商品の研究開発テーマでの情報共有やアイデア交換などでのニーズが多い。例としては、「社内ソーシャルブックマーク活用研究会」や、「CRM研究会」、「Second Life研究会」などがある。

それまでは社内に数百個のメーリングリストがあったが、これらが徐々に社内SNSのコミュニティに置き換えられてきている。というのも、メーリングリストでは、どこで、誰が、どのような検討をしているのかを外から把握できなかったが、コミュニティではやり取りの履歴が蓄積・公開されるので、過去にボツになった内容を見て同じ失敗を繰り返さないようにしたり、社内で同じような検討を重複して行うこともなくなるといった効果がある。

なお、コミュニティ内で行われている議論は、個々に公開/非公開が選択できるようになっている。従来のナレッジマネジメントツールにおける掲示板機能は、一律に「公開」としかできないものが多く、オープンな環境でのディスカッションは形骸化しがちだった。その点、SNSでは公開/非公開の切り替えやメンバーの招待などが細かく設定できるため、本音のディスカッションや重要情報の共有がやりやすくなった。

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