[イベントレポート]

オープンデータの連携を阻む「言葉」の壁を乗り越える―経産省/IPA共催シンポジウム

2017年7月18日(火)柏崎 吉一(エクリュ 代表社員)

異なる行政機関や企業が公開するオープンデータの連携を阻むのは「言葉」。皮肉なことに日本語の持つ豊かな表現力や多様性が壁になっている。この課題解決に向けて国が取り組んでいるのが、共通語彙基盤の整備事業だ。2017年6月29日に経済産業省、情報処理推進機構(IPA)が開催したシンポジウム「つながるデータで築く未来」では、その取り組みの意義や整備の方針、利用事例などが紹介された。本稿では、2つの講演を中心に模様をお伝えする。まず、政府CIO上席補佐官、経済産業省CIO補佐官の平本健二氏は、データを実際につなげるために必要な技術的要素に触れた。次に、NEC データ流通戦略室長の若目田光生氏は、データを利活用するための実装例について説明した。

政府CIO上席補佐官
つながるデータに必要な基盤とは

政府CIO上席補佐官
経済産業省CIO補佐官
平本 健二氏

 5月30日に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」では、今後の社会を支える重要な基盤としてデータの利活用が挙げられている(図1)。しかし、実情はどうか。システムごとに異なる用語体系(語彙)やデータ形式の相互運用が十分でないために、APIを介した活用やIoT機器との連携などが難しい。

(図1)世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画全体イメージ(出展:「つながるデータで築く未来」平本氏資料)
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 2011年の東日本大震災でも災害対応支援や復興支援のため、各省庁が積極的に行政データを公開したが、省庁ごとに同一の行為や物品を指す用語(例えば、「融資」と「貸付」)や、物品の属性を記述する際の形式(住所における番地の記述など)が異なったことにより、求める情報が検索結果で正確に得られないなど、せっかくのデータ公開の取り組みが十分に生かされなかった教訓があったという。民間でも、業界ごとに同一の行為や物品を指し示す用語が異なっているケースは珍しくない。

 その結果、部署や企業を超えたコンピューター間でのデータのやりとりをおこないたい場合には、データベースを作り直すか、独自にコンバーターを開発する、といった追加投資を迫られる。結果的にやりとりを断念するというケースも多かったはずだ。

 この課題を解消するために整備されている共通語彙基盤(IMI:Infrastructure for Multilayer Interoperability)は、データの相互運用性の向上に資するものだ。

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