[調査・レポート]

日本企業の視野は短期的・対症療法的、RPAは使うが業務は変えない―KPMGのCEO調査から

2019年7月17日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

KPMGコンサルティングは2019年7月17日、説明会を開き、同社がグローバルで実施したユーザー調査「KPMGグローバルCEO調査2019」の結果を紹介した。日本企業のCEOはデジタル時代のリーダーとしての自覚が低く、業務へのAIの導入が遅れている。また、RPAによる業務の自動化は進んでいるものの、根本的な業務改革は遅れている。

写真1:KPMGコンサルティングで代表取締役社長兼CEOを務める宮原正弘氏写真1:KPMGコンサルティングで代表取締役社長兼CEOを務める宮原正弘氏
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 KPMGコンサルティングは、企業のCEO(最高経営責任者)に対する調査「KPMGグローバルCEO調査2019」を、2019年1月8日から2月20日にかけて実施した。グローバル11カ国1300社(日本は100社)から回答を得た。

 説明会では、KPMGコンサルティングで代表取締役社長兼CEOを務める宮原正弘氏(写真1)が、調査結果のサマリー8項目と、グローバルと比べた日本企業の特徴を説明した。

 日本企業に特徴的な点の1つが、レジリエンス(立ちはだかる問題を解決して、ビジネスを継続する力)の姿である。日本企業のレジリエンスは保守的であり、目先の問題を対症療法的に解決する傾向にある。中長期的な視野に立ったゴール設定がない。失敗を許容する文化の醸成が必要だ、と宮原氏は指摘する。

 レジリエンスに関連した調査結果として、日本企業はデジタル時代のリーダーとしての自覚が足りない。「自社の技術戦略を自らリードしている(同意する割合)」は、米国の89%に対して日本は77%と低い。こうした状況を反映して、自社業務へのAIの導入も遅れている(図1)。日本企業にとってのAIは試験的な導入に留まっており、実用化の段階まで達していない。

図1:日本企業にとってのAIは試験的な導入に留まっており、実用化の段階まで達していない(出典:KPMGコンサルティング)図1:日本企業にとってのAIは試験的な導入に留まっており、実用化の段階まで達していない(出典:KPMGコンサルティング)
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 宮原氏は、別の調査である「2019 CIOサーベイ」を引用し、レジリエンスに関連したデータとして、日本企業が目先の問題ばかりに目を奪われていることが分かるデータを紹介した(図2)。日本企業は、業務の自動化は進んでいるが、根本的な業務改革は遅れている。日本企業では、既存の業務を変更することなく人の作業を代行できるRPA(ロボットによる業務自動化)の導入が進んでいるだけであり、お金も手間もかかる業務の改革は進まない。

図2:日本企業は、業務を変えずに業務を自動化する試み(RPA)で進んでいるが、根本的な業務改革は遅れている(出典:KPMGコンサルティング)図2:日本企業は、業務を変えずに業務を自動化する試み(RPA)で進んでいるが、根本的な業務改革は遅れている(出典:KPMGコンサルティング)
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 CEO調査結果のサマリー8項目の内容は、表1の通りである。

表1:CEO調査結果のサマリー(出典:KPMGコンサルティング)
  調査結果の項目 調査結果のサマリー
01 世界経済の見通しと自社の成長見通し 世界経済の見通しへの警戒感が強まっている一方、自社の成長については自信を持っている
02 リスク要因の変化 外的要因ながら「環境/気候変動リスク」への懸念が高まる。テクノロジリスクは依然として上位に
03 経営者の変革に対する意識 ビジネスの慣行や常識を壊すことにためらいが見受けられる
04 成長戦略施策の変化 外部との提携は重要と認識しつつも、米国に比べると組織影響度の高いM&Aへの意欲が低い
05 保守的なレジリエンスから真のレジリエンスへ 中長期的な視点のゴール設定ができておらず、短期的・対症療法的になっている
06 組織レベルでのデジタルトランスフォーメーション デジタル時代のリーダーとしての自覚が他国と比べて低く、かつデジタル戦略へのコミットメントが低い
07 サイバーセキュリティへの対応 サイバーセキュリティを競争優位性を生み出す重要な戦略として捉えていない
08 デジタル人材の確保・要求の促進 デジタル人材の有用性の認識が高まっているが、採用や育成が思うように進んでいない
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