[シリコンバレー最前線]

ベンチャー投資が再加速、2010年は835事業に79億ドル

2011年4月11日(月)山谷 正己(米Just Skill 社長)

米国で最もベンチャー投資が活発なシリコンバレーでは日々、新たなビジネスが生まれている。その当地からお伝えする本連載で、今回取り上げるテーマは2つ。ベンチャー投資動向と、旧来型書店ビジネスの崩壊だ。

シリコンバレーには、約400のベンチャーキャピタル(VC)がひしめいている。そこで働くベンチャーキャピタリストの仕事は、起業家たちから提出された多数のビジネスプランの中から優れたものを選りすぐり、株券と引き換えに投資して、その数十倍(ときには数百倍)の見返りを得ることである。そのためには、投資先であるスタートアップ企業を育てて株式公開させるか、初期の投資額よりも高い値段で大手企業に売却する必要がある。こうして投資を回収することをexit(エグジット)と呼ぶ。exitは、スタートアップ企業がVCという保育箱から抜け出て一人前になることも意味する。

リーマンショックのあおりを受けて、2009年に一時的に落ち込んだ投資機運は、早くも回復傾向にある。シリコンバレーにおける過去10年間のベンチャー投資の推移を図1に示す。2010年、835件の案件に対して79億ドル(前年比13%増)のベンチャー投資が行われた。これは、米国全体におけるベンチャー投資の40%に相当する。投資の対象となった分野の内訳は、図2に示す通りである。

図1 シリコンバレーにおけるベンチャー投資の推移
図1 シリコンバレーにおけるベンチャー投資の推移
図2 シリコンバレーにおけるベンチャー投資の内訳(2010年)
図2 シリコンバレーにおけるベンチャー投資の内訳(2010年)

FacebookはSun跡地に引っ越し

2010年、獲得した投資額の筆頭はTwitterの2億517万ドル。話題のFacebookへの投資額は、それに次ぐ1億2000万ドルだった。Facebookはさらに2011年1月、15億ドルという巨額の資金調達に成功した。

写真1 Facebookの“引っ越し先”である旧Sun Microsystemsの開発センター 写真1 Facebookの“引っ越し先”である旧Sun Microsystemsの開発センター

2004年に創業したFacebookへの投資総額は、23億4000万ドルに上る。同社の市場価値はいまや、Yahoo!の市場価値(220億ドル)の2倍以上にあたる500億ドルに膨れ上がった。Facebookの社員数はまだ1400人ほどだが、毎年50%ずつ増員している。この調子で増え続けると、数年後には1万人を超える。現在、同社のオフィスはパロアルト市内の複数のビルに分散しており、それぞれが手狭になってきた。そこで、旧Sun Microsystemsの開発センターを買い取り、2011年6月に移転することを決めた。23万m2の敷地に9つのオフィスビルが建つ新本社は、Oracleによる買収以来、空き家となっていた(写真1)。

もう1社、シリコンバレーのVCが熱い視線を注ぐスタートアップ企業を紹介しよう。2005年にパロアルト市で創業したBox.net(ボックスネット)だ。クラウド上でコンテンツ管理やコラボレーションといったサービスを提供する同社は2011年2月末、第4次投資として4800万ドルを獲得した。同社はこれで、総額7760万ドルの投資を集めたことになる。CEOのAaron Levie(アーロン・レビー)氏は若干26歳。南カリフォルニア大学をドロップアウトし、シリコンバレーにやってきて起業した。会社設立の資金は、共同設立者であるDylan Smith(ディラン・スミス)氏がインターネットポーカーで稼いだ1万1000ドルだった。Levie氏は、FacebookのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏と同い年だ。さらに、大学をドロップアウトして起業したことなど共通点が多い。

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