[BPM ビジネスプロセス革新実践ガイド]

環境変化に対応するためのBPMの必要性(第1章)

2009年7月17日(金)ビジネスプラットフォーム革新協議会(BPIA)

半年前まで元気の良かったわが国の大多数の企業は、米国のサブプライム問題に端を発した世界同時の大不況によって、いまや業種を問わず大きな変革を迫られています。今後長引くと予想される、ものが売れない・消費されないという環境の中で、我国の企業は生き残りのために、規模の大小を問わず、ものづくりの方法、サービスのしくみまで、原点に立ち返っての見直しを求められているのです。

ここ数年のブームを築いた内部統制やリスク管理の課題は、本来当たり前に遵守すべきコンプライアンスの問題を、グローバルな基準や行政の規制を指針として、企業の中に自分でコントロールできる仕組みを求めるものであったといえます。もっと端的に云えば、悪いことを簡単にできないようにする仕掛けを身につけなさい、ということで企業の側から見たら、防御の仕組みの色彩が強いものといえます。

ここからが本題です。

皆さんの会社がどのような業種であれ、これからは相当覚悟を決めた筋肉強化と俊敏性が必要です。ここで云う筋肉強化とは、徹底的に体脂肪を落とし、貴方の会社を筋肉質の身体に変える事業革新のやり方のことで、無駄なコストや組織は可能な限り排除することです。仕事をシンプルにして作業を体系化し重複や欠落をなくすことで体力をつけます。俊敏性とは、経営陣や経営企画部門が全社の状況をリアルタイムに把握し、刻々と変わる市場のニーズに合わせて組織体制から仕入れ・在庫・販売方法まで、経営戦略・事業戦略にあわせてダイナミックかつ俊敏に行うことができるかどうかということです。

私たちはこの提言の中で、筋肉体質と変化対応力に最も大切なものは、BPM(Business Process Management)すなわちビジネスプロセスの管理であると申し上げます。ビジネスプロセスの管理とは<業務を遂行する一連の作業を、会社として見える化・標準化・体系化して、組織として全社で共有し継続的に改善できるようにすること>であると考えます。

幸い私たち日本の企業はここ数年の内部統制とリスク管理を推進する中で、組織や仕事の中身を「見える化」する作業には多少慣れてきました。さらにもう一歩進めて、「見える化」を前提にBPMというものを強力な武器に変えていく方法を一緒に考えていきたいと思います。

詳しくは順を追って説明しますが、この章では、今この時期に経営陣や経営企画部門の方たちにBPMという観点で何を意識していただきたいかというポイントに絞って説明いたします。

これからの企業は各々の部門のビジネスプロセスつまり業務を遂行する一連の作業を、だれがその業務を行っても間違いなくできるよう標準化し、文章や図で補足して可視化しておく事が必要となります。紙の上であれ、システム化されているにせよ、ビジネスプロセスが文書化されて運用段階に来ている企業は内部統制の嵐のおかげで増えてきていると思われます。しかし各部門が個別にどんなに一生懸命に部門の役割を最高に果たしたとしても、連携の悪さなどで売れるものが作れなかったり、過剰在庫を抱えたり、結果としての当期利益があがらないということはよく起こります。

では何故そのようなことがわが国の企業では起こるのでしょうか。

読者の皆さんのところでは何故そうなるか会社の中で原因は究明できていますか?

ホワイトカラーの生産性が低い問題や給与の高いベテラン社員が決裁や会議に明け暮れているといった日本独特の光景は何故頻繁に見受けられるのでしょうか。

ひところBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)という言葉で業務の改革を図る活動が盛んになった時期がありました。しかしわが国では担当者とビジネスプロセスとスキルとコストとスピードやサービスレベルが各々相関関係を持って「ミッション」として規定され評価されるという“仕事のやり方を分析する”ところまで踏み込んだ作業をしてきませんでした。そんなとき海外のコンサルタントと議論していて、リエンジニアリングの前段階の仕事のエンジニアリングをやらずして上辺の機能だけ追い求めても業務の改善ができるわけはないと指摘されたことを覚えています。

今この難しい社会経済環境の局面において、原点に立ち返って会社にとって本当に必要な仕事のビジネスプロセスが正しく効率的に行われているのかということを改めて見直すべきです。各部門が自分の役割には忠実に行動していても、会社全体から見たらベクトルがばらばらで無駄なプロセスが多いこともよくあります。それはお互いに他の部門の業務の内容を共有できていないとか、目的を理解していないから起こることが多いのです。またはしくみを創る上で標準化が不完全なためや、文書化と現実の運用に様々な乖離があるからです。

今流行の言葉で言えば、部分最適はできていても全体最適ができていないからにほかなりません。そして全体最適ができない最大の理由は、しくみは創ったが継続的に運用していくための、評価・モニタリングの機能が欠如しているからです。モニタリングをしていくことによって、改革できる作業や重複・欠落している作業を、分析・察知して修正していく行動をとっていく、PDCAのC(検証)A(修正行動)が実現できることになります。

実際の企業の中では、盛んに営業活動を展開しているのに販売管理費だけかさんで売れ行きが芳しくないとか、売れるといったから作ったのになぜか在庫の山が増えていくとか、作ったものはほぼ計画通りに売れているのに結果としての利益は上がらないといった悩ましい状況がよく起こります。これはこういったビジネスプロセスの管理(マネジメント)と評価・モニタリングが適正にバランスよく行われていないために起こるのです。

読者の皆さん、特に経営者の方や経営企画部門の方たちにこのポイントを押さえていただいた上で、今、何故BPMが必要か、これから押し寄せる厳しい経営環境の中でこそBPMは経営の必須事項であり、積極的な攻めの武器であることを知っていただきたいのです。何も難しいことを言うつもりはありません。全社員が部門ごとの仕事のやり方や目的を正しく理解して、環境や事業戦略に合わせて臨機応変に仕事のやり方を変えていく、そんなしくみを創りましょうということです。

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