[市場動向]

企業ITにおけるM2Mの位置づけ─注目すべき理由と勘所

M2Mを理解する Part2

2012年2月7日(火)桑原 里恵(札幌スパークル システムコーディネーター)

自販機に自動車、スマートメーター。農業、医療、交通、生産、防犯etc.。 M2Mとクラウドが組み合わさって、スマートな社会や事業がつくられる…。 ITの新しい姿は理解するけれど、多くのIT部門にとってM2Mは縁遠い存在。 本当にそうなのか?「3つの関わり」で即戦力となるM2Mの重要性を説く。

企業ITという言葉には、大きく2つの対象が含まれる。ひとつは情報システム。基幹系を中心に企業活動を支える。もうひとつは、事業の製品・サービスのIT化。機器に通信がつながり、商品にRFIDがつく。店頭にはデジタル・サイネージがあり、農産地からは生育の様子がセンサーやカメラで刻々と伝わる…。製品やサービスにITを組み合せ、新しい価値を創造する。

IT部門は長い間、情報システムを担ってきた。今では、システムだけでなく、業務プロセス全体を描き、実現を支えている。一方、製品・サービスのIT化は一般に、製品開発の発展上にあり、情報システムとは分離した形で進められてきた。当初は、IT部門が関与しない例も多かった。IT部門に担当があっても孤立しがちだった。

しかし、事業の視点で業務プロセスを見れば、そこに情報システムと製品・サービスのシステムとが揃って存在することは当然である。少なくとも、業務プロセス上に双方が位置付き、データの接点を持たなければならない。

まして、プロセスのリアルタイム性が増し、データを使ったより高度なサービスを実現するようになれば、製品・サービスと情報システムの密着度は高くなる。だからといって、情報システムと製品・サービスを直に密結合することは適切ではない。求める特性が違い、多様性や変化の頻度が異なる。

そこで、情報を基点に両者を統合し、それぞれに自律性を保ちつつ、業務プロセスの一貫性を確立するという策になる。これによって、IT部門が担う業務プロセスは顧客と事業の最前線へと広く、深く拡大する。

M2MとIT部門
実は身近な「3つの関わり」

M2Mのシステムはこれまで、製品・サービス関連の取り組みが中心だった。実証実験で一部を対象に特別な体制を組むこともあった。大半のIT部門にとって、M2Mは縁遠い存在だ。

しかし、製品・サービスのシステムが業務プロセスに一体化するように、M2Mのシステムも業務プロセスに位置付く。IT部門にとっては、M2Mのシステムを直接担当するか否かに依らず、M2Mは「プロセスを描けば自ずと入ってくる」対象なのである。

M2Mの方も変化している。かつてはマシン間をつなぎ、データを集配信し、効率的に運用をするといった限られた用途にとどまっていた。これなら、マシンの延長線で考え、必要部分を情報システムと連動するだけでよい。しかし今は、M2Mの実現像は多様で、事業と強く結びついている。それだけ業務プロセスとの関わりは強く、情報システムの技術との共通性が高い。

今日、M2MはIT部門にとって案外身近で、重要度の高いテーマである。IT部門とM2Mの間には、大きく3つの関わりがある。ひとつめは、ここまで述べた「業務プロセスとの関わり」。事業の視点で業務プロセスを描けば、M2Mはその一部に含まれる(図2-1)。

図2-1 IT部門とM2Mの関わり
図2-1 IT部門とM2Mの関わり
事業視点でプロセスをみるとそこには業務システムだけでなく、人手や外部との連携など複数種の機能が含まれる(1)。M2Mはその一部であり、業務プロセス全体を効率化し、業務品質を高める武器となる。IT部門にはこの他にも、②M2Mのデータとシステム基盤、逆に、(3)アプリケーションの新しい入出力としてなど、複数のM2Mとの関わりがある。

これはWeb上の顧客向けサービスが業務プロセスに含まれるのと限りなく近い。自動販売機のM2Mを考えるとよく分かる。事業の最前線にあって、発生時点でデータを入力し、サービスを受ける。機能とシステムの位置づけが等しい。ただし、動作の方向性やデータ処理の所在はそれぞれに異なる。

人が関与せず、センサーで状態を探知し通知するとか、マシンがデータに基づき自律的に動作をする例も全体像で見ると同様の位置づけになる。

2つめは「マシン側からの関わり」だ。従来からのM2Mの取り組みに、情報システムの技術を合流する。現在のM2Mはインターネット上にあり、そのシステム構成はモバイルのシステムに等しい。セキュリティや認証、通信帯域、データ処理、冗長性などモバイルで課題となることはそのままM2Mでも争点となる。当然、M2Mの経験が情報システムにも活きる。データ関連などの共有や統合が必要な部分もある。

逆に言えば、M2Mの進行には情報システムで培ってきた技術と資産が役に立つ。M2Mを踏まえ、企業全体の基盤をどう描き、M2Mをどこに位置づけるのか。人材を含むIT資産の最適化には、IT部門の役割が大きい。

M2Mのシステム構成
技術の進化がM2Mを加速する

3つめは、情報システムの「デバイスとしての関わり」である。アプリケーションの入出力として、M2Mを適用する。M2MにはRFIDやセンサー、カメラなどの入力方式を含む。またマシン側の自動制御や処理もある。これらを使って、人手への依存度を下げる。

情報システムにはどうしても人手による入力が要る。管理レベルを上げれば、入力負担が増す。これを重複処理の排除やEDIなどで解消してきたが限界がある。M2Mはここを乗り越える策になる。しかも、手作業では不可能な粒度と頻度でデータを収集し、人が入れない場所や場面でデータをとる。画像やセンサーの反応などデータの種類を広げることもできる。

M2Mは大がかりなシステムだけではない。アプリケーションのデバイスとして、特定部分に使う形もあるのだ。

M2Mのシステムは大きく5つの要素でできている。(1)デバイスからの入力、(2)通信とセキュリティ・認証、(3)データ処理、(4)データの分析、(5)フィードバックとアクション。

ここにきてM2Mの利用が一気に加速しているのは、技術が進化し、M2Mの実用性が高まったためだ。カメラやセンサー、位置情報、モバイル機器などのデバイス。無線通信、そしてビッグデータ。列車や設備などの制御系にも、小さくて高性能の機器とセンサーなどの精度が高まったことが寄与している。費用の低下も大きい。

しかも今は、市販の製品を組み合わせて、専用機と同等の機能を実現することができる。低価格で高機能なコンシューマ向けの機器によって、M2Mはぐっと身近なものになった。

センサーやカメラ、位置情報などの技術を手軽に取り込める。青果物のコンテナに匂いセンサーをつけ、鮮度を管理、熟成しすぎないようにアラームを発している例がある。センサーをモバイル機器につけ、サーバーと通信する。同様の取り組みは数限りない。

用途次第では、想像以上に手軽にM2Mを実現することができる。制御系などの厳格なシステムでも、プロトタイプがぐっと容易になっている。

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