[技術解説]

NECが挑む“プライベートSaaS”、50社一丸でプロセスやコードを刷新

本丸に迫るSaaS Part3

2010年4月13日(火)IT Leaders編集部

会計/販売から始めたNECのSaaSへの挑戦──。NECは2010年4月、クラウド基盤上に構築した経理システムを国内外の関連約50社で正式稼働させる。さらに2011年4月には販売・資材システムをクラウドに移行させる計画だ。基幹業務システムのグループ内SaaS化によって、「持たざるIT」を体現するNECの取り組みを追う。

NECは、財務会計・管理会計を含むグループ内の経理システムを自社のクラウド基盤上で構築。2010年1月、本社と関連21社において旧システムとの並行利用を開始した。4月からは、国内外のグループ約50社にサービスとして提供する計画だ。いわば、基幹業務システムのグループ内SaaS化である。

「グループ全体の経理や販売システムを、SAP ERPを用いて刷新。グループ内で共同利用していく」。NECがそう発表したのは、2009年4月のことである。グループ内とは言え、大規模システムをSaaS型に移行させるというニュースは大きな注目を集めた。「いくらSI大手とはいえ、容易なプロジェクトではないはず」と、その行方を危ぶむ声もあった。

実際、プロジェクトはここに至るまでに様々な課題に突き当たった。その道のりは、「ガバナンス強化やITコスト削減を目指し、基幹業務システムという聖域にメスを入れることも辞さない」という先進企業にとって、大いに参考になるはずだ。

プロセスとコードを共通化
SAPにハブ機能を追加

NECにとって、今回の統合プロジェクトにおいては大きく3つのチャレンジがあった。

1つは、グループを挙げた業務プロセス改革だ。グループ全体における経理業務のプロセスを洗い出し、重複・類似するものを集約。100以上あったプロセス数を5分の1程度に圧縮したうえで、グローバル、リージョナル、国別という3層でそれぞれ共通化したのである。その効果を、執行役員兼製造・装置業ソリューション事業本部長の龍野康次郎氏は「SAPをほぼ標準機能のまま導入できた。将来の法改正や制度変更などに伴うメンテナンスにかかるコストを抑制できる」と語る。

2つめのチャレンジは、コード体系の統一である。これまで、グループ内には会社ごとに複数のコード体系が乱立していた。それを今回、勘定科目や国、通貨、単位、取引条件、取引先といった27種類のコードから成る標準体系に一本化した。さらに、グループ内のマスターデータを一元管理する仕組みも用意した。具体的には「SAP NetWeaver MDM」に、マスターメンテナンスやマスター集配信、コード変換といった機能を実装。データやトランザクションの品質を高める仕組みを作り上げた。

業務プロセスやコードの標準化を進める一方で、もう1つ大きな問題が残っていた。既存システムとのデータ連携である。経理システムは当然ながら、それ単体で処理を完結できるものではない。製造や物流、販売といったグループ内の既存システムのほか、受発注など社外とのデータ交換も発生する。こうした外部とのデータ連携が3つめのチャレンジだった。

経理システムとデータをやりとりする外部システムの数は、二千数百に上った。単純に考えると、これらとSAPを連携させるには同じ数のインタフェースを開発しなければならないことになる。しかし、それには膨大な手間とコストがかかるし、将来のメンテナンス性を考えても現実的ではなかった。

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