[インタビュー]

データのサイロを解消し、業務プロセス/サプライチェーンと連動した情報管理を

オープンテキスト 代表取締役社長 反町浩一郎氏

2023年4月20日(木)末岡 洋子(ITジャーナリスト)

デジタルトランスフォーメーション(DX)のかけ声の下、さまざまな業務のデジタル化が進んでいるが、DXはデジタル化で終わりではない。データの活用、そこから洞察を得て、最終的に変革を図っていくのがDXだ。「デジタル化は進んだ。今後のカギは全社レベルの情報管理にある」と訴えるのは、カナダのEIM/ECMベンダー、オープンテキスト(OpenText)の日本法人で代表取締役社長を務める反町浩一郎氏である。同氏にこの分野の課題と必要なアクションを聞いた。

情報生成と情報分析の間にある情報管理

──オープンテキスト(OpenText)は、EIM(Enterprise Information Management)/ECM(Enterprise Content Management)の専業として知られている。近年はM&Aなどセキュリティの強化にも力を注いでいる。日本法人は設立から四半世紀が経緯したが、改めて現在のコア事業は。

反町氏写真1):構造化/非構造化や定型/非定型を問わず、あらゆる情報、データ、コンテンツ情報、プロセスを効率的に管理・自動化するためのソフトウェアやクラウドサービス。このEIM、情報管理の領域がコアであり続けている。

 ご存じのように、情報にはいくつかのフェーズがある。ERPなどの基幹システムのような情報生成のフェーズ、データアナリティクスやビックデータなどの情報分析のフェーズなどだ。オープンテキストが得意とするのは、その中間。データをいかに管理し、変換し、活用していくかに創業以来取り組んできた。この部分を専業とするソフトウェアベンダーは少なく、我々が確立した分野だと自負している。

写真1:オープンテキスト 代表取締役社長の反町浩一郎氏

 新しいアクションとしては、情報セキュリティ分野の強化がある。データをきちんと活用、運用、保護、変換するにあたり、セキュリティへの取り組みは欠かせない。米カーボナイト(Carbonite)や米ウェブルート(Webroot)の買収を通じて、エンドポイントセキュリティやフォレンジック、サイバーレジリエンスの対応強化を図っている。

 日本法人では、セキュリティ&データマネジメント統括事業部を立ち上げ、セキュリティの観点からのデータマネジメントを提供する体制を整えている。まずは、WebrootとCarboniteの両製品の既存パートナーと協働する。日本では展開していないすぐれたセキュリティソリューションを届けていきたい。

情報・データのサイロからの脱却が急務

──では、本題。ユーザーにとって情報管理の主要な課題は今、どの辺りにあるのか。

 社内の情報管理と社外の情報管理のそれぞれで課題がある。社内については、人事管理、顧客管理、会計、購買・調達などの各種システムを運用する中で、ビジネスプロセスやワークフローにコンテンツを連携させて管理していく必要がある。社外については、日本ではファクスのやり取りが残る企業が今も少なくない。求められる事業のスピードに対応すべく、サプライチェーンのデジタル化が求められている(図1)。

図1:OpenTextの情報管理プラットフォーム(出典:オープンテキスト)
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 顧客と話してみると、特に社内の情報管理で、情報やデータのサイロ化の問題に多くが悩んでいる。非効率はもちろん、データが一元化されていないために正確性やガバナンスが欠如する。サイロにもいろいろ種類があり、ある部門が持っているデータを他部門が簡単に共有できない部門間のサイロ、あるシステムのデータを他のシステムと連携できないシステム間のサイロ、それから従業員個人のサイロ、グループ内での企業ごとのサイロもあるだろう(図2)。

図2:社内情報管理での情報・データのサイロ化(出典:オープンテキスト)
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 目指すは脱サイロ、あらゆるサイロの解消だが、例えばグローバルに展開している企業が北米、欧州、日本で人事システムが異なるというのはよくあるケースだ。これを1つのシステムに統合するには、複数年のプロジェクトになる。まずは共通のデータ基盤を構築することがサイロ解消のアプローチになる。当社を挙げて、日本企業の脱サイロに力を注いでいく。

──情報・データの脱サイロを、具体的にどう取り組めばよいか。

 サイロから脱し、情報・データを社内の各種システムやサプライチェーンの中でスムーズに循環させる。そのために、まずは全社で単一の情報・データ統合基盤を構築する。一定規模の企業になれば歴史と共にシステムの数が膨れ上がる。500~1000もの基幹系システムやアプリケーションが乱立しているところも少なくない。単一の統合基盤は、さまざまなアプリケーションから、標準化ポリシーの下で情報・データを集約して、ユーザーが活用可能な状態にして管理することを可能にする。

 次に、システムとのエンドツーエンドの連携。各情報・データがアプリケーションや業務と紐づいている必要がある。例えば、顧客との契約に関するデータが、構造化データとして、ERPなどに価格や日付、個数などの内容を持つとしよう。

 その契約に至るまでに、どの営業員が担当して、どのような見積が出され、設計変更が何回あったか、などの付加情報が紐付いていることが重要だ。そうした情報があれば、担当者が変わっても、契約を更新するときに金額を見直すべきか、そのまま再契約するのかなどの判断がつきやすい。このような情報は属人的になりがちだが、情報管理の仕組みの下で、必要な人がいつでもアクセスできる状態にしておかなければならないだろう。

 こうした取り組みから情報・データの脱サイロを図り、必要な情報やデータを必要なユーザーが、必要なときに活用できる環境。当社で言う“企業情報DX”に向かっていただきたい。EIMやECMといった情報管理の製品・サービス群を通じて、日本の顧客に緊密な支援を行うのがオープンテキストのミッションとなる(図3)。

図3:OpenTextプラットフォームは社内と社外(企業間)の情報管理を担う(出典:オープンテキスト)
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●Next:サプライチェーンのコントロールタワーを構築せよ

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