[イベントレポート]

畜産の”M2M”、大分のベンチャーが全国展開へ─MCPC award 2012で審査委員長特別賞を受賞

2012年4月23日(月)IT Leaders編集部

モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)は4月20日、「MCPC award 2012」を開催。グランプリ候補5社(組織)がノミネート講演を行った。

「畜産の世界にM2M(マシン・ツー・マシン)、より正確にはM2A(マシン・ツー・アニマル)を持ち込み、牛の体温管理を遠隔管理できるようにした。牛がいつ分娩するかを知ることができ、牧場主は必要な措置をとれる。その結果、何もしなければ4%の死産率を1%以下に下げることができた。『たかが体温、されど体温』でもある」--。

モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)は4月20日、「MCPC award 2012」を開催。グランプリ候補5社(組織)がノミネート講演を行った。筆者は、そのうち2つしか聴講できなかったが、それでも内容は十分以上に面白く、かつユニークだった。冒頭のコメントはその1社であるリモート(本社大分県別府市)の宇都宮茂夫社長が語ったもので、同社は審査委員長特別賞を獲得した。リモートの「M2A」とはどんな取り組みなのか、中小企業賞を獲得した別の1社の習志野台整形外科のノミネート講演と併せて報告する。

“Machine to Animal”の発想で牛の体温管理を遠隔管理
死産率の劇的な改善に取り組む

リモートで面白いことの1つは60歳前後と見られる宇都宮氏の経歴。氏は農業高校を卒業後、家業である農家を継いだが、40年前だけにハードな肉体労働の割には儲からず、リスクも大きい。10年ほどで見切りをつけて日本テキサスインスツルメンツ(TI)に入社し、半導体の開発業務などに20年以上携わった。50歳のころ日本TIがリストラを実施。管理側でリストラする立場だった氏は、道義的な責任を感じて退社した。10年ほど前に再び農業(畜産)の世界をのぞいてみると「何も変わっていないことを知った」という。

ここで農業に関わる経験と問題意識がITと結びつく。氏は家畜の分娩予知システムの開発に着手し、牛の体温を遠隔監視するシステム「牛恩恵(ぎゅうおんけい)」に結実した。これは自社開発した温度センサーをメス牛の膣に装着。1分に1回程度の頻度で牛の体温を計り、電池残量などの情報とともに専用受信機経由で、リモートに設置した監視サーバーに集約するものだ。

「妊娠した牛の体温は分娩直前になると下がるので、例えばメス牛の”花子”が明日、子を産むという予知通報を牧場主に出せる。すると牧場主は分娩直前から牛の世話に集中できる」(同)。牧場主に代わって体温を監視することで、分娩のリスクを減らすわけだ。子牛が一頭死ぬと親牛のえさ代など35万円ほどの損失になるというから、メリットは大きい。

ではなぜ、牛恩恵のようなセンサー・ベースのシステムが必要なのか。牧場主はなぜ、自ら牛の体温管理をしないのか。宇都宮氏は2つの理由を挙げる。1つは「豚は妊娠期間が114日プラスマイナス1日とほぼ決まっている。しかし牛は280日プラスマイナス10日とかなり幅がある」こと。最大で20日間、人が分娩の始まりを監視するのは現実的ではない。

もう1つが牛を巡る環境の変化だ。「昔、牛は機械の代わりであり、重労働を担っていた。その分、牛は運動をしていたし、生まれる子牛も小さかったので、分娩リスクは少なかった。ところが現在の主流である肉牛の生育は牛舎内で行うので運動しないうえ、品種改良で子牛の大型化が進んでいる。さらに多頭飼いなので注意が行き届かない。最近では、牛にも育児放棄があるので気付いたら生まれたばかりの小牛が死んでいるケースが増えている」。

だからこその牛恩恵であり、現在、日本全国の170の牧場と契約済みだ。「全国の牧場数からすると、170というのは普及の初期段階。理解を進めるためにも現在は無償で温度センサーを貸し出し、効果を確認したら買ってもらうようにしている。170の牧場の解約はゼロ」(同氏)。今後は牛だけではなく競走馬(サラブレッド)の分娩用に展開したり、鳥インフルエンザをいち早く発見するためニワトリ向けの温度センサー、ハウス(温室)用の温度監視などにも展開する計画という。

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