[技術解説]

BI解体新書─データ統合から可視化まで一気通貫、情報資産をとことん活用する基盤に

BI(ビジネスインテリジェンス)最前線 Part1

2009年1月29日(木)IT Leaders編集部

BIは既に旬を過ぎたバズワードであると評する声もあるが、その本質である「情報活用」は企業の積年の課題である。ほしいデータを即座に、かつビジュアルに手に入れるツール群が充実してきた今、そのトレンドを知ると共に、2009年に情報システム部門が何をすべきかを考える必要がある。

BIが再び重要テーマになりつつある。背景には2つの動きがある。

1つは企業側の事情による。景気後退によってIT投資も制限される中、使途により厳しい目が向けられる。このフェーズでは「既にあるもの」を有効活用しようという機運が高まる。システムの棚卸しなどに話が及んだとき、「様々なデータを蓄積しているのに十分に活かせていない」との議論が巻き起こるのが常だ。IT投資のマインドが内向きに振れる中、本当の「情報資産」としてデータを分析し、使い倒すための基盤が求められている。そうでなくても不確実で変化の速い現在においては“データに基づく経営、事業展開”は必然なのである。

2つめはITベンダー側の盛り上がりである。2007年、オラクルやSAP、IBMが立て続けに大手BIツールベンダーを買収。各社とも自社の技術や既存製品との統合を進め、ここへ来てやっとラインナップやマーケティング戦略が明確になってきた。それを受けて、顧客企業に対し、積極的に営業攻勢をかけ始めたのである。

いずれにせよ、経営の「見える化」や「意思決定のスピードアップ」は企業に共通の課題であることは事実。BIは昔からある概念だが、製品の機能は確実に強化されている。この古くて新しいBIが今、再び活況を迎えようとしている。

加速するスイート化の波

あらためてBIとは何かを整理しておこう。BIとは、業務システムなどで蓄積するデータを分析・加工して、経営上の意思決定に役立てる手法を指す。こう書くと何やら仰々しいが、要は「情報活用」である。古くはメインフレーム全盛期に「DSS(意思決定支援システム)」と言われていた仕組みや、その後のOLAP(オンライン分析処理)やデータマイニングといった概念もBIの範疇に含まれる。

データを様々な視点で眺めることで気づきを得て、業務に役立てる。この仮説検証を支えるのがBIツールであり、経営のPDCAサイクルを加速させる基盤となる。

詳しくはPart3に譲るが、BIツールは時代と共に着実に進化を遂げてきた。最近のトレンドは「スイート化」である。業務系の複数のシステムに散在するデータを抽出・変換・ロードするデータ統合ツールや、高度な手法で近い未来を予測・シミュレーションするツール、個人ごとのポータル画面を用意し経営指標をグラフなどで可視化するダッシュボードなど、経営分析や意思決定に役立つ機能をひとまとめにした統合製品が登場し始めている(図1-1)。かつては分析やレポーティングを担うフロントエンドのソフトをBIツールと呼んでいたが、今はその枠を広げ情報活用基盤全体をBIツール群と呼ぶ傾向が強まっている。

図1-1
図1-1 BIの一般的な構成要素。最近はBI基盤全体をカバーする動きが活発化している

道具がますます充実する中、いかにそれらを使いこなすかの知恵が企業の競争力を左右する。情報と行動の間にある「溝」をどう埋めるか。2009年が幕を開けた今、企業はそのためのシナリオを描くことに思いを巡らせなければならない。

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