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[イベントレポート]

「プロセス変革」の始め方と「プロセスマイニング」への正しい理解

HeartCoreDAY2022 キーノート─プロセスマイニング協会 代表理事 百瀬公朗氏

2022年12月27日(火)鈴木 恭子(ITジャーナリスト)

デジタルトランスフォーメーション(DX)が待ったなしの経営課題となって久しい。しかし、実際に経営に資する具体的な推進が行えている企業は少数だ。その背景には「DXに対する誤解」がある。一般社団法人プロセスマイニング協会で代表理事を務める上智大学特任教授の百瀬公朗氏は、「DXとはデジタル化するだけではなく、デジタル化したデータを経営戦略に生かし、次の時代に向けたビジネスモデルの変革を推進するものだ」と強調する。本稿では、同氏が登壇したHeartCoreDAY2022(主催:ハートコア)のクロージングキーノートから、プロセスマイニングを活用したプロセス改革の進め方や経営戦略立案のポイントを紹介する。

「消費データ」と「資産データ」の違い

 あらゆる業務のデジタル化が進み、大量の行動記録データが蓄積されることで、従来、アナログではわからなかった詳細な業務作業が可視化されていく──。DX推進が喫緊の経営課題となる中、こうしたデータを活用して新たなビジネスや業務改善に取り組む企業も少なくない。しかし、プロセスマイニング協会で代表理事を務める百瀬公朗氏(写真1)は「大量の業務データがあるからといって、ビジネスができると考えること自体が間違いだ」と警鐘を鳴らす。

写真1:一般社団法人プロセスマイニング協会 代表理事/上智大学 特任教授の百瀬公朗氏(出典:ハートコア)

 百瀬氏はデータの捉え方には、「消費データ」と「資産データ」があると指摘する。消費データとは帳票レポートなどを作成するために使う「見たら終わりのデータ」を指す。一方、資産データとはさまざまなところで発生するイベントログなど、「業務の流れを把握するために役立てられるデータ」を指す。

 例えば、商品にRFIDタグを付けてデータを管理すれば、「購入」「在庫」「利用」「交換」といった「いつ、どこで、どのように製品が扱われているか」の記録が時系列で把握可能になる。「時間を軸とした経路データ=イベントログ」は、プロセスマイニングを実行する際に重要な要素となる資産データだ(図1)。

図1:プロセスマイニングでは、業務上のふるまいを行われた時間と共に記録したイベントデータを活用する(出典:近藤裕司著・百瀬公朗監修『プロセスマイニング 理解と実践』インプレス刊、2022年11月)
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 しかし、イベントログの重要性を理解している日本企業は少ないと百瀬氏は指摘。実際、RFIDタグをつけてもイベントログを取得していない日本企業は多いという。

 「イベントログの記録は業務履行の記録だ。一部のイベントログだけ取得しても業務履行プロセスは見えない。重要なのは、『イベントログは資産データ』であることを認識し、すべてのプロセスできちんと管理すること。管理されたイベントログを可視化してプロセスマイニングをすれば、次の改善に活用できる」(百瀬氏)。

 DX推進の一環として、AIやRPAなどの自動化ツールを導入して業務改善に取り組む企業は増加している。その際にもイベントログの取得は重要だと百瀬氏は説く。「AIやRPAは人間の“勘”が効かない領域である。そうした領域をどのように改善していくかのヒントは、イベントログにしかない」というのがその理由だ。

プロセスマイニング、最初に何をすべきか

 では、プロセスマイニングを用いて、実際にどのような手順でプロセス変革に取り組めばよいのか。百瀬氏は「イベントデータ収集から始めるのではなく、現場の従業員にヒアリングをして仮説を立てることが大切だ」と指摘する。

 「プロセスマイニングは、イベントログを蓄積・分析して資産データに昇華すればよいというものではない。もちろん、イベントログを管理することは重要だが、プロセスマイニングをデータ分析から始めると現場が抱える本当の課題を見落としてしまう」(百瀬氏)。

 百瀬氏はこう続ける。「従来の業務改善アプローチは、ヒアリングから得た調査結果のみを机上で検討し、実行に移していた。これに対してプロセスマイニングを使えば、ヒアリングの調査結果を基に仮説を立てたうえで、『現在何が発生しているのか』という現実世界を取り込んだ、データサイエンスによる科学的な改善が可能になる」(図2

図2:データサイエンスのアプローチ(出典:近藤裕司著・百瀬公朗監修『プロセスマイニング 理解と実践』インプレス刊、2022年11月)

 プロセスマイニングのアプローチで重要なのは、「トランザクションをつなげる」という考え方だ。特にDXを推進しようとしている企業は、新サービスやツールの導入で新たなプロセスが発生する。そうした変化をいち早く把握するためにも、膨大かつ多様なトランザクションデータをつなげてわかりやすく可視化・数値化する必要がある。そのうえで施策につながる議論を活性化し、改善アクションを起こすのだ。これにより、これまでの結果重視の分析手法から、プロセス重視の分析手法に移行できる。

 さらに百瀬氏は、「改善につなげるために必要な可視化とは、仕事の流れ(プロセス)を標準化し、標準とは異なる問題事象が発生した時にはすぐに気が付けるようにすることだ」とし、その重要性を以下のように説明する。

 「レポートを熟読したりダッシュボードを操作したりしないと問題が見えてこない状態は、可視化とは言わない。単なる数表やグラフといった可視化だけでは、改善につながるための議論を活性化できない」(同氏)

●Next:「測定があっての改善」を可能にするプロセスマイニング

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