[シリコンバレー最前線]

ソーシャルの波がレンタカーにも/米大統領選が早くも開幕

2011年6月8日(水)山谷 正己(米Just Skill 社長)

自動車も、所有から利用へ。車社会の米国で今、自動車の貸し借りを仲介するソーシャルサービスが脚光を浴びている。“ソーシャル”は、2012年の大統領選に向けた戦いでも重要なキーワードだ。各陣営は、SNSを活用したキャンペーン合戦を繰り広げている。

米国は車社会である。郊外に住んでいると、車なしでは買い物すら行けない。ただし、ニューヨークやサンフランシスコのような大都市は事情が異なる。バスや地下鉄といった公共の交通機関が整備されているため、日常生活を送るうえで自家用車は必需品ではない。とはいえ、週末の遠出や買い出しなど、大都市に居住していても車が必要になることはある。

そんなとき、レンタカーを利用するのがこれまでの定番だった。しかし、レンタル料金はそれなりの金額である。しかも、ほんの1〜2時間だけ必要な場合でも、1日分の料金を支払わなければならない。一方、自家用車を所有する人に目を転じると、彼らは常に車を乗り回しているわけではない。愛車をガレージに眠らせている時間は当然ある。「自分が使わないときには近所の人に貸し出し、使用料を頂戴すれば家計の足しになるのに」。こう考える人は少なくなかった。

そこに目をつけて、車の借り手と貸し手を結びつけるサービスが生まれた。「ソーシャルレンタカー」だ。利用者の利便性だけでなく、都市部における交通渋滞の緩和、ひいては排気ガスの削減に役立つサービスとして注目を集めている。RelayRidesが2009年に事業を立ち上げて以来、GetaroundやSprideShare、Go-op、JustShareItといった業者が現れた。RelayRidesには、グーグルも投資している。

ここで、ソーシャルレンタカーの仕組みを簡単に説明しよう(図1)。

図1 ソーシャルレンタカーサービスの仕組み
図1 ソーシャルレンタカーサービスの仕組み

まず、貸し手がサービス業者のWebサイトに自分の車を登録する。業者は貸し手が入力した車体番号を基に、盗難車でないかなどを審査。問題なければ、制御装置を貸し手に郵送する。貸し手は車両に制御装置を取り付け、貸し出し可能な時間帯と希望のレンタル料を登録する。

一方、借り手は業者のサイトに運転免許番号や社会保障番号を入力。交通違反の有無などの与信を受け、会員登録する。その後、借り手がレンタルを希望する日時と車種を入力すると、登録済みの車とのマッチングを行う。条件が一致する車があれば、予約は完了だ。あとは、借り手が予約日時に当該車両の置き場所に行くだけ。制御装置に会員カードをかざせば、すぐ運転を開始できる。会員カードの代わりにスマートフォンを使う業者もある。

料金は、小型車であれば1時間当たり6〜8ドルといったところ。必要な時間帯を小刻みに指定して借りられるので、従来のレンタカーより安く済む。ソーシャルレンタカー会社はレンタル料の数パーセントを手数料として受け取り、残りを車の持ち主に支払う。業者は、事故があった場合に備えて貸し手の車両に追加の自動車保険を掛けるため、万一の場合の心配も少ない。

ソーシャルレンタカー業者は、自社で車を所有せず、インターネットを介して不特定多数の人々から調達する。それゆえ、クラウドソーシング(crowdsourcing)の一種といえる。

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