[市場動向]

人手不足で多忙の法務部門を救う「リーガルテック」、最新動向と活用事例

2022年5月25日(水)神 幸葉(IT Leaders編集部)

デジタルの時代、FinTechやInsurTech、AgriTechといった業界・分野ごとの先進IT活用が進む中、企業のコンプライアンスを司る法務部門/担当者が今注目しているのが「リーガルテック(LegalTech)」である。この分野のIT製品・サービスを提供するLegalForceが2022年5月16日に開いたプレス向け勉強会の内容から、法務を取り巻く課題や環境変化、リーガルテック製品が可能にすること、活用事例を紹介する。

「担当領域拡大も法務部門は4人以下」との回答が半数

 まず、どのぐらいの企業が自社に「法務部」を置いているのだろうか。企業内法務担当者によって組織される経営法友会の法務部門実態調査によると、回答企業のうち、資本金が1000億円を超える企業の95.3%が法務部門を設置している。対して、資本金5億円未満の企業は49.4%にとどまる(図1)。

 また最近では、法務を総務部門など他部門が兼任で担っている企業が増加傾向にあり、法務に携わる人・組織の裾野が広がってきているという。同調査では、法務部門の人員は回答企業の平均8.8人だが、約半数の企業が4人以下と回答している。

図1:企業法務の実態(出典:LegalForce、経営法友会)
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 LegalForceによると、法務の対象業務は多岐にわたる。基本の業務(機能)として以下を挙げている。

法務機能:契約審査、法律相談(法律問題、法令調査など)、訴訟、紛争(ステークホルダーとのトラブルなど)
コンプライアンス機能:コンプライアンス推進(規定、教育、モニタリング)、内部通報制度運営(改定公益通報者保護法保護法で重要度が増している)
コーポレートガバナンス機能:株主総会、取締役会、役員管理、株主管理、コーポレートガバナンス・コード(特に上場企業で強化傾向にある)、内部統制

 これらに加え、近年取り組む企業が増えているサステナビリティ関連でも、法務部門が担当する領域が広がっているという。

 法務部門を取りまく環境変化も著しい。同社によると、事業スピードの高速化や取引形態の複雑化、案件の高度化・専門化など、品質とスピードのバランスは多くの企業で経営課題となっているという(図2)。

図2:法務部を取り巻く環境変化(出典:LegalForce)
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 LegalForce 執行役員で法務担当の佐々木毅尚氏(写真1)は法務部門は伝統的に生産性よりも品質重視のマネジメント、スタッフも職人気質の人が多い傾向にあると指摘。「スピードが求められる時代にテクノロジー導入の必要性はわかっていても、何をどうしていいかわからないという声も多い」という。

写真1:LegalForce 執行役員 法務担当 佐々木毅尚氏

リーガルテックで法務部門の業務効率化、品質確保を図る

 上述のような法務部門を取り巻く課題や環境変化へのアクションとして、リーガルテック(LegalTech)に注目が集まっている。Legal(法律の)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、法務部門/担当者の業務効率化や法律サービスの利便性向上を目的に、最新のITを活用する取り組みや製品・サービスのことを指す。

 LegalForceによると、2015年頃から国内外で法務部門の業務に、電子署名や弁護士AIロボットなどのリーガルテックの導入が始まっていて、現在では、法務部門におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進において重要な位置づけにあるという。

 「法務DX」が求められる理由として同社は、法務の役割・機能の拡大やそれに伴う人材不足、コロナ禍における働き方の変革などを挙げる。佐々木氏は、「リーガルテックの製品・サービスを活用することによって、法務部門は、業務効率化による生産化向上、一定レベルの品質確保、情報収集チャネルの拡大などの効果を得られるようになる」と説明する。

 同社は、法務DXを推進するリーガルテック製品・サービスを、以下の3つに分類している。

●契約関連:契約書作成、契約審査、電子契約、契約書管理
●リサーチ関連:弁護士管理、判例検索、翻訳、書籍検索
●審査・登録関連:知財、登記、商材

 現在、これらに新規参入するITベンダーが増えているという。「電子契約については2020年、総務省、法務省、経済産業省から、その法的解釈を示すQ&Aが公表されてから。契約書管理については電子帳簿保存法改正によりデータで契約書管理ができるようになってから動きが進んだ」(佐々木氏)。

 例えば、法務部門の業務で大きな割合を占める契約関連業務は、案件受付から締結・管理まで複雑なフローになりがちだが、これを契約オペレーション全体で最適化/可視化する「契約ライフサイクル管理(CLM)」製品が登場している。LegalForceが提供するAI契約審査クラウドサービス「LegalForce」はその1つ。契約オペレーションにおける案件受付から締結までのフェーズを担う(図3)。

図3:AI契約審査/管理クラウドサービス「LegalForce」「LegalForceキャビネ」における契約ライフサイクル管理(出典:LegalForce)
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 使い方として、法務担当者がクラウド上に契約書をアップロードすると、大量の契約書データと弁護士の知見を学習した同社開発のAIモデルが契約書の自動レビューを実施する。その際、担当者は自社固有の修正方針や修正文例などのひな形を登録することで、自社基準を反映したレビューも可能になる。また、条文検索機能や契約書ひな形・書式集などを備え、契約作成に関わるデータを蓄積し、契約業務の品質向上と効率化を同時に実現するとLegalForceはアピールする。

 同社は「LegalForceキャビネ」というAI契約管理システムも提供している。自然言語処理/マシンラーニング(機械学習)を用いて、契約データベースを自動作成して締結済み契約書管理を行う製品である。

●Next:3社の事例─リーガルテック導入で契約書関連業務を改善

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