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[技術解説]

多様化と成熟が進む開発環境、国産ツールも含めツールや方法論は多様化

“特急開発”ツールの進化系 Part5

2011年1月25日(火)鳥越 武史(IT Leaders編集部)

海外製だけではなく、国内においても独自の方法論に基づいた生産性の高い開発ツールがいくつか生み出されている。 国産製品を中心に、その概要を見ていく。

 GeneXusやSapiens、ユニケージ開発手法といったツールや方法論の他にも、基幹系システムの開発期間を劇的に短縮することを狙ったツールのバリエーションが増えている(表5-1)。まずは、国産の2つのツールを見ていこう。

表5-1 主要な業務アプリケーションの“特急開発”を想定したツール・方法論
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表5-1 主要な業務アプリケーションの“特急開発”を想定したツール・方法論

[方法論+ツール型]
●iRYSHA
約180の標準サービスを用意

 GCT研究所が販売するのは、Webアプリケーションの開発ツール「iRYHSHA(イェライシャ)」だ。標準で用意する機能(サービス)の組み合わせでアプリケーションを構成することに主眼を置いている。

 画面や帳票などのUI、データテーブル、基本要件で定義する「業務場面(GYOMU)」を単位として開発を進めていくのが特徴だ。業務の流れに沿って「FlowCreator」で、業務場面同士のつながりを設定(図5-1)。各業務場面で利用するデータ項目の定義や、データベースのフィールド名やデータタイプ、ラベルといった要素は、専用マクロが付随するExcelシートを利用して設定する。この内容を「GYOMU Builder」と呼ぶ生成ツールに登録すると、110項目におよぶ定義情報で構成するアプリケーションの「設定テーブル」に反映。iRYSHAのASP.NETベースの実行エンジンがこれを逐次読み込み、Webアプリケーションとして動作させるのが基本的な仕組みだ。

図5-1 GCT研究所の「iRYSHA」での業務フロー設計の例
図5-1 GCT研究所の「iRYSHA」での業務フロー設計の例。マスターデータ登録や伝票処理、データ分析といった業務場面の組み合わせとしてフロー図を描いていく

 ユーザー認証やアクセス制御、操作ログ、メール送受信といった汎用的な処理については、iRYSHAが提供する約180個の標準サービスによって実現する。これらは、同社がこれまで手がけてきた15カ国における統合業務(ERP)パッケージ導入の実績と、シンクタンクなどを活用した約40カ国の調査結果から絞り込んだもの。「例えばセキュリティに求められる要件は、多くの顧客に共通する。汎用的で多くの顧客に横展開できる機能はほぼサービス化を完了した。顧客固有の業務要件以外は、ほとんどカバーできる」(GCT研究所の岡部 摩利夫代表取締役社長)。

 ユーザーインタフェースの細かな変更はJavaScript、企業の個別要件を満たす処理など、汎用化できない部品はC#やJavaでライブラリを個別開発して用意する。

●PEXA Suite
伝票の流れをベースに設計

 傘下に複数の事業会社を有する持ち株会社や、多数の診療科がある総合病院など、業務要件が複雑で高度な基幹業務システムの開発に焦点を当てた方法論&ツールもある。アトリスの「PEXA Suites」だ。

 その中核が伝票のやり取りに着目した業務プロセスの分析・設計方法論であるPEXA Methodology(図5-2)。伝票を扱う主体である「ロール」、伝票に対する操作である「イニシアティブ」、操作対象となる伝票の「イニシアティブターゲット」といった要素を洗い出し、システムを設計する。こう説明すると簡単に思えるが、PEXA Methodologyのポイントは簡単さではない。ほかに「業務ルールとプロセスの分離」や、独自の表現形式である「SVOモデル」といった手法を駆使し、複雑な要件を確実に定義できるのが特徴である。

図5-2 アトリスの「PEXA Suite」での作成するシーケンス図の例
図5-2 アトリスの「PEXA Suite」での作成するシーケンス図の例。例えば見積業務のワークフローを設定する場合、伝票処理の流れに沿って伝票や処理する人、処理内容を列挙し、設計を進めていく

 一連の分析・設計工程を「PEXA Tools」で支援し、成果物を「PEXA Engine」に入力すればJavaコードを生成する。結果として手戻りが発生せず、また設計の成果物からソースを生成できるので、開発期間を短縮できる。なおPEXA Suiteは、Methodology、Tools、Engineをセットで提供しているが、ToolsとEngineの導入は必須ではない。「分析や設計作業の効率化のため、Methodologyのみを利用するユーザー企業も少なくない。詳細レベル設計が完了しているので、Java以外の言語によるコーディングも容易にできる」(アトリスの大内 隆信執行役員)という。

[ジェネレータ型]
構成管理や画面編集に個性

 ソースコードを自動生成する「ジェネレータ」としての機能に軸足を置いて進化を図るツールもある。

 CA Technologiesの「CA Gen」は、JavaやC#、COBOLといったプログラム言語のソースコードを自動生成し、Web型やクライアントサーバー型のアプリケーション開発を効率化するツールである。

 データ項目や画面、業務ロジックといったアプリケーションの設計情報を基に、ジェネレータを使って指定したプログラム言語のソースコードを生成する。データ項目や画面の設定には、GUIによる構築支援ツールを用意。業務ロジックはウィザードを使用して設定し、コマンドをプルダウンで選択しながら記述する。コマンドは、個別開発して追加可能だ。

 構成管理機能を備え、データ項目や業務ロジックといったアプリケーションの設定項目を、あらかじめ複数の小区画(サブセット)に分割。各サブセットに対して、ユーザーや役割ごとに閲覧・編集権限を付与できる。

 キヤノンソフトウェアの「Web Performer」は、JavaベースのWebアプリケーションの構築ツール。専用のエディターで、データ項目の設定や業務ロジックを設定。画面は、スタイルシートやHTMLで記述する。こうしたアプリケーションの設定情報をリポジトリに格納し、ジェネレータでJavaのソースコードを生成する。アドビシステムズのFlashベースのリッチクライアント開発ツール「Flex Builder」での画面編集も可能だ。

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