2009年9月14~15日、Web技術を巧みに活用して新ビジネスを創り出そうとする起業家の祭典「TechCrunch50」が米サンフランシスコで開催された。次々と斬新なアイデアがプレゼンされる会場には熱気が溢れ、メディアやブロガーはすぐさまニュースを配信していた。現地に赴いた筆者が、注目すべきトピックをレポートする。
セッション7:ニュース、メディア
- Thoora
- 新聞やテレビが伝えたニュースに対して、ソーシャルメディアがどんな反応を示したかを計測。1000万件のブログから集めた反応をもとに、重要なニュースだけを伝えるサービス。
- Insttant
- Twitterで公開されている「つぶやき」をもとにして、今、世界で何が起きているかを整理し、ヘッドラインとビジュアルでニュースを提供する。共にティーネイジャーである、ランジェヴィン兄妹が設立。
- Perpetually
- 新しく生まれる情報があれば、消えていく情報もある。Webブラウザでブックマークされたページの5~8%が、1年の間に消えている。Webサイトの運営会社から費用を徴収し、過去のWebサイトのコンテンツを自動的に蓄積、ユーザーは時間軸で整理された状態で、必要なコンテンツを永遠にいつでも閲覧することができる。
- AnyClip
- ブログなどで、映画のワンシーンのセリフを引用したいことは、誰しも少なからず経験があるだろう。公開APIを使って、合法的に映画の1コマをブログに貼り付けることができる。
- CrowdFusion
- TechCrunch50の共同主催者ジェイソン・カラカニス氏が、以前、共にWeblogs社を設立したパートナー、ブライアン・アルヴェイ氏が率いるCMS開発会社。ブログ、ウィキ(Wiki)、フィードバーナー(RSS)、分野別検索、ワークフローなど、Webサイト制作に必要なツールが集約されていて、制作スタッフの業務効率化が図れる。
- Hark
- あらかじめ、Webブラウザにプラグインをダウンロードしておくことで、同じページを見ているユーザ同士が同じ体験を共有する(いわゆる、「バズる」行為)ことができる。
新聞でもテレビでも、ニュースの見出しを決めるのは、デスクと呼ばれる人たちであることが多い。ソーシャルメディアが、ニュースの重要性を決定づける根拠は「集合知」であり、必ずしもマスメディアには影響されない形でニュースが形成されてゆく。ソーシャルメディアは内容が玉石混交で、重要性や信憑性が整理されていないことが、マスメディアに劣るデメリットだったが、インターネットに四六時中接している人でなくても、ソーシャルメディアで世の中の動きを把握できる時代がやってきた。
動画サービス「YouTube」が著作権を違反して楽曲使用されたビデオを、強制的に削除する以外に、楽曲版権者にマネタイズ(アップルのiTunesストアへの誘導リンクを貼って、該当する楽曲の販売を試みるなど)の選択肢を与えたことは記憶に新しい。コンテンツの再利用には保守的な立場を取っていた、映画スタジオや音楽レーベル、テレビ局やプロダクションなどは、ソーシャルメディアに引用されることで利益が生み出されるしくみに、もっと寛容になっていくだろう。
セッション8:ソーシャルメディア
- Threadsy
- プラグイン等のダウンロードの必要無し。自分宛のメールやソーシャルストリーム(Twitterなど)を一本化し、さらに、メッセージをやりとりする人との関係を説明してくれる。
- Lissn
- 世界やユーザーのコミュニティで展開されている会話の聴衆の人数を頼りに、人気のある話題を計測して、気の合うユーザー同士を集め、共通の話題で盛り上げるサービス。
- Radiusly
- Twitter対抗、マーケティング専用ビジネス向けマイクロブログサービス。140文字までの投稿に加え、商品をマーケティングできるよう、企業とユーザが情報交換できる場を設けている。
- Stribe
- Webサイトに、ソーシャル・ネットワーク機能をSaaSで組み込める。数分間でオンラインゲームやeコマースサイトをセットアップでき、JavaScriptを張り込むだけで、自サイトの訪問ユーザにサービスを提供することができる。
- Clixtr
- GPSで位置情報を自動取得し、撮影した写真のストリームを自動生成する。わざわざ、タグ付けをする必要が無いので、同じ時間に同じ場所に居たら、同じ体験を共有している者同士が、自動的に写真を共有することができる。
- The Whuffie Bank
- 人の評判をもとに、リアル/バーチャルなモノに交換できる通貨を作るNPO。Twitterなどのソーシャルストリーム上での発言や、友人からのコメントをもとに評価を測定し、通貨単位「Whuffie」の擬似通貨を受け取ることができる。
ソーシャルメディアは Twitterに席巻された感のある昨今だが、距離や場所の概念をを超越して、共通の関心分野でコミュニケーションができるようになり、次はそれを整理してくれるサービスが求められているところだ。最長140文字の投稿しかできないのが、Twitter の長所でもあり短所でもあり、用途別に Twitter の派生サービスを使ってみるものの、結局、いろんなユーザーインタフェースを使うのは煩雑で、よほど便利なサービスを除いて、Twitterに回帰してみたりする。
SaaSやPaaSの例にならって、TaaP(Twitter as a Platform)という言葉さえ生まれているが、Twitterを電話やFAXと同じ次元で、企業システムのI/Oとして日常的に採用されるようになる日も、そう遠くはないだろう。
会員登録(無料)が必要です
- ERP導入企業は34.8%、経営改革や業績管理に活用する動きも─ERP研究推進フォーラム/IT Leaders共同調査(2013/02/07)
- ツールの効果的活用で機能品質高め─テスト工程のあり方を見つめ直す(2013/01/29)
- IaaSを利用する際、これだけは押さえておきたいセキュリティのツボ(2012/10/18)
- これからIT部門が育てるべき人材像とは(2012/08/24)
- ベテラン社員に技術やノウハウが偏在、情報システム部門の技能継承が課題に(2012/07/19)