[ザ・プロジェクト]

販売データ分析にインメモリーBI導入 検討段階では150もの項目をチェック─小岩井乳業

2012年3月19日(月)川上 潤司(IT Leaders編集部)

高額の費用をかけてBIを導入。ところが、複雑な操作がユーザーの利用意欲をそいでしまったがゆえに死蔵している企業は少なくない。小岩井乳業は目先の機能に踊らされず「シンプル、低コスト」という条件を満たす製品を選択。利用率の向上とコスト効果の一挙両得に成功した。 聞き手は本誌副編集長・川上潤司 Photo:的野弘路

鎌田出(いづる)氏
鎌田 出(いづる) 氏
小岩井乳業 経営企画部 情報システム担当 部長代理
1984年、小岩井乳業に入社。基幹系システムを中心に業務系システム全般、ネットワークを含むITインフラ全般の企画・開発・運用に従事。受発注システム構築や飲料事業統合、販売情報分析システム導入、情報セキュリティ基盤構築といったプロジェクトを手がけた。2006年5月から現職。経営課題に直結した情報システム部門として全社のIT戦略を統括している。

 

齊藤淑(としやす)泰氏
齊藤 淑泰(としやす) 氏
小岩井乳業 経営企画部 広報担当 部長代理
1988年小岩井乳業に入社。首都圏・中部・盛岡の各支店で、消費者との接点である個店から量販店本部、エリア統括まで幅広く経験。その後、最前線の現場での体験を生かし、営業戦略策定・推進に携わる。2011年10月から現職。経営全体からの視点で、社内外に「小岩井だからこそできること」を伝える活動に従事している。

 

─BI基盤を刷新したそうですね。

鎌田:はい。AS/400上の基幹システムから日々の販売実績データをロードし、分析するシステムです。2011年1月から正式運用を開始し、ここへ来て利用が軌道に乗ってきました。営業部門を中心に、営業統括や経理、製造、マーケティング部門の担当者が使っています。ユーザー数は、経営層を含めて100人ほどです。

─では順にお聞きします。以前からBIを使っていたんですよね?

鎌田:ええ。2005年にCognos Power Playを用いたシステムを導入し、利用していました。

─今回、それを刷新した理由は。

鎌田:サーバーとDBがともに保守サポート切れを迎えたからです。

─なるほど。検討を開始したのは?

鎌田:サポート切れに先立ち、2009年にどんな製品があるのかを調査し始めました。インターネットで検索したり、付き合いのあるIT企業に紹介してもらったり。ベンダーに直接、話を聞くこともありました。

─ここ数年、様々なBI製品が登場しているだけに、なかなか骨の折れる作業だったと思います。それで?

鎌田:いろいろ情報収集をしたうえで、35ページほどのRFPを作成。「ここは」と思う10社に提案を依頼しました。2010年6月のことです。

─35ページに及ぶRFPのエッセンスを教えてください。

鎌田:まず、使い勝手がシンプルであることです。というのも、PowerPlayは多機能すぎて使い切れなかったんです。技術的に優れていることは分かるけれど、難しすぎて当社のユーザーはついていけなかった。

齊藤:大部分は商品別やエリア別といったごく単純な集計に使うだけで、せっかくの機能を使いこなせるユーザーは限られていました。

─ドリルダウンとかドリルスルーとか、そういうレベルで使いこなしている人はいなかった?

鎌田:ワンクリックまでなら何とかできるんです。でも、そこから先に進めない。例えば、あらかじめ定型で用意している商品別の売上レポートから、地域別の売り上げに掘り下げることはできる。しかし、そこから自分の取引先だけ抽出したり、ある条件で抽出したデータの合計値を出したりはできない。

─利用シーンが固定化されていた。

鎌田:そういうことです。詳細な分析がどうしても必要という場合は、分析スキルの高い人に「こういう資料を出しといて」と頼む。そんなケースが散見されました。

─スキルのばらつきが作業の偏りを生んでいた、と。齊藤さんは当時、営業部門に所属していたんですよね。どうでしたか?

齊藤:…正直、頼んでいたほうでした(笑)。その一方で、帳票を作ることが仕事と勘違いする担当者がいたことも問題でした。分析結果から何らかの気づきを得て、次の行動を起こすべきなのに。

鎌田:高度なスキルがなくても使えるシステムであれば、こうした問題は起きないはず。そこで、新システムにはシンプルさを第1に求めました。

4製品を150の視点で点数化
ユーザー主体の製品選定

─ほかに今回のシステム刷新で狙ったことは。

鎌田:運用負荷の低減です。Power Playの場合、データマートやデータキューブを作成するためのDBサーバーが2台必要でした。1台では、一晩で処理を完了できなかった。加えて、Webサーバーとレポートサーバーを設置しなければなりませんでした。

─サーバー4台という構成を採る必要があった。

鎌田:そうなんです。このほか、ストレージとしてテープライブラリ2台もありました。自社のマシンルームでサーバーを含むこれだけの機器を運用する負荷は決して小さくない。もっと小規模なハードウェア構成にしたい。これも、システム刷新における大きな要件でした。

─新システムに何を求めたかは分かりました。それに対して、10社から提案が集まった。

鎌田:はい。それらを吟味した結果、まずは4製品に絞りました。

─4製品とは。

鎌田:Cognos 8、Cognos Express 、Oracle Business Intelligence、Qlikviewです。

─そのなかから、どうやって選んだ?

鎌田:比較項目を用意し、点数化しました。導入費用やランニングコスト、画面の操作性、マスターメンテナンスのしやすさなど約150項目をピックアップしたんですよ。

─プロジェクト内で議論しながら採点した?

鎌田:いいえ。プロジェクトメンバー1人ひとりが個別に採点し、その合計点が高いものを優先したんですよ。

─メンバー構成は?

鎌田:営業部門から2人、営業マネジャーが1人、経理担当者が1人、システム部門から3人の合計7人です。

─採点には、結構時間をかけたんですか。

鎌田:1カ月くらいでしたね。

─わずか1カ月で150項目を4製品分、採点した。メンバーは大変だったでしょう。

鎌田:そうですね。本業のかたわらですから、苦労を掛けたと思います。

─それで最終決定に至ったのはいつ?

鎌田:2010年8月です。アシストとコベルコシステムが共同で提案したQlikViewに決定しました。営業や経理部門から参加したメンバーの受けがよかった。

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
  • 3
バックナンバー
ザ・プロジェクト一覧へ
関連キーワード

小岩井乳業 / 製造 / 食品 / 飲料 / インメモリー / BI / QlikView

関連記事

トピックス

[Sponsored]

販売データ分析にインメモリーBI導入 検討段階では150もの項目をチェック─小岩井乳業高額の費用をかけてBIを導入。ところが、複雑な操作がユーザーの利用意欲をそいでしまったがゆえに死蔵している企業は少なくない。小岩井乳業は目先の機能に踊らされず「シンプル、低コスト」という条件を満たす製品を選択。利用率の向上とコスト効果の一挙両得に成功した。 聞き手は本誌副編集長・川上潤司 Photo:的野弘路

PAGE TOP