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[技術解説]

データマネジメントの極意─成功に近づく実践の勘所

今こそ実践!データマネジメント Part3

2010年11月9日(火)栗原 雅(IT Leaders編集部) 鳥越 武史(IT Leaders編集部)

まずはデータの汚れ具合を直視 仕上げは登録・更新ルールや体制の整備──作業内容が見えない。工数が読めない。何から着手すべきか分からない。データマネジメントの必要性を感じながら、こうした理由で実践に踏み出せていない企業は多いだろう。パート3では、先進企業の取り組みと専門コンサルタントへの取材から浮かび上がってきた、4つの実践ステップとポイントを紹介する。

データマネジメントには完全に自動化できる作業がほとんどない。そのためデータマネジメントを実践しているユーザー企業の情報システム責任者や、それを支援するコンサルタントは「データの品質を上げるのに奇策や秘策はない」と口をそろえる。さらに、「地道にデータを見直し続けることが何より大切だ」とも言う。その言葉を象徴する1つの例が協和発酵キリンの取り組みである。

協和発酵キリンはデータマネジメントの先進企業として知る人ぞ知る存在だ。2004年に生産管理や受発注、会計といった基幹系システムのデータモデルやマスターデータをひと通り整備した。その後も継続してデータ品質の改善に取り組んでおり、2011年には何度めかのデータ整備に臨む予定だ。中山嘉之情報システム部長は「本当は日々データの状態を保つのが理想だが、そればかりやっているわけにはいかない。しかし、(状況をみながら)何年かに1回の割合で必ずデータを整備するようにしている」と話す。

詳しくは次のパート4で紹介するが、卸売業界のジャパン・インフォレックスはデータ整備の専門要員を抱え、毎日、商品データの品質改善活動を続けている。同社の井口泰夫社長は「もう5年めになる。当然、労力もコストもかかるが、やるだけの価値は十分にある」と語る。

現状把握から体制作りまで4ステップで着実な実践を

データマネジメントは一足飛びに社内に根付かせられるわけではない。先進企業の取り組みや専門家の話を総合すると、データマネジメントには大きく4つのステップがある(図3-1)。

図3-1 データ品質を高め、維持するためのステップとポイント(クリックで画像を拡大)
データ品質を高め、維持するためのステップとポイント

最初は「現状把握」のステップだ。各種システムでどのようなデータ項目を使っているかだけでなく、データ項目ごとの表記揺れや重複がどの程度あるかといった「汚れ具合」も把握する。データ項目や汚れ具合の確認にはデータプロファイリングツールが、データの関連性の可視化にはデータモデリングツールが使える。

続くステップは「データ項目などの定義」。売上機会創出やサプライチェーン効率化のようにデータ活用シーンを具体的に想定して項目の過不足を検討する。ここまできて、ようやくステップ3「データの不整合の解消」に入れる。いわゆるクレンジングと名寄せの工程だが、前2工程の良し悪しが作業効率や精度に影響してくる。

例えば、名寄せは表記揺れや欠落がない項目をキーに選ぶと、ツールで自動化できる割合や精度を上げやすい。そのキーの特定に、ステップ1で可視化したデータ項目の汚れ具合が参考になる。10年にわたりデータ統合コンサルティングを提供する日立コンサルティングの嵓渕史彦シニアマネージャーは「経験上、氏名のカナをキーにすると名寄せの効率を高めやすい」という。同じ氏名でも「漢字は新旧字体や誤記が混在していることが割と多い」。

ステップ2でデータ活用シーンを明確にすることは、ステップ3の工数に利く。クロスセル/アップセルが目的なら、10年以上前の顧客データを対象から外して工数を減らすといった選択肢もあり得るからだ。

最後のステップ4は、データ品質を維持するために不可欠な「体制/仕組みの構築」である。協和発酵キリンはマスターデータの登録・更新ルールを定めると共に統合管理するシステムを構築し、情報システム部門が中心になって運用している。ソニーはグループ会社に専門組織を設けている。

栗原 雅/鳥越 武史
編集部
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