[技術解説]

根強い自前主義への3つの疑問、今こそ「コアとなる業務は何か」を見つめ直す

本丸に迫るSaaS Part2

2010年4月6日(火)IT Leaders編集部

基幹業務システム。それは中核事業の遂行に不可欠であり、企業が存続する限り長期にわたって使い続けるものだ。だからといって自前主義を貫くのは必ずしも得策ではない。中身をじっくり観察すれば「ノンコア」の領域があるはず。 まずはそこからSaaSの利用を検討したい。

Part1で見たように、基幹業務システムの領域でも自社運用からSaaSへシフトする動きが出始めた。「技術革新が加速している分だけ陳腐化も早い。すべてを自前でまかなっていては世の動きに追随しきれない」(ウイングアーク テクノロジーズ 事業統括本部SaaS推進室長の岩本幸男氏)。ガートナージャパンの本好宏次リサーチ エンタープライズ・アプリケーション主席アナリストは、「景気後退を機にシステムの実装方法を適材適所で吟味する傾向が強まった。人事給与や人材マネジメントなどの分野で、SaaSへの関心が急速に高まっている」と話す。

その一方で、基幹業務システムにSaaSを適用するのは非現実的ととらえる向きも少なくない。背景には、いまだ根強い「自前主義」へのこだわりがあるようだ。そんな声に対し、ポイントを3つに絞って疑問を投げかけてみよう(図2-1)。

図2-1 今後は、基幹業務システムにおいてもSaaSの利用が進む
図2-1 今後は、基幹業務システムにおいてもSaaSの利用が進む

企業は常に一定規模で存続し得るのか

これだけ厳しい経済環境下において、すべての企業が一定水準の成長を遂げるのは難しい。勝ち組と負け組の二極化はさらに進み、時流に取り残されれば事業の大幅な縮小や売却もあり得る。時には人員削減が伴うこともあるだろう。一方で勝ち組も安穏とはできない。企業買収や次なる成長事業の立ち上げなど、トップ集団を走り続けるには常に手を打ち続けなければならない。

つまりは、企業の規模はこれまでにも増してダイナミックに変動する可能性がある。システムの利用者数や性能要件なども見直しが迫られる。仮に事業が縮小した場合に自社運用では、それまで利用してきたIT資産に無駄が生じる。逆に急拡大した際には、システム基盤の全面刷新を強いられるかもしれない。

企業規模が一定ではないという前提に立てば、必ずしも自社運用は得策とはならない。激変するビジネスにしなやかに対応する上で、SaaSは有効な選択肢となる。すべてSaaSとは言わずとも、「オンプレミスとのハイブリッド連携は1つの現実解になるだろう」(SAPソリューション本部カスタマーイノベーションセンターの松村浩史センター長)。

自前で改修を続ける意味はあるのか

労働基準法、会計報告基準、製品含有化学物質管理…。システムはたびたび法律や業界ルールなどの変更に多大な影響を受ける。自社運用にこだわる多くの企業では、これらに逐一、時間と人手をかけて改修にあたっているのが実状だ。しかし、こうした作業にどれだけの価値があるのかを疑う必要がある。

ユーザー企業においては、ビジネスの現場の動きをとらえて経営の意思決定に有効な情報を得たり、複雑化した業務をより効率よく動かしたりすることにITへの大きな期待がある。それなのに、ひとたび自社で構築してしまったがゆえに、決して本流とは言い難い作業に翻弄されるのは由々しきことだ。

こうした問題を背景に、「可能な限りカスタマイズを抑えてパッケージを導入しようとするユーザーも増えてきた。パッケージに移行できるなら、将来的に外部サービスを適用するのも極めて自然な流れだろう」(エス・エス・ジェイ の山田誠マーケティング企画部部長)。

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