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[ザ・プロジェクト]

5000人が使う通信インフラを3カ月で入れ替え、海外からの社内アクセスを容易に─大塚製薬

2010年9月22日(水)川上 潤司(IT Leaders編集部)

長きにわたって付き合ってきたベンダーから別のベンダーに乗り換えるのは勇気がいる。乗り換えの対象が、企業活動を支える通信インフラとなればなおさらだ。大塚製薬は2010年7月、13年にわたって利用してきたリモートアクセス環境を、新規サービスに切り替えた。その狙いを聞く。 聞き手は本誌副編集長・川上 潤司 Photo:陶山 勉

周防勝彦氏
周防 勝彦 氏
大塚製薬 IT推進室 課長
2002年に大塚製薬入社。SAP R/3を用いた会計システム刷新プロジェクトに参画し、導入後は運用を担当。2006年からはMRのPDCAマーケティングを支援する営業支援システムの再構築に従事したほか、インターネット上でのチケット手配や旅費精算、会計システムの連携も手がけた。このほか、今回のプロジェクトでは、プロジェクトリーダーを務めた

 

加藤毅氏
加藤 毅 氏
大塚製薬 IT推進室 課長
1991年に大塚製薬入社後、臨床検査システムの外販事業において、導入SI業務に携わった。2006年に本社情報システム室に異動し、クライアント系インフラを担当したほか、2006年の本社移転プロジェクトでは新社屋でのLAN構築に従事。2007年からは、無線LANの全国展開やメールサーバー刷新といったプロジェクトに参画。今回のプロジェクトでは展開・運用フェーズを担当した

 

前川智明氏
前川 智明 氏
京セラコミュニケーションシステム コミュニケーションサービス事業部 エンタープライズサービス課
2001年に京セラコミュニケーションシステム入社。2002〜2003年、KDDIに出向しau携帯電話向けプラットフォームのサービス仕様策定、コンテンツ開拓業務に従事。その後、愛知万博実証実験プロジェクトを経て、2006年からリモートアクセスサービスの開発に従事。現在、同サービスの提案・導入部隊に所属している。今回のプロジェクトでは、開発リーダーを務めた

 

黒瀬智尚氏
黒瀬 智尚 氏
京セラコミュニケーションシステム ビジネスイノベーション営業部 エンタープライズ営業部 東京EP営業1課 グループ長
2005年、京セラコミュニケーションシステム入社。通信料金の一括請求サービス「グリーンネットサービス」の営業業務を経て現職。現在は、リモートアクセスサービスに加えて、BPOの営業活動を展開している。今回のプロジェクトでは、営業担当者として自社の既存製品やサービスを組み合わせたシステム案を提示。新規ベンダーながら受注にこぎつけた

 

─ リモートアクセス環境を再構築したそうですね。これは、誰向けのシステムですか。

周防:医薬情報担当者(MR)や、飲料や栄養食品といった消費者向け製品の営業担当者など、グループ5社の5000人を対象にしています。国内外の出張先から、メールや営業支援といった社内システムを利用するのに使います。

加藤:auやNTTドコモの3G回線のほか、公衆無線LANなどを経由して京セラ コミュニケーションシステム(KCCS)のネットワークに接続。そこからWANを介して社内システムにアクセスする仕組みです。

─ 同様の環境は、今までもあったんですよね。

周防:もちろん。出張が多いMRや営業担当者を支援するため、98年にPHSによるリモートアクセスを導入。2005年にはそれを、通信ベンダーはそのままに3G通信網にリプレースしました。

─ 同じベンダーのサービスを13年間、利用していた。

加藤:はい。ただ、従来のシステムには、アクセス手段がある特定の通信キャリア、具体的にはauのモバイル回線も限られるという問題があった。つまり、auのサービス提供エリア外では利用できなかったということです。

周防:有線LANを使ってインターネットVPNで接続する環境もありましたが、利用者はごく一部にとどまっていました。IDやパスワードが3G接続とは別だったので、使い分けが面倒だったんです。

申請から利用開始まで2週間
急な出張では使えなかった

周防:その一方で、海外出張が多いユーザーからは、無線LANへの対応を求められていました。海外、特にアジア各国のホテルはインターネット接続に無線LANを採用しているところが多いんですよ。館内に無線のアンテナを1本立てれば、各部屋に電話線やネットワークケーブルを引く必要がないからでしょうね。

─ ところが、従来のシステムは無線LANに対応していなかった。

加藤:ええ。アクセス手段の拡大に加えて、運用業務を効率化する必要もありました。それにユーザーがリモートアクセス利用を申請してから実際に使えるようになるまで、時間がかかっていたんです。申請後、IT部門でアカウント登録してからベンダーにカードを発注するという流れだったので、通信カードがユーザーに届くまで2週間かかることもあった。

周防:このため、例えば「急きょ海外出張が決まったので、来週までにリモートアクセスできるようにしてほしい」といった要望に応えられない。IT担当者として、歯がゆかったですよ。

─ これまでの通信環境は、ユーザーである営業担当者の業務実態に必ずしもフィットしていなかったということ?

加藤:はい。IT部門にとっても、運用業務の負荷増大は大きな問題になっていました。リモートアクセス環境を維持するには、アカウント管理や通信カードの配布・回収といった作業が伴います。なかでも、部署ごとに毎月の利用料を按分する精算処理はかなり煩雑で、重荷でした。

─ アクセス手段の制約と運用業務の非効率を撤廃する狙いで、通信インフラ刷新に踏み切った。実際に行動を起こしたのはいつでしたか。

周防:2009年3月です。通信サービス会社と接触し、各社がどういうサービスを提供しているか調査を開始しました。5社の担当者に会って話を聞き、どういうことができるか、あるいはできないかを調べたんです。その後、KCCSを含む3社にRFPを出して、提案してもらいました。

─ ほかの2社とは、どこですか。

加藤:従来のリモートアクセス環境を提供していたベンダーと、WAN環境をお願いしているベンダーです。

周防:実は最初、KCCSは候補に挙がっていなかったんですよ。というか、リモートアクセスのサービスを提供していることを知らなかった。

─ あ、そうだったんですか。それがどうして提案することに?

黒瀬:偶然、私が別のサービスを提案中だったんです。それで今回の取り組みを耳にしまして。

─ うちにもそういうサービスがありますよ、と売り込んだ。それで、RFPはどんな内容だったんですか。

加藤:主な項目を挙げると、アクセス手段の多様化、操作手順の簡略化、コスト最適化といったところですね。それに、運用業務の集約についても提案を求めました。

大塚製薬が実施したリモートアクセス環境刷新プロジェクトのスケジュール
図 大塚製薬が実施したリモートアクセス環境刷新プロジェクトのスケジュール
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