[技術解説]

マイクロソフトの主席アーキテクト、レイ・オジー氏が語る「Azureの全体像」

Windows Azure解体新書 Part1

2010年5月11日(火)IT Leaders編集部

Azureを理解する第一歩としてマイクロソフトの主席アーキテクト、レイ・オジ−ー氏の講演を載録する。開発者に向けた内容で随所に宣伝ぽい表現もあるが、「Let's Build!(さあ、アプリを作ろう)」など、同社の開発者向けイベント「Tech・Days 2010」のキーノート講演から氏の意図を感じ取ってほしい。(構成:編集部)

我々は2008年に米ロサンゼルスで開催した「PDC 2008」でWindows Azureを発表し、開発者向けにプレビュー版を提供しました。2009年はAzureの改善に努めた1年だったと言えます。プレビュー版を使用した皆さんからの声に耳を傾け、製品そのものを作り替えてきました。そして2010年2月、Azureはプレビュー版から正式版へと移行し、商用サービスとして正式に運用を始めました。

レイ・オジー氏

 

高い柔軟性を備えた基盤でシームレスなサービス提供へ

Windows AzureはクラウドOSです。こう言うと未来的ではありますが、現行のWindows OSからかけ離れたものではありません。Windows Serverのハードや仮想インスタンスが無数に集まったものだとお考えください。そう、Windows Serverそのものです。

Windows AzureはAzure Fabric Controllerと呼ぶ管理システムを使って、コンピューティング環境やストレージなどクラウド上にあるすべてのリソースをコントロールします。Azure Fabric Controllerは、従来のSystem Centerの管理機能を拡張して仮想インスタンスのライブマイグレーションを可能にするなど、柔軟性が高くシームレスなサービスの提供を実現します。

我々はWindows AzureやWindows Server System Centerにかかわらず、管理システムには一貫して、このインフラを採用しています。したがって、Azure Fabric Controllerを使えば、マイクロソフトが用意するクラウド環境も、企業内のプライベートクラウドも同様に管理できるようになるのです。

一方、開発の視点では、Windows AzureはVisual Studioの拡張版だとも言えるでしょう。これまでと同様に、SQL ServerやIIS(Internet Information Services)、ASP.NET、.NET Frameworkを使ってWindows Azureのアプリケーションを開発できるからです。mySQLとPHP、JavaとEclipseといった組みわせでアプリケーションを開発することもできます。だからこそ、Windows Azureを正式にお届けできるようになったことは、開発者の皆さんにとっても重要な意味があるわけです。

3スクリーン+クラウドでIT業界の再活性化を加速

いつでも誰でもサービスを活用できる環境を提供する─。こうしたマイクロソフトの基本戦略をパソコンや携帯電話のアプリケーションに適用したものこそ、「3スクリーン+クラウド」です。

右ページ上にある、代表的な3つのスクリーンがWebを取り囲む姿は、ハブとして機能するWebを中心に据えた我々の基本戦略を視覚化したものです。パソコンや電話、テレビはWebでつながり、製品や基盤の違いを超える。企業向けや消費者向けといった垣根もなくなる。そしてインターネットや企業データセンターのクラウドにある多様なアプリケーションを、各種端末から使えるようになるのです。我々は今後も、どのような端末からでもサービスにアクセスできる環境を整備し続けます。

Tech・Days 2010では、Windows Azure以外にも、数々の製品をご紹介します。いずれも「ソフトウェア+サービス」というマイクロソフトの包括的な戦略を反映した製品群です。最新OSのWindows 7、ネットにつながった携帯電話やテレビ、IE(Internet Explorer)やSilverlight、SharePointなどのバックエンド製品。技術や価値をユーザーに提供する手段の幅は一気に広がりました。

我々は今、IT業界に訪れた再活性化の波を実感しています。大きな可能性を前に我々が感じている興奮を肌で感じてください。

無限の可能性を持つクラウド 変化の過渡期に新時代を築く

もっとも、クラウドコンピューティングは発展途上の段階ですし、端末の枠を超える「3スクリーン+クラウド」も新しい概念です。先に述べてきた大がかりな構想は、創成期にあるのが現実です。そこで、皆さんには3つのことをお伝えしたいと思います。

まず、稼働環境としてWindow 7をご検討ください。Windows製品はネットワークの恩恵を最大限に享受する環境を提供します。パソコンのユーザーだけでなく、Windows Phone 7などでネットにアクセスするユーザー全員がサービスを利用できるようになったのです。このことはユーザーと開発者の双方に有益な変化をもたらすでしょう。

次に、クラウドの利用をお考えならWindows Azureに注目ください。我々の使命は質の高いソフトウェアを提供することに加え、アプリケーションやインフラ基盤そのものをサービスとして提供することです。そしてご存じの通り、それらのサービスや基盤はすでに商用レベルに達しています。

最後に、社会やビジネス、ITの環境に思いを巡らせてください。我々を取り巻く環境の変化は過渡期にあります。そんな中、Azureのような製品がどのような役割を担うのか。改めて考えてみていただきたいと思います。

いまや、我々の世界とシステムは、想像を遥かに上回る規模のデータを保有したネットワークにつながっています。データには個人の情報だけでなく社会全体の情報が含まれ、企業や政府、教育機関や医療機関など、あらゆる分野で有効活用できる。クラウドコンピューティングの可能性は無限大です。我々と共に新しい時代を築きましょう。

Let's Dream and then Let's Build !

●Next:マイクロソフトの大場氏によるAzureの全体像の解説

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