[市場動向]

OpenStackプライベートクラウドは「自社構築」から「マネージドサービス利用」へ―OpenStack Summit Boston

2017年5月10日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

2017年5月8日(米国現地時間)、米マサチューセッツ州ボストンでオープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」のユーザー/開発者コンファレンス「OpenStack Summit Boston 2017」が開幕した。2010年の初版リリースから7年、領域の拡大と機能拡張を重ねた結果、プロジェクトの巨大化・複雑化が極まり、“並のユーザー”には扱いにくいという課題を抱える。初日の基調講演では、利用を広範に促したいOpenStackファウンデーションから課題解決の提案がなされた。(IT Leaders 編集委員 河原 潤=ボストン)

OpenStackの先進事例がいずれも目標に設定した“3つのC”

 5月にしては肌寒い晩春のボストンで、OpenStack Summit Boston 2017の幕が開いた(写真1)。前回開催のBarcelona(2016年10月、スペイン・バルセロナ)までは、Summit開催の前週にOpenStackコアの新バージョンが発表されるのが通例だったが、第15版となる「Ocata」は2月22日にリリース済みである。リリースから2カ月以上経過したタイミングで、併催の「Design Summit」(OpenStack本体の設計・開発に特化したコンファレンス)に多数のフィードバックが寄せられることを意図した間隔設定だ。

写真1:OpenStack Summit Boston 2017の会場となったハインズ・コンベンションセンター
写真2:OpenStack Summit Boston初日のホスト役を務めた、OpenStackファウンデーションのエグゼクティブディレクター、ジョナサン・ブライス氏

 初日の基調講演では毎回、OpenStackとクラウド基盤にまつわる全体動向、OpenStackファウンデーションの最新ビジョンが示される。ここでOpenStackファウンデーションが発信するメッセージは、もちろん開発者・開発企業やパートナーベンダーにも向いているが、OpenStackのビジネス活用を真剣に検討している企業により訴えかける内容になっている。前回のBarcelonaでは、OpenStackのインストールベースが、通信キャリアやサービスプロバイダーなど大規模なクラウド基盤を擁する事業者のみならず、中堅・中小を含む一般企業での採用が加速していることがアピールされた(「世界はOpenStackで動いている」と企業採用の加速をアピール―OpenStack Summit Barcelona)。

 Barcelonaと同様、インストールベースの「数」のアピールもあったが、今回、Bostonの主題はOpenStackを活用したプライベートクラウド基盤構築の「方法論」に置かれた。オープニングのステージに立ったOpenStackファウンデーションのエグゼクティブディレクター、ジョナサン・ブライス(Jonathan Bryce)氏(写真2)は、先進・先行事例から導き出されたプライベートクラウド基盤構築・運用のベストプラクティスを紹介しつつ方法論を説いた。

 「先進的なIT組織は、OpenStackの採用にあたって“3つのC”のいずれかをプロジェクトのゴールに設定している。そのうえで、パブリッククラウド/プライベートクラウド間のワークロード配置に関して、非常に洗練された手法を用いている」(ブライス氏)

写真3:OpenStack先進事例の共通項である“3つのC”

 3つのCは、(1)性能・機能(Capabilities)(2)コンプライアンス(Compliance)、(3)コスト(Cost)のことだ(写真3)。ブライス氏は1つ目のCを説明するのに、エッジコンピューティングモデルのIoTリアルタイム処理システムをマネージドサービスとして利用する米ベライゾン・コミュニケーションズの事例を挙げた。「OpenStackの性能面でのアドバンテージが表れた事例と言える。膨大な数のモノ(デバイス)から大量のデータを収集するIoTシステムの要件に対して、従来の中央集約型コンピューティングモデルでは到底追いつかない」(ブライス氏)

写真4:米国陸軍サイバースクール少将/サイバーテクニカルカレッジディレクターのジュリアナ M.ロドリゲス(Julianna M. Rodriguez)氏は、OpenStack採用で得られた顕著なコスト削減効果を説明した

 2つ目のCは、医療データや設計開発データなど機密性・秘匿性の高いデータをセキュアに管理できるプライベートクラウドが担うことを指す。ブライス氏は、米ラックスペース(Rackspace)が提供するマネージドサービスを契約してプライベートクラウドを活用するGEヘルスケアを例に挙げて説明した。

 3つ目のCは、OpenStackの採用で得られるITインフラコストの削減効果のことだ。ここでは、自動リソース管理を可能にする「OpenStack Heat」テンプレートを活用して、教育プログラムサービスを構築するのに数100万ドルのコスト削減に成功した米国陸軍サイバースクール(US Army Cyber School)の取り組みがリファレンスとして紹介された(写真4)。

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