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[技術解説]

Web APIやマッシュアップなど、Web 2.0技術へのIBMの取り組み

2008年1月31日(木)IT Leaders編集部

ここ数年、インターネットにおけるWeb 2.0的な技術の台頭により、新しいサービスが登場している。IBMでも、Web 2.0にかかわる技術を利用して、コミュニケーション、コラボレーションの分野において、企業内のビジネスエキスパートたちが利用可能なツールを提供しているが、ここでは、現在のITシステムの抱える課題と、その解決策としてマッシュアップを使った、ユーザー自身による課題の解決手段について紹介する。

ITシステムの課題

現在のITシステム課題が何かといえば、それは企業が自らのビジネスのために保持している膨大なデータ、そしてそのデータを活用して実際のビジネスを回すビジネスユーザー、この両者をどのように活性化していくかということだ。

●企業が自らのビジネスのために保持している膨大なデータ
●そのデータを活用して実際のビジネスをまわすビジネス・ユーザー

これらをいかに活用するかがITシステムの課題

ドメイン・エキスパートの力の活用

・Collaboration … blog, wiki, social bookmark, messaging…
・Technology … service, mash-up, ajax, browser tool…

従来のソリューションでは、ITシステム部門がシステムとユーザーの間に入って、データをユーザーに利用させるという形をとってきているが、使えるデータと使うユーザーの間にIT部門が入るため、多かれ少なかれ提供されるサービスとユーザーのニーズには、必要要件や時間、タ イミングといった点でギャップが生まれてしまい、時間や生産性といった観点でもロスが発生する。従来のITシステム部門が主体となるソリューションを補填する形で、そのギャップを埋めることがユーザーの生産性を高めるうえで大事なのではないだろうか。つまり、実際にデータを使う人が使いやすい環境を用意すること、言い換えればユーザー自身がデータ を活用できるシステムを作ることが重要ではないかということだ。

Situationalアプリケーション

次の図が示しているのは、これまでのアプリケーションのあり方とDIYによるアプリケーションのあり方の違いを示している。


図 Situationalアプリケーション開発

アプリケーションあたりの利用者の数が非常に多く、利用頻度の高いものは、長い時間をかけてアプリケーション開発者が作り上げるシステムだ。それに対して、利用頻度は多くないが、さまざまな要件が求められるようなケースも日常では数多く存在しており、そうした課題には、IT部門が即座に対応できない。ビジネスエキスパートが日々解決する課題を解くためのITツールが「アドホック」なITツール、「Situationalアプリケーション」だ。

IBMでは、3年くらい前から社内で「Situationalアプリケーション」という言葉をよく用いている。この「Situational」は 「ad hoc」とも言い換えることができ、臨機(ad hoc)にアプリケーションを開発を行うという概念である。また、「Situational」は「D.I.Y」(Do It Yourself:セルフサービス)とも言い換えることができ、こちらもセルフサービスでアプリケーションを開発していく概念とも表現できる。

たとえば、今日、明日中に処理しなければならない課題があり、今必要な要件のみが満たせればよい、同じ要件を持つ仲間で共有したい、状況に応じてどんどん改変していきたい、といったニーズが存在する。こうしたニーズに対応するには、Excelでマクロを組むような簡単な操作で、かつ管理という観点からもガバナンスに従った、より高度な要件にも対応できるようなシステムが必要になってくるだろう。もちろん、これまでのアプリケーションのあり方を否定するものではなく、あくまでも追加・補填するソリューションとして支援されることが求められる。

Situationalアプリケーションの要件

こういうシステムを作り上げるには、どういうことが必要になってくるだろうか。まず、開発者的な観点から考えてみよう。

利用する人間が自分の必要なものを作っていくという環境を構築するには、いままでのように、IT部門のスタッフが開発しているだけでは間に合わな い。そのため、階層的な開発レベルが要求される。利用者自身が開発できればベストだが、そうしたところまでにすぐには到達できないので、その手前にある程度ITに詳しい人であれば作れるような環境というのが考えられる。そういう人の数は、開発者の数と比較すれば圧倒的な数にのぼる。


図 アプリケーションに対する役割の変化

図に示した一番左側は、プロフェッショナルな開発者である。インフラを開発するIT部門の開発者はこれまでどおり存在して、その右側にマッシュアッ プのためのコンテンツとしてWidgetsやGadgetsを作成するような開発者がおり、部門レベルでは、パーツを組み上げる、つまりマッシュアップによってビジネスを加速する人達、ここではアセンブラーと呼んでいる人達が存在することを想定している。数としては、アセンブラーレベルの人が比率としては非常に大きく、この人達がアプリケーションを作れるような環境ができれば、最初に述べたような アドホックな課題への対応が可能になるだろう。プログラマーには、インフラレベルの開発を担ってもらい、アセンブラーの人達にアプリケーションを作ってもらうという役割分担が行われる。

こうしたビジネスエキスパートがマッシュアップ・テクノロジーを活用したWeb 2.0アプリケーションを利用して、インターネット上でGoogleやYahooが公開しているWeb APIを利用してデータを取得し、企業内の公開された情報と組み合わせて、さまざまな事例に対処することができるようになるだろう。


図 マッシュアップの企業内での活用

次の図は、マッシュアップの開発環境をビジネスエキスパートが利用する仮想的な損保会社の例を挙げてたものだが、社内のデータだけでなく、社外のデータもうまく利用していきながら、臨機応変な対応を行うことができることを示している。


図 企業内での活用:例えば損保会社では

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Web 2.0 / API / マッシュアップ / IBM / エンタープライズ2.0 / REST

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