[海外動向]

“データセントリック企業”への変革で真の競争優位を生み出す

Informatica World 2010 2010年11月2日〜4日 米ワシントンD.C.

2011年1月6日(木)河原 潤(IT Leaders編集部)

米ワシントンD.C.の会場に、世界約40カ国から1300人を超える参加者が集まったInformatica World。開幕基調講演を務めたのは同社の会長兼CEO、ソヘイブ・アバシ(Sohaib Abbasi)氏である。

ソヘイブ・アバシ氏 写真1:インフォマティカの会長兼CEO、ソヘイブ・アバシ氏は、「大きな景気後退を経験した今こそ、データ・セントリックなアプローチに取り組むチャンスである」と説いた

 冒頭、2008年末〜2009年を通して深刻化した世界的な景気後退について触れ、「これほど長期の景気後退を経験して浮かび上がってきた事実がある。それは、厳しい経済情勢下では、日々業務で扱うデータそのものがいかに重要であるかということだ。不確実な時代に未来を予見することは極めて困難だが、信頼できる品質の高いデータがあれば、我々は、それに立ち向かうことができる」(アバシ氏)と語った。

 そう言い切る氏の自信は、データ本位の姿勢でその価値を十分に生かすデータ・セントリックな企業への変革を顧客に促し、自らもそれを実践するインフォマティカの堅調な業績からきている。

 ここ数年でビジネスインテリジェンス(BI)やデータウェアハウス(DWH)分野の専業ベンダーが相次ぎ大手プラットフォーム・ベンダーに買収されていく中でも“独立系”を貫いてきた同社は、このたびの景気後退期を含む2009年までの5年間を年率18%で成長し続けて、直近の四半期(2010年7〜9月)には過去最高となる売上高を達成している。

5つのテーマに注力

 本題に入り、アバシ氏は、データ統合/管理における今後の5大テーマとして、「Beyond DWH」「Beyond Traditional Enterprise Computing」「Beyond ETL」「Beyond Relational Data」「Beyond Informatica」を挙げた。

 まず、Beyond DWHについてアバシ氏は、現在主流のアプリケーション・セントリックなアプローチでは、DWHを形成するデータの信頼性と即時性が共に損なわれて、収益拡大、グローバル化、ガバナンス、オペレーション効率化といった経営課題を同時に解決できないと指摘。今後は個々のアプリケーションやその開発元にロックインされることのない、データセントリックなアプローチを採用するべきだと語った。

 Beyond Traditional Enterprise Computingは、企業ITのカテゴリーがボーダーレス化する中でのIT投資のあり方を問うものだ。クラウド、モバイル、ソーシャルという3つのトレンドを踏まえずして、今後のIT投資を考えることはできない」(アバシ氏)とし、自社のITインフラにこれらを取り入れ、それぞれの価値を発揮させるにあたっては、“ビジネスクリティカルなデータ”をロバスト性(強靱性)をもって扱える統合/マネジメントの仕組みが鍵を握ると説明した。

 このうちクラウドに関しては、クラウド・アプリケーションのデータに対しても、オンプレミスのデータと同様、自社でコントロールできることが、ロバスト性を備えたエンタープライズ・レベルのデータ統合/管理の前提条件であり、この部分をクラウド事業者に委ねるのは、企業にとってのリスクになると警告。そして、データの所在にかかわらず、ユーザーが自らの手でオンプレミス/クラウドのデータをシームレスに統合可能な「Informatica Cloud」を紹介した。

 Beyond ETLにおいてもアバシ氏は、「アプリケーションに縛られたプロプライエタリなデータ管理はサイロ化をより進行させ、データ統合作業を困難なものにしてしまう」と述べ、データ・セントリックでかつオープンな統合プラットフォームの構築を促した。同社の解は、データ統合/管理対象を8つの技術カテゴリーにまで拡げたプラットフォーム「Informatica 9」である。

 これまでの約40年間、RDBMSで管理されるリレーショナルデータが業務データの主流であり続けてきた。Beyond Relational Dataは、今後はリレーショナルデータに加えて、TwitterやFacebookなどが生成するソーシャルデータの管理を考えなくてはならないというテーマだ。

 非構造化データの管理は今に始まった問題ではないが、大量のデータが頻繁に発信され、しかもリアルタイムでの分析が重要な意味を持つソーシャルデータの場合、旧来の仕組みでは十分に対応できない。そこで同社が着目したのが、分散・大規模データの高速処理で実績のあるHadoopで、同社は米クラウデラ(Cloudera)のHadoopファイルシステムをInformaticaプラットフォームでサポートすることを表明している。

 最後のBeyond Informaticaは、インフォマティカ自身も既成の考え方にとらわれずに変革を遂げていくという意思表明だ。アバシ氏は一例として、同社のプラットフォームにかかわるベンダーやパートナー、個人開発者がリソースやナレッジの共有・売買を行うためのマーケットプレイス「Informatica Marketplace」を、デモを交えて披露した。

データ統合/管理に先行投資

 会期中は、他社に先んじてデータ統合/マネジメントに取り組んだ先進ユーザー企業によるセッションが多数用意され、Informaticaユーザー同士の活発な議論が繰り広げられた。以下、主なユーザー・セッションの模様をかいつまんで紹介する。

U.S.エキスプレス

 トラック輸送のビジネス効率性向上を図るために業務データの品質、可用性、構成に着目。所有するトラックのエンジンアイドリングを計測・分析して配車の最適化を行うことでアイドリング総時間を劇的に低下させ、年間100万ドルもの燃料費の削減を達成した。

東芝アメリカ・ビジネス・ソリューションズ

 スピード経営を推進する過程で、オンプレミスのデータベース、アプリケーションや「Salesforce CRM」がそれぞれ扱うデータの統合が急務となった。同社は「Cast Iron Systems」や「Pervasive」と比較の末、Informatica Cloudを選定し、わずか1日で統合を完了させた。その結果、従来セールスレップが1つの案件を完了させるのに3つのシステムへのアクセスを要していたのが単一ビューからのアクセスのみで済むようになり、週次更新だったサービス情報は数時間で更新されるようになった。

メリルリンチ

 顧客満足度の向上と営業活動の改善を図るために、グローバルMDMプロジェクトを敢行し、顧客情報と製品情報に対する“360度ビュー”を完成させた。1万6000人の金融アドバイザーはグローバルレベルで集約・統合された顧客データに対して、どの拠点からでもリアルタイムにアクセスできる。

ジョンソン・エンド・ジョンソン

チャールズ・ブラッドワース氏 写真2:ジョンソン・エンド・ジョンソンのマルチドメインMDMプロジェクトを率いたチャールズ・ブラッドワース氏は、「今後はグローバル規模でデータ・セントリックを推し進めていきたい」と語った

 ジョンソン・エンド・ジョンソンは、厳しい法規制をクリアするために、アカウント管理、契約管理、受注入金管理という3大ビジネスプロセスの刷新を決断した。

 全米14の営業事業所で使用する5つのコアマスターを開発し、35万の顧客情報と30万の製品情報に対する単一ビューを提供するマルチドメイン型のMDMを実現するという計画を立て、グローバルなデータガバナンス組織の設立から着手した。

 同組織は全社のデータガバナンスプロセスを定義し、それを基にプロジェクトが進められた。

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