[エンタープライズ・システムのためのWeb 2.0]

「2.0というより√2.0」─エンタープライズ2.0の取材を通じて感じたこと

2007年12月14日(金)田口 潤(IT Leaders編集部)

本稿では、国内ベンダーのエンタープライズ2.0に対する取り組みについて取材を通して感じたことについて述べる

2.0というより√2.0

 筆者は、国内ベンダーのエンタープライズ2.0に対する取り組みについて、2007年の5月ごろから半年にわたって取材してきた。対象としたのは、ソフトウェアメーカーやシステムインテグレーター、そしてシステム関連の製品も扱っているハードウェアメーカーなど、さまざまである。話を聞いたのも役員から現場の開発者までとさまざまで、ベンダーとしての公式なコメントということもあれば、非公式な個人としての感想ということもあり、幅広く意見を聞くことができた。

 こうした取材を通してまず感じているのは、「エンタープライズ2.0」という言葉に対する認知度の変化である。取材を始めた2007年5月ごろは、エンタープライズ2.0という言葉すら知らない企業がほとんどで、この傾向は特に市場で多くのシェアを占める製品を持っている企業ほど顕著だった。

 しかし、8月以降の3カ月くらいで、エンタープライズ2.0という言葉は急速に浸透し始めているように感じている。具体的に製品などに利用される例はまだ多くないが、ベンダーの反応が以前よりも敏感になってきているのは確かで、ウェブ2.0で起こったような変化が企業の情報システムでも起きるのではないかと感じている人の割合は増えているように思う。

 特に、ソフトウェアベンダー、中でも企業の情報システムと関係が深いグループウェア製品を持つ企業の変化は著しい。また、これらの動きと並行して、エンタープライズ2.0をキーワードとした各メディアの記事やセミナーも増えている。

 しかし、こうした変化を肌で感じつつも、現状は「国内のエンタープライズ2.0はまだ2.0と呼べるほど浸透しておらず、せいぜい√2.0(1.414)程度なのではないか」というのが筆者の正直な感想である。

 これは、「2.0」という言葉からイメージされるような「これから新しいことが生まれようとしている」というような変化がまだ感じられないからである。もちろん、数多くあるエンタープライズ2.0のテクノロジーの中には企業への導入が進んでいるものもある。

 たとえば、企業におけるブログの利用は一般的なものになりつつある。しかし、紙に書いていた報告書がメールに変わり、やがてウェブやブログに変わることが、企業の情報システムの新しい姿とすることには疑問を感じる。こうした変化は単に手段が変わっただけにすぎず、新しいテクノロジーを適用することでそれまでできなかったことができるようにならないと、本当の意味で「2.0」と呼べないのではないかと考えている。

●Next:国内でエンタープライズ2.0を普及させるための突破口は?

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