[株価から見るIT企業の強みと弱み]

通信キャリア以外を開拓できるか、2011年3月期以降が正念場[ネットワンシステムズ 証券コード7518]

2009年2月13日(金)長橋 賢吾(フューチャーブリッジパートナーズ 代表取締役)

2008年9月のリーマンショック以降、IT企業さらには上場企業全般の株価は総じて軟調だが、例外も少数ながら存在する。その1社が今回紹介するネットワンシステムズ(以下、ネットワン)だ。同社は昨年度まで何度も会社業績予想を下方修正を発表する“下方修正の常連”だった。今期に入ってから、第1四半期、第2四半期と2度連続上方修正を発表するなど、着実に収益構造を改善させており、2008年に入って株価は堅調に推移している。

主力は通信キャリア向け

最初にネットワンのビジネスモデルを見てみよう。同社はネットワーク機器販売、特に米シスコシステムズ社の機器販売およびサポートを主な業務としている。ただしシスコ社は、伊藤忠テクノソリューションズや富士通、日商エレクトロニクスなどネットワン以外とも販売代理店契約を交わしており、シスコ社製品を複数の代理店から購入できる。その中でネットワンの優位点は20年前の創業以来、一貫してシスコ社製品を取り扱っているところからくるノウハウと顧客接点、販売チャネルにある。

図1に同社の業績推移を示した。04年3月期〜05年3月期の営業利益約100億円をピークに、業績が落ち込んでいる点に注目してほしい。この背景には、ネットワンの通信キャリア向け売上高の高さとブロードバンド世帯普及率がある(図2)。2000年以降、日本でブロードバンドが本格的に普及し始めた。2001年の世帯普及率34%から、2002年には同60.5%、2003年には同81.4%という具合である。

図1 ネットワンセグメント別売上高内訳(左軸)および営業利益(右軸、単位:百万円)。2009年3月期以降は予想
図2 ブロードバンド世帯普及率(左軸:%)と通信キャリア向け売上推移(右軸:百万円)

NGNの需要が今期、来期を支える

しかし2005年以降、世帯普及率は頭打ちになる。ポジティブな流れは一変し、通信キャリアの投資も一気に冷え込む。06年3月期〜08年3月期は3期連続減益で、通信キャリア頼みのビジネスモデルが裏目に出た格好となった。回復の変化の兆しが表れてきたのが今期(09年3月期)である。きっかけはNTTグループによるNGN投資だ。

NTTグループは、これまでのBフレッツをNGN対応(回線の品質の向上など)させたフレッツ光ネクストに移行させる投資を、今期から実施(総額は1500億円程度と推定)。その中にはシスコ社のルータ・スイッチの更新も含まれており、ネットワンもその恩恵に受ける立場にある。

とはいえNGNはあくまでも特需だ。NTTグループでは今期、来期とNGNのための投資を継続するが、それ以降は設備投資を抑える方針。ネットワンにすれば今期、来期はNGNによる特需を享受できたとしても、特需が終わる11年3月期以降は正念場になる。

仮に今後、04年3月期並みの営業利益100億円の水準まで回復するならば、一株当たり利益(EPS)は今期会社予想の7421円を56%上回る1万1600円程度まで上昇する計算となり、今が積極的な買いのチャンスとなろう。一方、NGN特需が終わり、再び06年3月期のように業績が悪化するのであれば、EPSはボトムである08年3月期の4797円、今期のEPSを35%下回る水準まで低下する計算となり、割高とも言える。

販管費はITセクターの中で高め

ではどちらになるのか。それを考える上で、重要視される指標は2点。(1)売上高販管費率、(2)一般事業法人分野の売上高推移、である。(1)の売上高販管費率については、図3に示すように、ここ数年、上昇の一途を辿っている。その背景には、米シスコ社が多機能IP電話であるUC (Unified Communications)やデータセンターソリューションなど、ルータ・スイッチに加えて、より付加価値の高い製品の提供に軸を移していることがある。これに対応するため、ネットワンは人材採用や組織整備などの販管費を増やしているのである。

図3 営業利益率、売上高販管費比率の推移(単位:%)

しかしITサービスセクターの売上高販管費率は15%。同社のそれは18%と高い水準にある。結果的に営業利益率は5%と、ITサービスセクターの7%を下回る。この数字を見る限り、選択と集中によるコストの削減が急務と考える。今期より社長交代もあり、コストに関しては必要なもの以外を極力削減する方針であり、同社は徐々に営業利益率が改善すると予想している(2011年3月期予想営業利益率6.4%)。

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