[五味明子のLock on!& Rock on!]

コマツのIoT活用とローソンのビッグデータ活用に見る「現場の見える化」の重要性

2017/05/08 - 05/12

2017年5月15日(月)五味 明子(ITジャーナリスト)

ビッグデータという言葉が語られだしてから数年が経過し、国内企業からも先進的なデータ活用事例を聞く機会が増えてきた。今回はそうしたユースケースの中から、スタートアップ企業ながらも国内IoT市場を牽引する存在となったソラコムが発表した事例と、5/10~12にかけて行われた「2016 Japan IT Week 春」の特別講演にてローソンが紹介したビッグデータ戦略について紹介する。

コマツが「スマートコンストラクション」で仕掛ける土木現場の改革

ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏

 「ソラコムのお客様の数は6000社を超えました」──。2017年5月9日、プレス向け説明会(http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1059349.html)の席でソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏はこう発言した。2015年9月に最初のIoT通信サービスである「SORACOM Air」をリリースして以来、わずか2年足らずで顧客数6000社という数字を達成したことも驚きだが、それ以上に「ソラコム自身が考えもしなかったようなケースでの採用が増えている」(玉川氏)という点が非常に興味深い。また、最近では国内だけではなく、グローバルSIM(Air SIM)の発表以来、米国や欧州での導入実績も着実に積み重ねているという。

6000社を超えたソラコムの顧客事例。コマツ、キヤノン、シャープ、コニカミノルタなど大企業の名前も多い
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 その中でも目を引くのが、コマツが展開するICT建機による“未来の現場”のためのソリューション「スマートコンストラクション」でのSORACOMプラットフォームの活用だ。スマートコンストラクションは、土木工事現場の労働力不足やオペレータの高齢化に伴う安全性やコスト、工期に関連する課題を解決するために、テクノロジーのパワーを活用して現場の効率化を図ろうとするコマツの取り組みだが、その中心となる存在が“ICT建機”である。個々の建機にソラコムが提供するAir SIMを搭載し、SORACOM Gateというサービスを介してこれらの建機と社内のVPCを閉域網で接続、シームレスでセキュア、かつ高速な通信環境を実現している。

ソラコムが発表したコマツの「スマートコンストラクション」におけるIoT事例。建機にソラコムのSIMカードが搭載されており、SORACOM Gateを通じて顧客側のシステムとシームレスに接続できる。コマツは自社だけでなく、土木建設業界全体にプラットフォームを波及させたい考えだ
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 土木工事に限らず、日本において、少子高齢化による労働人口の減少に悩まされている現場は枚挙に暇がない。その解決策の一つとして期待されるのがICTによる効率化だ。コマツの場合、スマートコンストラクションを進めていくことで、ブルドーザなどの建機のオペレーションを効率化するだけでなく、建機から吸い上げたIoTデータをもとに現場の状況をリアルタイムにアップデートすることも可能になる。これまで見えなかったデータ、取れなかったデータがリアルタイムに把握できるようになることで、現場のオペレーションがいかに効率化できるのか。コマツのIoT事例はある意味、少子高齢化時代における“現場のあり方”の方向性を示しているといえる。

ローソンが挑む年間66ペタバイトに及ぶデータのフル活用

 5月10日~12日にわたって東京ビッグサイトにて開催された「2016 Japan IT Week 春(主催: リードジャパン)」は、来場者数が3日間で8万8000人を超え、盛況のうちに幕を閉じた。展示会場だけでなく、IT業界のトップランナーによる基調講演や特別講演にも多くの聴講者が集ったが、ここでは5月11日に同時開催展の一つである「ビッグデータ活用展」の特別講演に登壇したローソン 執行役員 オープンイノベーションセンター センター長 経営戦略本部 副本部長 白石卓也氏のプレゼンから印象に残ったひとことを紹介する。

ローソン 執行役員 オープンイノベーションセンター センター長 経営戦略本部 副本部長 白石卓也氏

 「“見える化”。使い古された言葉だが、最近はこの見える化のレベルが変わってきていると感じる。POSデータだけに頼っていたころ、データから見えてくる実像は想像の域を出ないものだった。シーチキンおにぎりを買ったお客様がいたとして、その方は本当はシーチキンサンドイッチを買いたかったのに、在庫がなくておにぎりを買ったのかもしれない。でも、POSデータから分かるのはシーチキンおにぎりを買ったお客様がいるということだけだった。だが現在は、データの取得方法も多様化してきた。これまでのような想像をベースにした見える化から、よりリアルで実効的な見える化へと近づいていると感じる」──。

 前述のコマツの事例と同様に、小売の現場もまた少子高齢化による労働人口の減少に悩まされている。ここでもカギとなってくるのがICTによる現場の効率化だ。ローソンは現在、従来のPOSデータに加え、RFIDタグによる商品管理やセンサーカメラによるデータ取得、ロボティクスの活用、AIチャットボット「あきこちゃん」の活用などを通して、多種多様なデータの取得とその活用に取り組んでいる。全国の1万3000店舗からの年間取得データ量は66ペタバイトにも達するというが、これらの取り組みを進めていくことで「これまで見えなかったデータがはっきりと見えるようになってきている」と白石氏は強調している。

 もちろんこれらのデータ活用に関しては課題も多く、試行錯誤の日々が続いているという。だが白石氏は「こうした取り組み、データを積極的に活用していくアプローチを積み重ねていかないと、日本の生産性は上がらないと確信している」とも語っており、現在はオープンイノベーションセンターを設立して、AIやロボティクス、データ分析などに関する研究を推進している。AIチャットボットはLINEと日本マイクロソフトとのコラボレーションの成果の一つだが、こうした他社との連携も積極的に進め、「ゆくゆくはローソンがデータ活用のプラットフォーマー的な存在になりたい」(白石氏)としている。

 多くの業界が抱える現場の悩みをICTのチカラで課題解決したい──。今までもこうした呼びかけは何度かあったが、いずれもソリューションを提供するITベンダーからのプロモーションが主だった。だが「現場が回らない」という悩みが深刻化するにしたがい、コマツやローソンのように生産性の抜本的アップに本気で取り組み、テクノロジーとデータのパワーをもってして、自らがプラットフォーマーになろうとする企業が現れ始めたのは国内産業の活性化にとって良い兆候だといえる。そしてこのトレンドが業種業界を超えて拡がっていくことを心から望みたい。
 

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