[イベントレポート]

Salesforceが新プラットフォーム“my”シリーズ、Googleとのパートナーシップ強化などを発表

米国開催「Dreamforce '17」現地レポート

2017年11月8日(水)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

Salesforce.comは2017年11月6日、米国で開催している年次カンファレンス「Dreamforce '17」において、マシンラーニングプラットフォーム「myEinstein」、ラーニングプラットフォーム「myTrailhead」など5つの新プラットフォームを発表した。最新のトピックを現地からお届けする。

 Salesforce.comは2017年11月6日(米国時間)、米サンフランシスコで開催中の年次プライベートカンファレンス「Dreamforce '17」(11/6 - 11/9)において、マシンラーニングプラットフォーム「myEinstein」、ラーニングプラットフォーム「myTrailhead」など5つの新プラットフォームを発表した。いずれのプラットフォームもSalesforceが提供する既存サービスにいくつかの新機能を実装して再構成したマーケティングパッケージで、「第4次産業革命である“インテリジェンスの時代”を生き抜くために、“個”にフォーカスしたアプリケーションを作成するためのプラットフォーム」(Salesfore CEO マーク・ベニオフ氏)と位置付けられている。

蒸気機関、電気、コンピューティングとつづいた産業革命の4番目の波がAIやIoTを中心とする「インテリジェンス」
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 今回発表された新アップデートは以下の通り。

  • myTrailhead … ラーニングプラットフォーム(Trailheadのリパッケージ)
  • myEinstein … AIプラットフォーム
  • myLightning … アプリケーション作成フレームワーク
  • mySalesforce … モバイルアプリケーションデリバリツール(旧Salesforce 1のリパッケージ)
  • myIoT … IoTプラットフォーム(IoT Cloudのリパッケージ)
旧Salesforce 1をリパッケージしたmySalesforceはmyLightningなどで作成したモバイルアプリケーションをAppStoreやGoogle Storeなどのマーケットに容易に登録が可能。そのほあにもモバイルアプリのライフサイクルを支える機能を数多く実装している
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 いずれのプロダクトにも“my”が付けられており、パーソナライゼーションにフォーカスしたアプリケーションをより容易に作成可能であることが強調されているが、中でも特に注目されるのが「myTrailhead」と「myEinstein」だろう。

5つのmyシリーズの中でももっとも注目されるmyTrailhead。ゲーミフィケーションをベースに楽しく学べるコンテンツが作成できる
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 Salesforceはここ1、2年、ゲーミフィケーションをベースにしたオンラインラーニングサービス「Trailhead」に力を入れており、すべてのユーザーを“Trailblazer(先駆者、開拓者)”と呼んでいる。TrailheadではHerokuやEinsteinを駆使するスキルフルなエンジニア(Code)だけでなく、ドラッグ&ドロップだけでアプリケーションを作成するアドミンやビジネスユーザー(Low Code/No Code)までを対象にしており、シンプルでモダンなインタフェースと多彩なカリキュラムを用意し、誰もが楽しくプログラミングやアプリケーション作成を学べる点が特徴だ。

 myTrailheadはTrailheadの特徴を活かし、企業がオリジナルの学習用コンテンツを作成したり、学習者(Trailblazer)の進捗を把握することが可能になる。具体的には、

  • Trail Maker … カスタムメイドなコンテンツの作成
  • Trail Mixer … 学習過程の共有
  • Trail Checker … 学習の進捗や成果のチェック
  • Trail Tracker … 学習の継続を図るためのモチベーションアップ機能

といった機能が実装されており、SalesforceがTrailheadを提供するように、各社が顧客向けに学習用コンテンツを提供することも近い将来は可能になるという。

Salesforceのビジネスの中心になりつつあるTrailheadは英語だけでなく日本語やスペイン語、フランス語などでもコースが用意されている
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 また、Salesforceが昨年発表したAIエンジン「Einstein」をリパッケージした「myEinstein」は、AI機能を実装したアプリケーションを容易に作成するためのプラットフォームとなる。既存のEinsteinの機能である「Einstein Language(自然言語処理)」「Einstein Vision(画像認識)」に加え、プレディクション(予測)機能「Einstein Prediction Builder」、アプリケーションに会話機能を付加する「Einstein Bots」が含まれる。なおmyEinsteinの早期ユーザーであるAdidasは「Einstein Botsは我々のビジネスを一変させた」と絶賛しており、商品管理や配送先の急な変更など、ビジネスの現場で大きな効果を上げている事例が紹介されている。

myEinsteinの機能のひとつであるEinstein Botsを駆使するAdidasの事例では「Einstein Botsは世界を変える」と絶賛
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アプリケーションこそが競争力の源泉

 Dreamforce '17の初日キーノートに登壇したベニオフCEOは「世界中、どの会社でも変化が起こり、トランスフォーメーションが始まっている。我々の顧客であるあなたたち全員がイノベーターでありディスラプター。あなたたちのイノベーションを支えるために、すべての人々が指先からあらゆるアプリケーションを生み出せる環境が必要」と語り、アプリケーションこそがデジタルトランスフォーメーションにおける差異化要因であるとあらためて強調する。エンジニアだけでなく、同社が現在、力を入れている“Low Code(エンジニアではないが、簡単なコーディングは可能)”なユーザー、あるいはまったくコーディングができない“No Code”なユーザーであっても、アプリケーションを作成できるようにするには、ツールやフレームワークはもちろんのこと、ユーザーのスキルアップを支える学習環境までトータルで提供することがmyシリーズの狙いだといえる。

初日のキーノートに登壇したマーク・ベニオフCEOは「アプリケーションこそがデジタルトランスフォーメーションにおける差異化要因である」とあらためて強調する
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 なお、基調講演ではGoogleとのパートナーシップ強化についても発表が行われており、Salesforceのクラウド基盤としてAWSのほかにGoogle Cloud Platformも加わることが明らかにされている。またGmailやGoogle Spreadsheet、Google Analyticsを含む「G Suite」とSalesforceの連携が進められていることもアナウンスされ、これが実現すればGoogleの各アプリケーションのデータとSalesforceのCRMデータを直接紐付けることが可能になる。

クラウド業界にインパクトを与えたSalesforceとGoogleの提携。SalesforceのコアクラウドのひとつとしてGCPも採用され、G SuiteとSalesforceの連携も進められることになる
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Google Cloudのダイアン・グリーンCEO

 ゲストとしてキーノートに参加したGoogle Cloudのダイアン・グリーンCEOは「(SalesforceやGoogleのような)テックカンパニーが共に協力し合うことは顧客にとってよいことであり、クラウドの存在がそれを可能にした」とコメント、クラウドが普及するに伴い、ベンダーの間にも新しいパートナーシップの形が生まれつつあるとしている。パブリッククラウドで力を持ちつつあるGoogleがエンタープライズ分野で着実にパズルのピースを埋めつつあることを象徴する提携としても注目される。
 

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マシンラーニング / Google / Google Cloud Platform / Salesforce

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