[市場動向]

OpenStackプライベートクラウドは「自社構築」から「マネージドサービス利用」へ―OpenStack Summit Boston

2017年5月10日(水)河原 潤(IT Leaders編集委員/データセンター完全ガイド編集長)

2017年5月8日(米国現地時間)、米マサチューセッツ州ボストンでオープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」のユーザー/開発者コンファレンス「OpenStack Summit Boston 2017」が開幕した。2010年の初版リリースから7年、領域の拡大と機能拡張を重ねた結果、プロジェクトの巨大化・複雑化が極まり、“並のユーザー”には扱いにくいという課題を抱える。初日の基調講演では、利用を広範に促したいOpenStackファウンデーションから課題解決の提案がなされた。(IT Leaders 編集委員 河原 潤=ボストン)

マネージドプライベートクラウド利用の合理性

 “3つのC”に基づくベストプラクティスは、2010年のファーストリリース以来、拡張され続けてきたOpenStackの、プライベートクラウド基盤としての活用方法に変化が生じていることを示している。ブライス氏は、「我々は今、クラウドの変曲点に立っている」と述べ、プライベートクラウド基盤技術の世代遷移を解説した(写真5)。

写真5:プライベートクラウド基盤技術は第1世代を終えて第2世代に

 第1世代は、イーベイやヤフーのような大手サービス事業者が先陣を切って推進した大規模クラウド環境の展開だ。クラウドの登場以前から仮想化プラットフォームとして断トツのシェアを持つVMwareが主役であり続けたが、この時期にEucalyptus、CloudStack、そしてOpenStackが登場している。

 次の第2世代はすでに始まっている。コンピュート/ネットワーク/ストレージのデータセンター全域でリソースの仮想化が進み、多くの企業がハイブリッド/マルチクラウド環境の中核となるプライベートクラウドに取り組んでいる。ここ数年は、IoTやAI、ディープラーニングといったデジタルビジネスのためのワークロードに対応すべく、PaaS(Platform as a service)、コンテナ、ベアメタルなどのアプローチが注目を集めている。第2世代の主役級技術としてブライス氏は、OpenStack、Cloud Foundry、Kubernetes、Apache Mesosの4つを挙げている。

 ここでブライス氏は、第2世代のOpenStackでは「Remotely Managed Private Cloud」、つまり、顧客に代わって運用も代行するマネージドサービスとして提供されるホステッドプライベートクラウドがよりポピュラーな存在になっていくはずだと強調した(写真6)。上の3つのCの事例で言うと、1つ目と2つ目がRemotely Managed Private Cloudに相当する。

 「いわば、PC as a Service(サービスとしてのプライベートクラウド基盤)であり、オンプレミスでの“構築”から、信頼できるOpenStackパートナーが運用管理込みで提供するホステッドプライベートクラウドの“利用”へのシフトが確実に起こっている」(ブライス氏)

写真6:OpenStackファウンデーションは、ホステッドプライベートクラウド(ユーザーが運用する形態とマネージドサービスの形態)の積極的な利用を促した

 背景には、(事業者ではない)ユーザー企業の大半にとって、オンプレミスのプライベートクラウド基盤としてOpenStackを採用し構築運用することのハードルの高さがある。性能・機能数の向上の代償として、今のOpenStack環境は複雑化が進行する一方だ。自社で構築したOpenStack環境の各種アップデート/メンテナンスに要する労力やコストは、数年前の比ではなくなっている。

写真7:近年はマネージドサービスの提供に経営資源を集中させているミランティス。共同創業者でCMOのボリス・レンスキー(Boris Renski)氏は「顧客のエンタープライズソフトウェアと密に統合されたマネージドオープンクラウドを提供していく」とアピールした

 OpenStackクラウド基盤のマネージドサービスと言えば、上述のラックスペースや米ミランティス(Mirantis、写真7)が代表格だ。こうしたベンダーにOpenStack環境の運用保守を委ねることで、企業はIT部門のOpenStackスキルや人員数にかかわらず、OpenStackがもたらすビジネス価値(今回で言うと3つのC)を、より合理的に享受できるようになる。

 「PC as a Serviceのモデルでは、企業はもはや何人ものITインフラ管理スタッフチームを雇う必要がなくなる。同時に、OpenStackのオープンなAPIと競争力のあるエコシステムからメリットを得て、既存のITインフラと比較して大幅なコスト削減を実現できるようになる」(OpenStackファウンデーションのプレスリリース声明文より)。この新基軸が今後、魅力的なサービスの増加を伴って浸透していけば、IT部門の人員数やスキルの事情から、OpenStackの採用を見送ってきた企業も考えを改めるかもしれない。

関連キーワード

OpenStack / プライベートクラウド

関連記事

OpenStackプライベートクラウドは「自社構築」から「マネージドサービス利用」へ―OpenStack Summit Boston [ 2/2 ] 2017年5月8日(米国現地時間)、米マサチューセッツ州ボストンでオープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」のユーザー/開発者コンファレンス「OpenStack Summit Boston 2017」が開幕した。2010年の初版リリースから7年、領域の拡大と機能拡張を重ねた結果、プロジェクトの巨大化・複雑化が極まり、“並のユーザー”には扱いにくいという課題を抱える。初日の基調講演では、利用を広範に促したいOpenStackファウンデーションから課題解決の提案がなされた。(IT Leaders 編集委員 河原 潤=ボストン)

PAGE TOP