[市場動向]

「後発の強みで、日本の顧客のためのクラウドとAIを届ける」─日本オラクル

2023年7月28日(金)神 幸葉(IT Leaders編集部)

日本オラクルは2023年7月6日、2024年会計年度(2023年6月~2024年5月)の事業戦略を発表した。同社 取締役 執行役 社長の三澤智光氏は、今年度の重要施策として、「日本のためのクラウドを提供」「顧客のためのAIを推進」の2点を挙げ、クラウド事業のさらなる成長と、進化が著しいAIの自社事業への取り込み方について説明した。

グローバルでクラウド事業が加速

 米オラクル(Oracle)の2023年会計年度のグローバル通期売上高は前年度比22%増の500億米ドル(約7兆1900億円)。直近の第4四半期(2023年3~5月)の売上高が同18%増の138億米ドル(約1兆9200万円)で、特にクラウド関連事業が前年同期比55%増だった。

 日本オラクルの業績については、取締役 執行役 社長の三澤智光氏(写真1)によると、Oracle Databaseを中心とするソフトウェアライセンス事業が順調に推移し、クラウド事業もグローバル同様の成長を遂げたという。

写真1:日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏

 2024年度の事業戦略の説明に先立ち、三澤氏は自身の2つの考えを示した。1つ目は、国内企業にとって、レガシーモダナイゼーションが待ったなしであるということ。「新しいビジネスモデルや環境へ追随していかないと、日本の競争力はより劣っていく。重要なデータは今後もレガシーシステムの中に格納され続けるため、レガシーシステムをモダナイズして、必要なときにいつでも活用できる環境を整えておくことが必須だ」

 2点目は、5~10年先の技術進化を見据えること。過去10数年でコンシューマーITは大きく進化を遂げた。比べてエンタープライズITの動きは大きくなかったが、今後5年、10年先を見たときに本格的な進化が始まる、とした。そして、過去数年はそれほどでもなかった技術的負債の問題が顕在化すると指摘。「進化を享受していくシステムを顧客に提供していく」と語った。

 それらを踏まえて挙げた、2024年度の重要施策が「日本のためのクラウドを提供」と「顧客のためのAIを推進」である。

後発であることはOracle Cloudの強み

 「オラクルは10数年遅れてIaaS/PaaS市場に参入した。当社のクラウドの基本設計を強みに、後発としては、競合ができなかったことを実現していく」と三澤氏。「日本のためのクラウドを提供」するために、日本オラクルは以下の目標を立てている。

●国内顧客専用のクラウドの提供
●ガバメントクラウドへの注力
●ミッションクリティカルシステムのモダナイゼーション
●クラウドネイティブSaaSの提供、ERPの従来型コスト構造からの脱却

国内顧客専用のクラウドの提供

 Oracle Cloud Infrastructure(OCI)では、プライベートクラウドの選択肢として、顧客のデータセンター内に専用の環境を構築する「OCI Dedicated Region」、パートナー企業のデータセンター内に構築する「Oracle Alloy」がある(図1)。「顧客やパートナーが自身でコントロールできる要素が多い」(三澤氏)ことがアピールポイントになっている。

図1:OCIのプライベートクラウド(出典:日本オラクル)
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ガバメントクラウドへの注力

 デジタル庁が主導する政府・自治体のためのガバメントクラウドにより注力していくという。施策として、ガバメントクラウド用の情報提供サイトや研修プログラム提供、地場IT企業、ISVパートナーとの共創セミナーの実施などを予定している。

ミッションクリティカルシステムのモダナイゼーション

 ミッションクリティカルシステムの稼働基盤の要件として、三澤氏は高速性能、低遅延、クラスタリング(可用性+拡張性)、ステートフル(データベース接続)を挙げ、これらの条件の1つでも欠けるとアーキテクチャ、実装方式の変更、再コーティングが必要になると説明。

 「ミッションクリティカルシステムの要件を重視して設計されたOCIには高いセキュリティ機能が標準として組み込まれている」とアピールした(図2)。

図2:クラウドのメリットを享受するミッションクリティカルシステム(出典:日本オラクル)
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クラウドネイティブSaaSの提供とERPの従来コスト構造からの脱却

 SaaSアプリケーションの「Oracle Fusion Cloud Applications」では、クラウドネイティブ技術を多く採用していることをうたう。また、ERPなどの業務アプリケーションで、追加の更改を行うことなく定期的な自動アップデートを可能にし、顧客には常に最新の環境を提供することに注力している。三澤氏は、顧客が技術的負債を抱えることなく、AIなどの新技術・機能をスムーズに取り入れていけることを強調した(図3)。

図3:変革を推進するOracle Fusion Application(出典:日本オラクル)
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●Next:生成AIをはじめとするAIの急速な進化を取り込む

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