[市場動向]

脳の健康度に応じた金融サービスへ─順天堂、IBM、グローリーが「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」を開発

三菱UFJ信託銀行の金融取引業務でパイロット運用を開始

2023年3月28日(火)神 幸葉(IT Leaders編集部)

順天堂大学、日本IBM、グローリーの3者が、高齢化社会における金融商品取引の課題解決で協業を始めている。最初の取り組みとなるのが、2023年2月28日に発表した「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」の共同開発だ。顧客認知機能推定AIを金融業務に特化して開発されたアプリとしては日本初となる。3月1日から三菱UFJ信託銀行4支店でパイロット運用を行い、同銀行他支店のほか、他金融機関、他産業にも展開していくという。

600以上の症例から脳の認知機能を推定

 順天堂大学、グローリー、日本IBMは、「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」を共同で開発し、2023年3月1日から三菱UFJ信託銀行4支店でパイロット運用を開始した。

 協業の背景として高齢化社会の問題を挙げている。高齢者にも当然、健康管理や資産形成サービスが求められるが、認知や判断などの能力は加齢と共に低下傾向にある。特に金融商品取引においては、そうした高齢者の困難を配慮したサービスの提供をどうするかが課題となっている。

 2021年8月には日本証券業協会の高齢顧客への勧誘による販売に関するガイドラインが改訂され、記憶力・理解力などの認知機能に応じて、高齢顧客対応時に必要だった手続きの一部が緩和された。日本IBM 理事 パートナーの先崎心智氏(写真1)は、「この改訂を1つの契機として、3者で共同研究をしてきた認知機能推定AIを活用し、金融業務に特化したアプリの開発が始まった」と説明した。

 順天堂大学は2018年、学内に「神経変性・認知症疾患共同研究講座」(注1)を設立し、脳の認知機能レベルを音声・表情等の自然データから推定するAIの研究開発を行ってきた。これまで累計600症例以上にわたる認知症を始めとした脳神経疾患患者や健常者への臨床試験を実施しているという。

注1:2023年3月現在、キリンホールディングス、三菱UFJ信託銀行、グローリーが参加している共同研究講座。日本IBMのAIおよびデータ解析技術を活用している。

 今回発表した「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」は、同研究室講座で蓄積した試験データに加え、「IBM Watson Speech to Text」をはじめとしたIBMのデータ解析技術と、グローリーの表情解析技術を用いて開発したものだ。

 認知機能推定AIを金融業務に特化したソリューションとして開発されたアプリは日本初だという。「高齢化が進む日本において、年齢に制限されるのではなく、個々の認知機能レベルに応じて資産運用をはじめとする適切なサービスを受けられる環境の創出を目指す」(先崎氏)としている。

写真1:日本IBM 理事 パートナーの先崎心智氏

顧客の認知機能を15段階で判定、商品の適合性を判断

 同アプリでは、顧客は音声指示に従って自分でタブレットの操作し、表情撮影とAIチャットボットとの会話を行う(写真2)。チャットボットは、表情撮影に対する感想や趣味などの雑談、投資に関する質問などを行う。自然文でのやり取りであるため、短時間で顧客に負担をかけることなく、状態を可視化。会話フェーズでは、「先行研究を参考にしながら、声の大きさや揺らぎ、質問に対する発話内容、語彙の多様さ、発言のつまりなどをチェックしている」(先崎氏)。そして、アプリは撮影した表情とAIとの会話から認知機能を推定し、金融商品の適合性判断を支援するための参考情報「脳の健康度」として提示する(図1)。

 判定結果は「認知症か否か」ではなく、認知機能のレベルを15段階で表示される。顧客の資産形成の相談に応じる金融機関の担当者は、同アプリで判定された顧客の認知機能のレベルを、金融商品の適合性判断の参考情報とするかたちだ。

●Next:他金融機関への業務適用も視野に入れた汎用性、道徳性を確保

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